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白衣高血圧とは?原因・仮面高血圧との違い・治療方法を解説

 公開日:2024/02/07
白衣高血圧

高血圧と診断されたことはないのに、病院で計測すると数値が高くなってしまうという経験はありませんか?そのような症状を「白衣高血圧」と呼びます。

白衣高血圧は実際に高血圧ではない幅広い世代の方にも起こり得る症状です。しかしなぜこのような症状が自分に起きているのかは判断がつきにくいものです。

この記事では白衣高血圧の症状・原因・治療方法について詳しく解説します。ご自身の症状と照らし合わせて対処する際の参考にしてみてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

白衣高血圧とは?

白衣高血圧とは?
高血圧の治療に励んでいる患者さんは多いですが、実は幅広い年齢層の患者さんが白衣高血圧の症状を抱えています。
まず白衣高血圧という症状がどのようなものなのかについて確認しておきましょう。ご自身が白衣高血圧かどうかチェックしてみてください。

家庭で計測した血圧は正常値

白衣高血圧の方の大きな特徴として、自宅で血圧計を使用し計測した「家庭血圧」は正常値であることが挙げられます。
そもそも高血圧とは一般的に最高血圧が140mmHg以上、最低血圧が90mmHg以上の状態が慢性的に続く場合に診断される症例です。
家庭血圧は通常、診察室で測定するよりも低く出ることから基準もやや低く設定されており、135/85mmHg未満が正常値とされています。
白衣高血圧の方はこの家庭血圧が基準値内です。自宅に血圧計をお持ちであれば、日時を変えて数回血圧測定をし家庭血圧を調べてみましょう。

医療機関で計測すると血圧が高くなる

医療機関で計測すると血圧が高くなる
白衣高血圧の方は家庭血圧は正常であるのに対し、医療機関で血圧測定する場合に限り血圧の数値が高くなります。
大抵帰宅後には正常、もしくは正常以下にまで下がるので「isolated office hypertension(診察室高血圧)」とも呼ばれます。
なおほとんどの患者さんで初診時に見られる一過性の血圧上昇は白衣高血圧とはいいません。数回受診しても毎回高い数値が出るのが白衣高血圧です。
白衣高血圧は年齢・性別を問わず幅広い層に見られますが、なかでも若い女性・高齢者に多いとの研究結果が出ています。
高齢者では収縮期血圧が平均17mmHg上昇するという報告も見られ、非常に血圧が上昇してしまう患者さんもいることが明らかになっています。

白衣高血圧の原因

白衣高血圧の原因
家庭では正常な数値でも病院では高い数値が出ると、何かの病気なのではないかと不安になってしまう方もいるでしょう。
では白衣高血圧が起こる原因とは何なのでしょうか?考えられる4つの原因から自分に当てはまるものがないか確認してみてください。

医師に対する緊張感

医師に対する緊張感
原因の1つとして考えられるのは医師に対する緊張感です。初診の際、診察室に入って医師の前に出ると緊張してうまく話せなくなる患者さんは一定数います。
「白衣高血圧」という名称がついているのも、患者さんが白衣を着た医師の診察を受けたことにより一種の条件反射で血圧を上昇させると考えられたからです。
現に看護師よりも医師による測定の方が上昇する傾向が強いことがわかっています。医師が診断・治療の決定権を持っているという印象が作用しているようです。
このような医師・看護師による血圧上昇は「alerting reaction(警鐘反応)」と呼ばれています。
これは慣れた病院・医師に対しての血圧上昇には当てはまりません。とはいえ初診での血圧上昇は医師への緊張感からくるものと見ることができるでしょう。

病気などに対する不安

病院は当然何か自分の体に気がかりな点があるときに受診するものです。そのため、病気に対する不安が血圧を上昇させている可能性もあるでしょう。
実際に、初診時に血圧が正常値でも「初回の血圧値が高すぎるから再受診するように」と求められると患者さんの血圧が上昇するとの実験結果が出ています。
なぜ血圧が高かったのだろうか、病気にかかっているのではないかという不安が体を緊張させることが白衣高血圧につながっていると考えられます。

ストレス

ストレス
医師に対する緊張感・病気に対する不安を含め、ストレスは血圧を上昇させる大きな要因となり得るでしょう。
現代はストレス社会といわれています。職場・学校など普段の生活のあらゆる場面で誰もが多くのストレスにさらされているのが実情です。
そのような慢性的なストレスが病院という非日常の空間でさらに高まり、白衣高血圧の症状を引き起こしている可能性があります。

