淋病の感染経路は?検査方法や母子感染についても解説
淋病は、性行為によって感染するだけでなく、淋病に感染したままだと母子感染を起こすこともあるといわれています。また、放置すると不妊や失明などの重大な合併症を招く可能性があります。
本記事では、淋病の感染経路について以下の点を中心にご紹介します。
・淋病について
・淋病の感染経路について
・淋病の予防について
淋病について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
淋病とは
淋病は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる性感染症で、性器クラミジア感染症と並び、よく見られる性病の一つです。
淋病は、主に性行為を通じて人から人へと伝播し、男性では尿道炎、女性では子宮頸管炎を引き起こすことがありますが、性器だけでなく咽頭や直腸に感染する例もあります。
淋病の感染伝達率は、1回の性行為で約30%と高い傾向にあり、感染しても症状を自覚しにくいため、気付かず他の方へ感染させてしまうリスクがあります。
淋病が重症化すると、男性では精巣上体炎、女性では卵管炎や骨盤内炎症性疾患を生じることがあります。
また、淋菌感染症はHIV感染のリスクを高めるとも指摘されており、早期発見と治療が重要です。心当たりがある場合は迅速に検査を受けることが推奨されます。
淋病の症状
淋病の症状にはどのようなものがあるのでしょうか。
男性と女性の場合でご紹介します。
男性の場合
淋病に罹患した男性は、「尿道炎」が主な症状としてあらわれます。排尿時の激しい痛みや、尿道からの白っぽい膿性の分泌物が特徴的です。
ただし、症状がはっきりしないこともあるため、注意が必要です。
そのほか、尿道のかゆみや不快感、ときには精巣上体(副睾丸)の腫れや、軽度の発熱を伴うこともあります。
淋病の症状は急激に現れ、放置すると「前立腺炎」や「精巣上体炎」へと進行するリスクがあります。
この場合、前立腺や陰嚢の腫れ、うずくような痛み、そして全身の発熱などの症状が見られます。
自覚症状がない場合もありますが、感染源となるため、性行為後に異常を感じたら迅速な検査と治療が推奨されます。
また、治療後に「無精子症」を生じる場合があり、男性不妊につながります。
女性の場合
淋病に感染した女性は、「子宮頚管炎」や「尿道炎」を発症しますが、症状を自覚しにくいことが特徴です。
子宮頚管炎や尿道炎の主な症状としては、おりものの増加や性交時の痛み、生理以外の出血(不正出血)、下腹部の軽い痛みが発生することがあります。
しかし、これらの症状は軽微であるか、全く現れないことも多いため、感染に気付かず、他の方への感染源となる可能性があるとされています。
淋病を治療せずに症状が進むと、「子宮内膜炎」や「卵管炎」などの「骨盤内炎症性疾患(PID)」などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。
この場合は、発熱・下腹痛が自覚症状となります。
後遺症として不妊症が起きることがあります。
男女共通の症状
喉や目、直腸への症状は男女共通となります。
オーラルセックスによる場合、咽頭に感染することがあります(淋菌性咽頭炎)。
症状としては、喉の痛みや腫れ、いがいがするような不快感、発熱があります。
風邪と症状が似ているため、感染に気付きにくく、治りが悪いことで感染が発覚することもあるようです。
目に感染した場合(淋病性結膜炎)、感染後12~48時間以内と、早く発症するのが特徴です。
まぶたの腫れや目の充血、多量の膿性の目やにが症状として現れます。
また、合併症として、角膜の潰瘍や膿瘍、穿孔(穴があく)、全眼球炎や失明などが起こる可能性もあるため、注意が必要です。
直腸の場合(淋菌性直腸炎)、無症状であることが多いといわれています。
症状としては、肛門のかゆみや不快感、痛みや下痢、粘りのある血便などが挙げられます。
また、腸に便が残っていないのに便意を感じることもあります。
淋病の原因と感染経路
こちらの項目では、淋病の原因と感染経路について解説します。
淋病の原因菌・淋菌について
