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友人が支えるうつ病|顔つきの変化に気づくためにできることを紹介!

 公開日:2024/03/06
友人が支えるうつ病|顔つきの変化に気づくためにできることを紹介!

友人が最近元気がない、なんとなく顔つきが変わったような気がする……そんなとき、何かしらのサポートができたらと思うことがありますよね。一緒に過ごす時間が多い友人だからこそ、微妙な変化として表れるうつ病のサインに気づける可能性があります。
うつ病は、顔つきや表情に出ることがあると言われています。この記事では、うつ病の基礎知識から顔つきの変化、そして友人として何ができるのかについて、詳しくお伝えします。あなたの少しの気づきと行動が、大切な友人を支える一歩につながるかもしれません。

舘野 歩

監修医師
舘野 歩(東京慈恵会医科大学附属病院)

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東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。現在は「東京慈恵会医科大学附属病院」勤務。専門は精神神経科。日本精神神経学会専門医・精神科指導医、日本森田療法学会認定医、精神保健指定医。東京慈恵会医科大学精神医学講座准教授。

友人が支えるうつ病-顔つきの変化と友人としての役割

友人が支えるうつ病-顔つきの変化と友人としての役割

うつ病は、気分が落ち込んでしょうがない、何をするにも力が出ないといった心の病です。大切な友人がうつ病になってしまったとき、どう接したらいいのか、どう支えたらいいのか、悩むことでしょう。

うつ病とはどういう病気か

うつ病は気分障害という精神疾患に属し、気分が落ち込んだり、やる気がなくなったり、ときに「生きていたくない」と思ったりする病気です。単なる気分の落ち込みとは明確に異なります。
うつ病の主な症状は、心的なものと身体的なものの2つに大別できます。

心的な症状としては、ほとんどの時間を通して気分が落ち込んでいる、以前は楽しんでいたことが楽しめなくなる、自己評価や自尊心が低下するなどがあります。また、不必要な罪悪感を感じたり、未来に対する希望を失ったりすることもあります。最悪の場合、自死の考えが頭をよぎることもあります。

身体的な症状としては、睡眠障害(過眠または不眠)、食欲不振あるいは過食、疲労感や活力の喪失、集中力の低下、思考力や決断力の低下などがあります。さらに、無関心や不安、落ち着きのなさ、体の一部または全体に痛みを感じるなどの症状も見られます。
このように、うつ病は心と体の両方に影響を及ぼし、日常生活を著しく困難にすることがあります。そのため、うつ病の早期発見と適切な治療が重要となるのです。

友人として何ができるか

友人がうつ病になってしまった場合、何をすればいいのでしょうか。まずは、その状況を認識し、専門家への相談を促すことが大切です。
うつ病患者さんのなかには、この病気を発症していることに気づけない人がいます。「気持ちが沈むのは自分の精神力が弱いため」と思って仕事や勉強を続けてしまうと症状が悪化してしまうでしょう。また、うつ病の症状を自認できても、そのことを隠しておきたいと考える人もいます。
いずれの場合もこの状態では本人だけでは医療機関にかかることができません。周囲の人々が変化に気づき、うつ病の可能性を指摘することが、早期治療の第一歩となります。
もし友人がうつ病の可能性があると感じたら、適切な治療を受けるためには医療機関への受診が必要です。「うつ病かもしれないよ」と伝えてあげることができれば、受診のきっかけにできるかもしれません。ただし、無理に受診を強要せず、自分の気持ちや友人への思いを伝えることが大切です。

友人として知っておきたいうつ病の症状と顔つきの変化

友人として知っておきたいうつ病の症状と顔つきの変化

うつ病は、心的な症状だけでなく、身体的な症状も伴います。それらは患者本人だけでなく、周囲の人々にも顔つきなどの見える形で現れることがあります。特に、日常生活で接することが多い友人としては、これらの症状に気づくことが大切です。

気分の落ち込み

うつ病の顕著な症状の一つが気分の落ち込みです。抑うつと呼ぶこともあります。
気分が落ち込むと表情が暗くなったり、顔から活力が失われたりします。失敗やトラブルといった明確な出来事が発生していないのに、暗い表情や活力のない顔をしていて、しかもそれが長く続いているようであれば、友人は「うつ病かもしれない」と気づいてあげることができます。

