トリコモナスとカンジダの違いは?似ている点や見分け方も解説
「トリコモナス」と「カンジダ」という病名を聞いたことがありますか?どちらも性感染症(略称:STD)のひとつで、特に女性に多く見られる病気です。性器周辺のかゆみや不快感などの症状が現れることから、よく似ていると言われがちですが、実は原因も治療法も異なっています。
この記事では、トリコモナスとカンジダの違いや見分け方、治療法などを解説します。気になる症状がある方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
トリコモナスとカンジダの違い
「トリコモナス症」と「カンジダ症」は女性に多く見られる性感染症として知られていますが、症状が似ていることから判断が付きにくいと言われています。まずは、トリコモナスとカンジダの違いを見ていきましょう。
トリコモナスとカンジダの相違点
トリコモナスとカンジダの相違点は以下の5つです。
・原因の違い
最も大きな違いは、その原因です。トリコモナス症は原虫が寄生することで引き起こされるのに対し、カンジダ症は真菌(カビ)が患部に増殖することで症状が現れます。
・寄生(感染)場所の違い
トリコモナスの場合、男性は前立腺や精嚢、尿道、女性は膣内、子宮頚管、膀胱、尿道など、体内に侵入して炎症を引き起こすと言われています。それに対し、カンジダの場合は男女ともに皮膚表面に感染することが多く、まれに男性は尿道に、女性は膣内に菌が繁殖することがあります。
・症状の違い
どちらも痛みやかゆみといった症状が出るため違いがわかりにくいのですが、女性の場合は帯下(たいげ:おりもの)に違いが現れます。トリコモナスが寄生すると、泡沫状の黄色から白色で悪臭が強い帯下になります。カンジダに感染すると、白く粘度の高い帯下になることが多いようです。
なお、男性はどちらも無症状というケースが多いのですが、トリコモナスが寄生すると尿道から泡状の分泌物が出る、カンジダに感染すると亀頭周辺に白い垢が付着したり、亀頭周辺が炎症を起こしたりといった症状が出ることがあります。
・感染経路の違い
トリコモナスは性行為によってパートナーから感染することが多いと言われています。しかし、接触でも感染することがあるため、性行為の経験のない方や子供でも罹患する可能性があります。カンジダ菌は常在菌のため、感染経路は自己感染であることがほとんどです。免疫力の低下やホルモンバランスの変化などが原因で菌が増殖すると症状が現れますが、性行為でも感染します。
・潜伏期間の違い
トリコモナスの潜伏期間は男女で異なっており、男性は10日前後、女性は5~14日程度で症状が出ると言われています。カンジダは男女ともに1日~1週間で症状が出てくることが多いようです。
トリコモナスとカンジダが似ている点
トリコモナスとカンジダは、どちらも性器周辺にかゆみを感じたり、女性の場合はいつもと違う帯下が生じたりする点で症状が似ています。なお、男性はどちらも無症状の割合が高いのが類似している点です。
トリコモナスとカンジダの見分け方
症状だけでなく、潜伏期間や感染経路なども似通っていることから、トリコモナスとカンジダのどちらに罹患しているか判断するのは難しいと言われています。女性であれば帯下の状態、男性であれば尿道からの分泌物や白い垢のようなものが付くといった点から判断するのが良いでしょう。
トリコモナスとカンジダの違いがわからないとき
前述の通り、トリコモナスとカンジダの違いを自身で判断するのは難しいと言われています。違いがわからないとき、どのように判断したら良いのでしょうか。
専門の医師がいるクリニックで検査する
トリコモナスとカンジダの見分けは専門医でないと難しいと言われています。しかし、どちらも接触感染してしまうため、身近な人に感染を拡大させないためには早期発見・早期治療が大切です。性器周辺や帯下にいつもと違う症状が現れている場合は、少しでも早くクリニックで検査をしてもらいましょう。
自宅検査キットで検査する
クリニックに行って検査をしてもらうのは抵抗があるという方にとって、自宅で手軽に検査できると嬉しいですよね。新型コロナウイルスの検査キットのように、性感染症の検査キットがドラッグストアなどで購入できれば手軽に検査ができます。しかし、残念ながら性病の検査キットをドラッグストアで購入することはできません。なぜなら、薬機法の関係で一般店舗での販売が認可されていないからです。
2024年現在、自宅で検査できるキットはインターネットを通じて入手する必要があります。3種類の入手方法を、それぞれ詳しく見ていきましょう。
・郵送検査サービスで検査をする
郵送検査サービスは自宅で採取した検体を郵送で送り、検査結果を受け取るサービスです。国の認可を受けた事業者が行っているため、検査精度はクリニックと相違はありません。ただし、自身で検体を採取するため、キットの使い方を間違うと正しい結果が得られない可能性があります。また、もし陽性だったとしても治療を受けることができないため、改めて病院を受診する必要があります。
・専門クリニックのオンライン診療を受診する