淋病の原因菌である淋菌は、性感染症を引き起こすグラム陰性の双球菌です。
淋菌は湿った環境や人体の粘膜で増殖し、主に性行為を通じて感染が広がります。
淋菌は弱く、乾燥や消毒剤、温度変化によって容易に死滅するため、性交以外での感染は稀とされています。
しかし、感染した場合、男女共に尿道、口内、咽頭、肛門、目の結膜などで増殖し、未治療の場合は不妊症やほかの健康問題を引き起こすリスクがあります。
また、淋菌は高温にも低温にも弱く、37℃の温度と、約5~10%の炭酸ガス濃度で発育しやすい特性があります。
淋病の感染経路
淋病の感染経路は主に性行為によるものですが、性器間の接触だけでなく、オーラルセックスによる咽頭への感染なども含まれます。
淋病の感染率は一度の性行為で約20%~50%と高い傾向にあり、オーラルセックスの普及により、咽頭への感染が増加傾向にあります。
また、淋菌は性器だけでなく、肛門性交により、直腸にも感染する可能性があります。
そして、性行為以外での感染経路として、母子感染の可能性も指摘されています。
淋病は感染しても自覚症状がないことが多く、無症状のまま他人に感染させるリスクがあるため、性行為の際は適切な予防措置を取ることが重要です。
淋病のまま出産すると子どもにも感染する可能性がある
淋病は成人だけでなく、出産時に母から子への感染、いわゆる母子感染のリスクも伴います。
妊娠中に治療を受けずに淋病を持ったまま出産すると、赤ちゃんが産道を通過する際に感染する可能性があります。
特に、淋菌は赤ちゃんの目に感染しやすく、最悪の場合、失明を引き起こすこともあり得ます。
淋病に感染している妊婦は、出産前に適切な治療を受けることが重要です。
治療には通常、抗生物質が用いられます。感染が確認された場合は迅速に治療を開始しましょう。
また、出産時には赤ちゃんの目への感染を防ぐために、予防的な目薬が用いられることもあります。
母子感染を防ぐためには、妊娠中の定期的な性感染症の検査が推奨されます。
特にリスクが高いと考えられる場合や、感染の可能性がある場合には、産婦人科医と相談の上、適切な検査と治療を受けることが大切です。
淋菌の検出方法
淋病はどのように検出されるのでしょうか。
淋菌の検出には、下記のような方法が用いられます。
検鏡法
淋菌の検出方法の一つに、「検鏡法」があります。
場所を選ばず実施でき、特に男性の尿道炎の診断において、迅速な結果が期待できる方法です。
検鏡法は、感染部位から採取した分泌物や初尿沈渣を染色し、顕微鏡で観察します。
好中球内に貪食されたグラム陰性双球菌が見られる場合、淋菌感染を同定できるといわれています。
しかし、子宮頸管炎など、子宮頚管や膣分泌物からの検体では、雑菌が多いため、検鏡法だけでは淋菌の検出が難しいとされています。
そのため、淋菌感染症の疑いがある場合には、検鏡法に加えて、培養法や核酸増幅法など他の方法による検査も推奨されます。
検鏡法は、感染部位によっては他の検査方法と組み合わせることで、より正確な診断につながります。
培養法
培養法は、感染疑いのある患者さんから採取した検体を特定の培地に接種し、淋菌の増殖を促す方法です。
淋菌の培養後、生化学的反応や形態学的特徴を基にして淋菌を同定します。
培養法は淋菌の確定診断に必要な手法であり、特に「薬剤感受性試験」を行うためにも重要です。
この方法は、淋菌の抗生物質耐性パターンを特定し、適切な治療法を決定するのに役立ちます。
核酸増幅法
淋病の検出に使用される核酸増幅法(NAATs)は、淋菌のDNAまたはRNAを特定し、増幅させることによって感染を検出する方法です。
核酸増幅法は、少量の遺伝物質からでも淋菌の存在を確認できるため、ほかの方法よりも早く正確な診断が可能になるといわれています。
特に、培養法では成長が難しい咽頭や直腸などの検体からの検出に効果が期待できます。
しかし、核酸増幅法では薬剤耐性の情報は得られないため、耐性が疑われる場合は培養法による追加検査が必要とされています。
治療方針を決定するためには、耐性検査を含めた総合的な評価が求められます。
淋病の検査・診断
淋病の検査と診断は、下記のような方法で行われます。
男性の場合