興味や喜びを感じなくなる

うつ病には「沈む」現象のほかに「上がれない」現象があります。先ほど紹介した気分の落ち込みは「沈む」になります。一方「上がれない」現象は、本来は興味を示すはずなのに、または、本来は喜んでよいはずなのに、そのような気持ちになれない状態のことです。
友人が以前は好きだった趣味や活動に対する興味や喜びを感じなくなっている場合、それはうつ病のサインかもしれません。楽しい状況のはずなのに楽しい顔をしていないことは、友人だけにしか分からない可能性もあるでしょう。

身体的な症状

うつ病は心の病気ですが、身体的な症状も見られます。これには、顔つきの変化や睡眠障害、食欲不振、体重の変化、疲労感などが含まれます。

・顔つきの変化
うつ病の人は、表情が乏しくなったり、ボーッとした顔つきになったりすることがあります。笑顔が少なくなった、表情が硬くなったと感じたら、気をつけてみてください。
・睡眠障害
うつ病の人は、寝付きが悪い、途中で何度も目が覚める、朝早くに目が覚めてしまうといった睡眠障害を抱えていることが多いです。

・食欲不振
食欲不振もうつ病の症状の一つです。以前よりも食事の量が減った、食べることへの関心がなくなったと感じたら、注意が必要です。

・体重変化
食欲の変化は、体重の増減にもつながります。特に、一ヶ月で体重が5%以上変動すると、それはうつ病の可能性を示すサインとなります。

・疲労感
うつ病の人は、常に疲れている感じがし、何をするにもエネルギーが必要と感じることがあります。これは、会話中によく休憩を取る、以前よりも動きが鈍くなるなど、視覚的にも感じ取ることができます。

これらのうつ病の症状と顔つきの変化に気づくことが、友人としての最初の一歩となります。

うつ病と顔つきの変化|見逃さないためのサイン

うつ病と顔つきの変化|見逃さないためのサイン

うつ病の早期発見に役立つ身近なサインとして、顔つきの変化があります。普段から親しい友人ならではの視点で、気づきにくいこれらの変化に目を向けてみましょう。

感情の表出が乏しくなる

うつ病患者さんは感情を表出しにくくなります。ある状況になったとき、以前は喜びを爆発させていたのに、今はまったく同じ状況なのに表情に何も表さない、といったことが起きます。またその逆に、本当は相当つらい状況下にあるはずなのに、それほど苦悶していないように見えることもあります。

無表情な顔つき

健康な人は表情をつくっているものです。例えば人前で話すことになったら、緊張している顔をつくろうとか、笑顔で話そうかとか、みんなに厳しいことを言わなければならないので眉間にしわを寄せて話そう、といったように考えます。
しかしうつ病の患者さんは無表情になりがちと言われています。そのため、友人が普段と違い、何も感じさせない顔つきをしているときは、うつ病の可能性を考えるべきかもしれません。

ボーッとした表情

考えることに疲れてしまうと、ボーっとした表情になります。うつ病患者さんのなかには、そのような表情をずっと続けてしまっている人がいます。
先ほど紹介した無表情な顔つきは冷たい印象がありますが、ボーっとした表情にはそれほどの冷たさはありません。その代わり、周囲の刺激にまったく反応しません。
友人が声をかけると小さくリアクションを取ることもあります。しかしその場合でも「どうした」と尋ねても「いや、なんでもない」と答えるだけで、またしばらくするとボーっとしてしまうかもしれません。

このような症状は、普段の性格や行動パターンとは異なる場合に特に注意が必要です。

言葉数の減少と声の小ささ

「自分がうつ病のはずがない」と強く思っているうつ病患者さんは、それを隠そうとして頑張って話そうとする傾向もあるようです。しかしうつ病を発症していると言葉数が少なくなったり、声に張りがなくなったり、音量が小さくなったりしてしまいます。
かつて元気よく喋っていた友人の口数がめっきり減っていたら、何かしらの問題がある可能性を考えてみてください。

これらの変化は、一度に全て現れるとは限りません。しかし、何か一つでも気づいたら、その変化に対して配慮し、必要であれば適切な支援を提供することが重要です。

友人が気づくべきうつ病の顔つき|早期発見のためのポイント

友人が気づくべきうつ病の顔つき|早期発見のためのポイント

うつ病は病気なので、早期発見早期治療が肝心です。そのため友人は、本人の変化に早く気がついてあげたいものです。どうすれば顔つきの変化に早く気がつけるのか、そのポイントを解説します。