交感神経が優位になる

ストレスとも関係がある点ですが、交感神経が優位になることにより血圧が上昇してしまっているとも考えられるでしょう。
自律神経は集中・緊張したときにエネルギーを消費する交感神経と、臓器・器官の働きを制御する副交感神経のサイクルで成り立っています。
脳がストレスを感じると脈拍・血圧の上昇など交感神経反応を活発化させ、体をストレスと闘える状態に整える準備をします。
しかし強いストレスを受けると自律神経が乱れ、少しの変化で交感神経が優位になりやすくなるのです。これが白衣高血圧に影響していると思われます。

白衣高血圧と仮面高血圧の違いは?

白衣高血圧と仮面高血圧の違いは?
白衣高血圧と似た症例に「仮面高血圧」があります。仮面高血圧とは診察室血圧は正常である一方、診察室以外で計測した血圧が高い症例のことです。
未治療の患者さんのうちの10〜15%、また治療中の高血圧患者さんでは20〜25%に仮面高血圧の症状が見られるといわれています。
診察室での測定だけでは高血圧であることが診断できないため、仮面を被っているかのように本来の姿が隠されているという意味で仮面高血圧と呼ばれています。
ある条件下で血圧が変動する点では似ている症例ですが、仮面高血圧は左室肥大・頸動脈肥厚など高血圧性臓器障害のリスクが白衣高血圧よりも高いです。
喫煙・飲酒が多量な方やメタボリックシンドロームの方、日頃から運動量・心拍数の多い方も仮面高血圧の症状が出やすい傾向にあります。

白衣高血圧の治療方法

白衣高血圧の治療方法
現時点で健康状態に問題はなく一時的に血圧の数値が高くなるだけだとしても、できる限り家庭血圧と同じように正常に整えることは大切です。
白衣高血圧はどのような治療をすれば改善させることができるのでしょうか?治療方法に関して覚えておきたい点をまとめました。

通常は治療の必要がないことが多い

基本的に白衣高血圧の患者さんには治療の必要がない場合が多いです。緊張感・ストレスが原因であれば、心の状態が落ち着くと自然に血圧も安定するからです。
さらに白衣高血圧の場合、高血圧による心肥大・血管変化などの症状が軽微であるため、すぐに治療が必要になるケースは非常に少ないでしょう。
高血圧の患者さんには降圧薬が処方されますが、白衣高血圧のように一過性の血圧上昇に対しては降圧薬で抑制することは難しいといえます。
むしろ白衣高血圧と気づかないまま降圧薬を服用し続けたために、平常時の血圧まで過剰に下がり、めまい・立ちくらみなどの症状に悩まされるケースもあります。
白衣高血圧が合併症を引き起こしている場合に限り治療が必要です。そうでなければ高血圧治療よりもメンタル面でのケアが重要になってきます。

塩分を控えた食事

塩分を控えた食事<
高血圧には食塩の摂りすぎが影響している可能性が高いと考えられています。そこで白衣高血圧の場合も塩分を控えた食事を心がけるのがおすすめです。
なるべく野菜・果物をたっぷり食べることを意識しましょう。塩分が豊富に使用されている加工食品は食べる回数を減らすようにしてみてください。
しょう油・ソースのようについ使いがちな調味料は、かけるよりもつけることで使用量を減らせます。とはいえ無理はせずに少しずつ取り入れていきましょう。

肥満の改善

多くの場合、肥満ぎみの患者さんは過食・過剰分泌したインスリンにより血液量が増え交感神経が刺激されることで血圧が上昇しやすい傾向にあります。
肥満者に高血圧が見られる頻度は非肥満者の約3倍との報告があるほどです。そして腹囲の増加とともに血圧が高くなることも明らかになっています。
肥満を改善するために、塩分を控えるとともにカロリー・脂質を抑えた食事を心がけましょう。定期的な運動でエネルギー消費を増加させることも重要です。
ただし過度なダイエットはかえって健康を害する可能性があります。体調にも配慮しつつ肥満を改善することで、白衣高血圧の進行を抑えていきましょう。

白衣高血圧は経過観察が必要?