男性における淋病の検査と診断は、初尿または尿道分泌物を検体として行います。
また、尿道からの膿や、排尿時の痛みなどの症状が現れた場合、迅速な検査が必要とされます。
検査方法には、先述したグラム染色による検鏡法、培養法、そして核酸増幅法(NAATs)があります。
なかでも、無症状でも検査できる核酸増幅法が推奨されることが多いようです。核酸増幅法は、性器だけでなく、のどや肛門の淋病も検査できます。
ただし、淋菌が特定された場合には、抗生物質に対する耐性の有無を確認するため、追加で培養法による検査が行われることもあります。
女性の場合
女性における淋病の検査と診断は、主に子宮頚管や尿道からの分泌物を用いて行われます。
男性同様、核酸増幅法(NAATs)が多く用いられる傾向にあり、淋菌のDNAまたはRNAを特定し、高い感度と特異性で感染を検出します。
また、培養法も利用され、これにより抗生物質の感受性試験が可能とされています。
女性の場合、淋病は子宮頸管炎、卵管炎、骨盤内炎症性疾患(PID)などを引き起こす可能性があり、これらは不妊症のリスクを高めることがあります。
「淋菌性子宮頚管炎」の感染が疑われる場合は、検査用の綿棒で子宮の入り口を擦り、その後、精密検査が行われます。
診断後は、主に抗生物質による治療が行われます。
淋病の検査は保険適用の対象となっており、性的パートナーの検査と治療も推奨されます。
淋病は郵送の検査キットでも調べられる
淋病の検査には、自宅で簡単に行える郵送検査キットも存在します。
検査キットは、性病に感染しているかどうかを匿名で、かつ迅速に確認できるメリットがあります。
検査キットは、尿や膣分泌物、咽頭や肛門からのサンプルを採取し、専門の検査機関に郵送することで検査を行います。
キットには、検査用の採取器具や説明書、返送用の封筒が含まれており、利用者は自宅でサンプルを採取し、郵送するだけで検査を完了できます。
結果はWeb上で確認でき、検査のプライバシーが保護されると同時に、病院を訪れることなく性病の有無を確認できるため、時間や場所を選ばずに利用できます。
淋病の治療・予防について
近年、淋菌の抗菌薬耐性化は顕著であり、多剤耐性化が進んでいます。
耐性菌の出現により、かつては有効とされていた経口抗生物質だけでは治療が困難なケースもあります。
淋病の治療には、耐性菌の増加に対応するために抗菌薬の選択と投与方法が重要です。
主な治療は、点滴注射もしくは筋肉注射を1回投与し、場合によっては経口薬を1回追加します。特に喉の感染には抗生剤の点滴が推奨されます。
治療後は、性行為を控え、完全な治癒が確認されるまで検査を繰り返すことが重要です。
パートナーも検査と治療を受けることが推奨されます。
予防策としては、性的接触時にはコンドームの使用を徹底することが基本です。
また、感染者とその性的接触者の早期診断と治療が、感染拡大の防止に繋がります。
性行為後のシャワーや尿意を促すことも、感染リスクを低減させる行動の一つです。
淋病は放置すると不妊症や他の合併症を引き起こす可能性があり、特に女性は自覚症状が少ないため注意が必要です。
男性が尿道炎で受診した場合は、パートナーの診断と治療も必須となります。
性感染症のリスクを減らすためには、信頼できるパートナーとの性行為を心がけ、不特定多数との性行為は避けることが推奨されます。
淋病は再感染する可能性があるため、予防策を講じることが不可欠です。
まとめ
ここまで淋病の感染経路について、ご紹介しました。
淋病の感染経路についてまとめると、以下の通りです。
・淋病は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる性感染症で、性器クラミジア感染症と並び、よく見られる性病の一つ
・淋菌は性行為により、性器だけでなく、目や喉、直腸にも感染する可能性がある。また、母子感染する可能性もある
・淋病予防には、特定多数との性行為は避け、性的接触時にはコンドームの使用を徹底することが基本
本記事が少しでも皆さまのお役に立てますと幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。