近年、オンラインで受診できる病院が増加。電話やオンライン会議システムなどを利用して医師の問診を受けたのち、クリニックから送られてくるキットで検体を採取、返送して検査してもらいます。オンライン受診は専門家に相談ができる点、また陽性となった場合にすぐ治療を開始できるメリットがあります。ただし、郵送検査サービスに比べると割高になりがちです。
・総合ECモールで購入する
郵送検査サービスの事業者などが総合ECモールに出品しているケースがあります。その場合、普段使っているオンラインショッピングのアカウントだけで完結するため、手軽に検査キットを手に入れることが可能です。ただし、中には粗悪品や高額な転売品が出品されている可能性があるため、品物の善し悪しを見極める必要があります。また、キットによって検査できる性病の種類が異なるため、検査したい項目に合わせてキットを購入しましょう。
トリコモナスとは
トリコモナスとはどのような病気なのでしょうか。
トリコモナスの原因と感染経路
トリコモナスはSTDの一種で、肉眼では見ることができないほど小さな微生物「トリコモナス原虫」が性器に侵入することで罹患します。女性は膣や子宮入り口に、男性は前立腺や精嚢に寄生していることが多く、性行為によって感染します。しかし、実は下着やタオル、トイレ、風呂、プールなどでも接触感染するため、性行為の経験がなくても罹患することがあります。
トリコモナスの症状と潜伏期間
男性は感染しても無症状なことが多く、気がつかずに周囲に感染させてしまうことがあります。人によっては排尿時の痛みや尿道から膿のような分泌液が出てくることがあり、悪化すると尿道炎や前立腺炎を引き起こすこともあります。潜伏期間は10日ほどです。
女性は外陰部や膣部にかゆみや痛みが生じるほか、帯下に異常が現れます。泡状で悪臭の強いおりものが出るため、診断が付きやすいのが特徴です。悪化すると膣炎や膀胱炎を引き起こすだけでなく、卵管炎や骨盤内感染症につながり、子宮内膜症や不妊症の原因になるため注意しましょう。なお、潜伏期間は5~14日ほどです。
トリコモナスの治療法と予防法
トリコモナスは、一度感染すると自然治癒することはありません。治療するには、トリコモナス症の治療薬「抗原虫薬」を内服する必要があります。(妊娠している場合は、胎児への影響を考えて膣への薬剤投入)
治療薬の入手には医師の処方が必要になるため、気になる症状がある場合はできるだけ早く診察や検査を受けましょう。なお、パートナーがいる場合はどちらも感染している可能性が高いため、同時期に受診して確実に治療を行っていくことが大切です。
また、感染の予防法は、正しいコンドームの着用、不特定多数との性行為を避ける、生理中の接触を避ける、タオルの共用はしない等です。
カンジダとは
カンジダとはどのような病気なのでしょうか。
カンジダの原因と感染経路
カンジダはSTDの一種で、カンジダ属のカビ(真菌)によって症状が現れます。しかし、カンジダ菌は健康な人の皮膚や消化管、膣の中にいる常在菌のため、存在しているだけなら異常ではありません。免疫力が低下したり、膣内常在菌のバランスが崩れたりするとカンジダ菌が増殖し、症状が現れます。そのため、感染経路としては常在菌による自己感染が多いのですが、性的な接触でも感染するため性行為をする際は注意が必要です。
なお、湿った下着やキツい下着などを着用し続けていると、カンジダになりやすい傾向があります。
カンジダの症状と潜伏期間
カンジダは女性に多く見られる疾患で、5人に1人は感染経験があると言われるほどです。男性に罹患することもありますが、無症状または症状が軽い傾向があります。
男性は尿道の違和感や性器周辺のかゆみや痛みなどのほか、亀頭や冠状溝の赤み、小さな盛り上がり、水ぶくれ、白い苔状の垢、亀頭皮膚表面のただれやカサつきなどが現れます。女性の場合は性器周辺のかゆみや発疹、粘度が高くて白い帯下(カッテージチーズや酒かすに似たおりもの)の増加、排尿時や性交時の痛みなどの症状が現れます。なお、潜伏期間は男女ともに1日~1週間ほどです。
カンジダの治療法と予防法
カンジダは軽度だと自然治癒することがあると言われていますが、基本的には治療が必要な疾患です。症状が現れた部位によって治療法が異なっており、皮膚表面の治療を行う場合は男女ともに抗真菌薬の軟こうを塗布します。そして、男性の尿道カンジダには抗真菌薬の内服、女性の膣カンジダは膣剤の投与または抗真菌薬の内服で対処します。なお、前述の通りカンジダ菌は常在菌になるため、完全になくすことはできません。そのため、薬で菌を減らし、症状を抑える治療になります。
また、感染予防として陰部を清潔かつなるべく乾燥した状態に保つことが理想です。締め付けの少ない通気性の良い下着などをおすすめします。そして、これはトリコモナスと同じですが、不特定多数との性交渉を避ける、性行為を行う際はコンドームを正しく着用することが大切です。
まとめ
症状が似ていると言われるトリコモナスとカンジダですが、原因、感染経路、治療法などに違いがあることがおわかりいただけたのではないでしょうか。どちらも接触感染するため、パートナーと互いに移しあってしまう可能性がある病気です。特にトリコモナスは自然治癒することはないため、気になる症状がある場合はできるだけ早く診察や検査をしましょう。そして、日頃から免疫力を低下させないように気を付け、感染予防の対策をしっかりと行うことが重要です。