白衣高血圧は経過観察が必要?
白衣高血圧は一度の血圧測定の結果で診断できるものではありません。診察室血圧・家庭血圧の両方を注意深く観察する必要があります。
これは高血圧であった場合の早期発見にもつながるため肝要です。定期的に検診を受けるなど体全体の健康状態に気を配ることをおすすめします。
そして白衣高血圧と診断された後も、食事・運動面での生活習慣を改善したりストレスを溜めない環境を整えたりして、血圧上昇を抑える努力を続けましょう。
そのようにして継続的な経過観察を行っていくことで、高血圧が引き起こす不調・合併症を発症するリスクを軽減することができると考えられます。

白衣高血圧の注意点は?

白衣高血圧の注意点は?
専門的な治療方法はない白衣高血圧ですが、気にしなくていいと楽観視するのは危険です。実はあまり放っておくと体に悪影響を与える恐れがあります。
ご自身が白衣高血圧であるなら、ぜひ気にかけておきたい4つの注意点をご紹介します。普段の生活に取り入れられるポイントを参考にしてみてください。

数年後に本格的な高血圧になりやすいという研究結果もあるため注意

数年後に本格的な高血圧になりやすいという研究結果もあるため注意
軽度の白衣高血圧であればさほど体に害を与えるものとはなりませんが、放置し続けるとその後本格的な高血圧になる可能性があり注意が必要です。
ある研究によると過去の症例81例を長期追跡した結果、そのうち60例が5〜6年後に持続性高血圧に移行したと報告されています。
さらに3〜5年の経過観察では、10〜30%程度の患者さんが本格的な高血圧になったとの結果も出ています。
また本格的な高血圧に移行しないまでも、心肥大をはじめとする心臓の臓器障害が出現しやすいという症例も見られており、非常に危険です。
診察室でのみ数値が高いとしても、血圧が基準値を超えるということは高血圧になる可能性を持っていると考えて備え、放置しないようにしましょう。

普段から家庭での血圧を把握しておくことが大事

白衣高血圧の症状を知るためには、家庭血圧をきちんと把握しておくことも大切です。家庭血圧を知らなければ診察室血圧との差に気づくことができません。
家庭で血圧測定をする際に見落としがちなのが、計測中の姿勢です。家庭用血圧計は種類によって精度にバラつきが出てしまいやすい傾向にあります。
どのような血圧計を使うにしても、正しい姿勢で計測するならより精度の高い計測結果を得られます。楽な姿勢で座り、1〜2分安静にしてから計測しましょう。

家庭でさまざまな時間帯に血圧を測ってみる

家庭でさまざまな時間帯に血圧を測ってみる
血圧は計測する時間帯によっても変化するものです。毎日数回計測して出た血圧値の平均値を家庭血圧と定めることができます。
まず朝起きてすぐの血圧を知ることは重要です。患者さんによっては夜から明け方にかけて急激に上昇する方がおり、心血管疾患のリスクが高まります。
この睡眠中の血圧は朝の血圧値に現れやすいです。トイレを済ませてから起床後1時間以内に計測するように心がけてください。
また夜寝る前の計測も欠かせません。正常な方であれば夜間の血圧は日中と比べて10〜20%低下するため、低下が少なくないか上昇していないか確認します。
そのほかは基本的にご自身が心身ともに落ち着いている時間帯を計測時間にできます。ただし入浴・食事の前後は血圧の変動が大きいため避けてください。
そして毎日同じ時間に計測し記録するなら、ご自身の血圧状態を正確に知ることができます。血圧管理に役立つアプリを使うと習慣化しやすくなるでしょう。

生活習慣や食生活を正すことも大事

前述した通り、一般的な持続性高血圧と同じように白衣高血圧も生活習慣・食生活の見直しによって改善できる可能性が高いです。
家庭血圧値に影響を及ぼす因子の1つに飲酒があります。正常血圧者であっても飲酒後数時間は約3mmHgほど降圧効果が続くと報告されています。
さらに睡眠不足も関係があるようです。7時間未満しか睡眠を取れなかった患者さんは朝の血圧・心拍が上昇しやすいという結果も出ています。
過度な飲酒・睡眠不足を含めた生活習慣全般を改善して家庭血圧を安定させることが、白衣高血圧改善の一歩となるに違いありません。

編集部まとめ

相談
この記事では白衣高血圧の原因・治療法・注意点など気になる点をご紹介しました。意外と耳にする機会がなく知らなかった点もあったことでしょう。

白衣高血圧は精神面と密接にかかわる症状です。いつもは高血圧ではないからといって、白衣高血圧を無視し何も対処しないのは非常に危険といえます。

いつもと違うということは心身が危険信号を発しているということです。重要なサインを見逃さず、この機会に生活習慣を見直してみてください。

この記事の監修医師