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トリコモナスとは?どんな症状が出るの?感染経路や治療法について解説

 公開日:2024/05/21
トリコモナスとは?どんな症状が出るの?感染経路や治療法について解説

トリコモナス感染症をご存知ですか?
トリコモナス感染症とは、トリコモナス・ヴァジナリスという原虫によって引き起こされる性感染症です。感染すると、かゆみや異常なおりものといった症状が男女に現れます。
本記事では、以下の点を中心に解説します。

・トリコモナス感染症の主な症状
・トリコモナス感染症の感染経路
・トリコモナス感染症の治療法

トリコモナス感染症について理解するためにもご参考いただけたら幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

トリコモナスとは?

トリコモナスとは?
トリコモナスは、私たちの目には見えない微生物の一種で、原虫と呼ばれるグループに属しています。
原虫は、人間の性器内に侵入し、炎症を起こすことで性感染症を引き起こします。

トリコモナスは、見えない敵とも言えます。しかし、適切な知識と予防策を持つことで、自身を守ることにつながります。
健康を維持するためには、定期的な検査と、感染リスクを低減する生活習慣の維持が重要です。

トリコモナスの症状

トリコモナスの症状
トリコモナスに感染するとどのような症状が起きるのでしょうか?

男性

トリコモナスは男性の尿道に感染します。尿道炎を引き起こす可能性がありますが、排尿時の軽い痛み、尿道口からの微量な分泌液の出現、尿道のかゆみ、熱感、違和感などの症状はまれで、男性の約80%は無症状であるとされています。
そのため、感染があっても検査で陽性と判定されない場合があり、パートナーが感染している場合は治療を受けることが推奨されます。

また、トリコモナス原虫は排尿によって自然に洗い流されることがありますが、寄生している原虫の数が減っても感染力がわずかに残っていると再発や再燃する可能性があり、感染したことがある方は注意が必要です。

女性

トリコモナスは、女性の膣周辺に感染し、膣炎を引き起こす可能性があります。
膣炎は、膣や外陰部に刺激感や強いかゆみ、発赤を引き起こすことがあります。また、おりものが泡状になり、強い悪臭を放つこともあります。
しかし、女性の約20〜50%は無症状で、感染してもすぐには自覚症状が出ないことが多い傾向にあります。
そのうちの約3分の1は、感染から6ヵ月以内に症状を自覚することが多いといわれています。

トリコモナスの感染経路

トリコモナスの感染経路
トリコモナスはどのような経路で感染するのでしょうか。
ここでは、トリコモナスの感染経路について解説します。

性行為

トリコモナスの感染は、主に性行為を通じて起こります。
微生物は、性的接触を介してパートナーからパートナーへと移動します。
女性の場合、トリコモナスは膣や子宮の入口(子宮頸管)に寄生します。

一方、男性では、前立腺や精巣が主な寄生部位となります。
これらの部位に寄生したトリコモナス原虫は、精液や膣分泌液を介して感染します。

不衛生な環境

トリコモナスは主に性器との接触を通じて感染する病原体ですが、日常生活における衛生習慣の向上も重要です。

家庭内ではタオルや下着などの個人用品を他の方と共有しないこと、これらを高温で洗濯することが感染リスクを減らしましょう。
公衆浴場では、共用のイスに直接性器が触れないようタオルを敷く、使用前にシャワーで身体を洗うことが推奨されます。
公衆トイレでは、便座を消毒シートで拭いて使用するとよいでしょう。

過剰に意識する必要はありませんが、身近な方が感染した場合には特に、清潔な習慣や環境を心掛けましょう。

トリコモナスを放置するリスク

トリコモナスを放置するリスク
トリコモナスを放置した場合、悪化することはあるのでしょうか?

男性

トリコモナス感染症は、放置することで前立腺炎、精巣上体炎、亀頭包皮炎といった男性特有の炎症を引き起こす可能性があります。

前立腺炎ではトリコモナスが前立腺に感染し、排尿痛や下腹部の痛み、射精時の不快感が生じ、慢性化すると持続的な痛みや不快感を引き起こします。

精巣上体炎は精巣上体の炎症で、痛みや腫れと共に精子の活動力が低下し、不妊のリスクも高まります。

亀頭包皮炎は亀頭と包皮に炎症が生じ、かゆみや赤み、腫れが主な症状で、重症化すると痛みも伴います。

これらの炎症は適切な治療を行わないと、男性の生活の質に深刻な影響を及ぼすため、感染症状が見られた場合は迅速に医療機関を受診することが重要です。

女性

トリコモナス感染症が女性に与える影響は深刻で、適切な治療を行わない場合、多くの健康問題を引き起こすリスクがあります。
膣や子宮頸管を通じて卵管まで達し、子宮内膜炎や卵管炎などの炎症を引き起こすことがあります。
また、高熱や下腹部の強い痛みを伴い、深刻な場合には妊娠機能に影響を与え、不妊の原因となることもあります。
特に注意が必要なのは、感染者の約20~50%が明確な症状を感じないため、知らず知らずのうちに状態が悪化することです。

また、性的パートナー間での再感染(ピンポン感染)が起こりやすく、これが感染の持続や拡大の一因となります。

妊娠中

妊娠中のトリコモナス感染は、母体および胎児に重大なリスクをもたらす可能性があります。
トリコモナスの感染が治療されずに放置された場合、流産や早産の危険性が高まり、最悪の場合、胎児の生命を脅かす事態に至ることもあります。

妊娠中にトリコモナス感染が疑われる症状が現れた場合や、定期検診で感染が確認された場合には、直ちに適切な医療措置を受けることが重要です。
感染が早期に発見された場合は、妊娠中でも使用できる薬剤を用いることで、母体と胎児の健康を守れる可能性があります。

妊娠を計画している女性は、ブライダルチェックなどで性感染症の検査を受けてみましょう。
また、妊娠が確認された後も、何か異常を感じた場合はすぐに主治医に相談し、定期的な検診を欠かさないことが推奨されます。

トリコモナスの検査方法

トリコモナスの検査方法
ここでは、トリコモナスの検査方法について解説します。

顕微鏡検査

トリコモナス感染症の診断には、主に「顕微鏡」を使用した検査が行われます。
男性は尿道から、女性は膣から分泌液を採取し、顕微鏡下で直接観察して原虫の有無を確認します。

顕微鏡検査の検査の利点は即時に結果が得られるため、感染が確認されればすぐに治療を開始できることです。ただし、原虫の数が少ない場合やサンプルが不十分な場合には原虫を見逃すリスクがあります。
特に男性のサンプルでは原虫の濃度が低く確実性が欠けることもあるため、検査結果の解釈には注意が必要です。

培養検査

トリコモナス感染の確認に使用される方法の一つが培養検査です。
培養検査では、男性は尿を、女性はおりものを採取し、それらを専用の培地で培養することにより感染の有無を調べます。

培養検査の特徴は、顕微鏡検査より確実性が期待できる点にありますが、結果が出るまでに3日~1週間程度の時間が必要です。
培養検査は、原虫の数が少ない場合や微細な検出が必要な場合に用いられ、感染が疑われるが初期の顕微鏡検査で確認が取れなかった際に推奨されます。
検査に時間はかかりますが、その分、感染の有無をより正確に判定できるとされています。
このため、トリコモナスの確実な診断を求める場合には、培養検査が選択される傾向にあります。

DNA検査

トリコモナス感染を確認するためのDNA検査は、男性の初尿や女性のおりものを採取して遺伝子を分析する方法です。
DNA検査は特別な準備や複雑な手順が不要で、約2~4日で結果が得られるため、迅速な診断が可能とされています。
また、微量の遺伝物質も検出できるため、感染の初期段階でも確認ができるというメリットがあります。
DNA検査は男女どちらでも受けられる点がメリットであり、感染が疑われる場合や早期治療を希望する際に推奨される検査方法です。

検査キットもおすすめ

トリコモナス感染の診断に役立つ自宅で使える検査キットは、自身で手軽に感染の有無を調べられる便利なツールです。
検査キットを使用する際は、男性は尿を、女性は膣から検体を採取します。

男性は専用のカップに尿を採取後、検査容器に移して送付し、女性は綿棒を使用して膣分泌物を採取します。
これらのキットは使い捨てで、衛生的かつ匿名での使用が可能です。

採取した検体は郵送で専門の検査機関に送付します。
分析が行われた後、検査結果はインターネット上で確認できます。
自宅検査キットは、プライバシーを保ちつつ、迅速にトリコモナス感染を確認したい方におすすめの方法です。

トリコモナスの治療法

トリコモナスの治療法
トリコモナス感染症の治療には、内服薬や膣錠の使用が用いられ、約10日間服用します。
「膣錠」は、妊婦など内服薬の使用が避けられるケースで選ばれる治療法です。
治療中はアルコールの摂取を避ける必要があります。なぜなら、アルコールを摂取すると、頭痛や腹痛、動悸、吐き気といった副反応が発生する可能性が高まるためです。

また、性感染症の治療では、パートナーと同時に治療を行うことが重要です。
これは、ピンポン感染を防ぐためであり、一方が治療を受けても他方が感染したままでは再感染のリスクがあります。

トリコモナスの予防法

トリコモナスの予防法
トリコモナス感染を防ぐための予防策は、行動の見直しと衛生習慣の強化に焦点を当てることが重要です。
以下はトリコモナス感染予防のための主な方法です。

コンドームの使用:
性行為の際は、正しくコンドームを使用することが大切です。
コンドームは性感染症を防ぐための方法として有効とされており、その正しい使い方を学び、実践することが必要です。

性行為の制限:
不特定多数との性行為を避け、固定のパートナーとのみ性行為を行うことが推奨されます。これにより感染リスクを著しく低減できます。

生理中の接触回避:
生理中はトリコモナスが繁殖しやすい環境となるため、性行為は控えることが望ましいです。

共有物の管理:
濡れたタオルの共有や公共のお風呂など、感染が拡大する可能性のある行動は避けるべきです。
個人のタオルや衣類は個別に管理し、他者と共有しないように心掛けましょう。

性器の清潔保持:
性行為の前後には、適切な性器のケアを行うことが重要です。清潔を保つことで、感染リスクをさらに低減できます。

まとめ

まとめ
ここまでトリコモナスについて解説してきました。
トリコモナスについて、内容をまとめると以下のとおりです。

・トリコモナス感染は男性では約80%が無症状で、女性も約20〜50%が無症状だが、男性は尿道炎、女性は膣炎の症状が出ることがある
・トリコモナスは性行為を通じて感染し、男性は前立腺や精巣、女性は膣や子宮頸管に寄生する。日常生活の衛生習慣も感染予防に重要で、個人用品の共有を避け、公共の場所では清潔を保つことが大切
・トリコモナス感染症の治療は内服薬や膣錠で約10日間。妊婦は膣錠が選択される。治療中のアルコール摂取は副反応を引き起こす可能性があるため避ける。パートナーと同時治療が再感染防止の鍵となる

これらの情報が皆さんのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修医師