日常の変化に気づく

友人の日常の様子が変わったと感じたら、それはうつ病の可能性を示すサインかもしれません。

・会話の内容
友人が普段とは違う話題を選んだり、否定的な話をするようになったら注意が必要です。また、話すスピードが遅くなったり、言葉を探す時間が長くなったりする変化も見逃さないようにしましょう。
・行動パターン
例えば、毎日自転車通勤していた人が急にバスを使うようになったら、身体を動かすことが嫌になったのかもしれません。そのほか、飲み会にまったく参加しなくなった、趣味活動をしなくなった、といった行動パターンの変化も見逃さないようにしてください。
・生活リズム
睡眠時間が長くなったり、食事の時間や量が変わったりと、生活リズムが乱れることもうつ病の兆候です。また、朝食や昼食をまったく食べなくなるといった食生活の変化にも気づかう必要があります。特に、普段とは異なる生活リズムの変化が見られたら、気にかけてみてください。

顔つきの変化に気づく

うつ病の人は、感情を表す力が低下し、その結果、顔つきに変化が現れることがあります。
顔つきは、表情、目の動き、口元の動きで変化します。長く付き合っている友人であれば、「顔つきが変わったな」と直感的に気がつけるかもしれません。そしてそのように感じたら次は表情、目の動き、口元の動きを観察してみてください。
・表情の変化
普段は感情豊かな友人が、急に表情が乏しくなったり、無表情になったりするとき、それはうつ病の可能性を示すサインかもしれません。
・目の動き
うつ病の人は、目の動きが乏しくなることがあります。友人が目を合わせることを避けたり、目が虚ろになったりする時は要注意です。
・口元の動き
うつ病の人は、口元の動きも乏しくなることがあります。友人が笑顔を作るのに力が必要な様子や、笑っても目元が動かないなど、微細な表情の変化にも注目しましょう。

これらの変化に気づくことが、友人をうつ病から守る一歩につながります。

うつ病の早期発見と顔つき|友人が知っておくべきこと

もの忘れ外来とは

うつ病は早期発見が非常に重要です。早ければ早いほど、治療の成功率が上がります。友人として、顔つきの変化に気づくことで、その早期発見に貢献することが可能です。

早期発見の重要性

うつ病は心の風邪、といわれることがありますが、これはうつ病も風邪と同じように原因があって発症するという意味であって、決して風邪のように放っておけばそのうち治る、という意味ではありません。
うつ病は、発症から治療開始までの時間が長いほど、回復に必要な時間が長くなるとされています。また、症状が長く続くことで、生活や仕事、人間関係などに大きな影響を及ぼす可能性もあります。そのため、早期に症状を認識し、適切な治療を受けることが重要です。
うつ病の治療は、早期に始めるほど効果的です。薬物療法や心理療法など、様々な治療方法がありますが、これらを早く始められれば、その分良い結果を得られる可能性が上がるでしょう。

顔つきの変化を早期発見のきっかけに

友人として接する時間が多いあなたならではの視点で、顔つきの微妙な変化に気づくことができます。これらの変化を見逃さず、適切なタイミングで声をかけることで、友人のうつ病の早期発見につながる可能性があります。
顔つきの変化を見つけたら、それをきっかけに友人の状況を確認してみましょう。必要であれば、専門家への相談を提案することも忘れないようにしましょう。

友人としてできること|うつ病の顔つきと向き合うためのステップ

もの忘れ外来とは

ここまでうつ病の疑いのある友人の顔つきについて解説してきました。では自分が「友人のあの顔つきは心配だ」と感知したら、次は何ができるのでしょうか。

気づいたらすぐに声をかける

友人の顔つきに変化を感じたら、まずはそのことを直接友人に伝えてみましょう。「最近、元気がないように見えるけど、何かあった?」といった形で、自分の気づきを友人に伝えることが大切です。例えば、カジュアルな食事や散歩を提案し、リラックスした環境で話を聞くのも効果的です。心配する理由を具体的に伝えることで、友人自身も自分の変化に気づくきっかけになるかもしれません。

一緒に専門家への相談を促す

友人がうつ病かもしれないと感じたら、一緒に専門家への相談を促してみてください。
このとき一緒にクリニックに行ってあげてもよいでしょう。例えば、2人でクリニックの前に到着したら友人だけが入って、自分は近くの喫茶店で友人の診察が終わるのを待つような動きもとれるかもしれません。
待ち合わせの約束をしていれば、当日になって「クリニックに行きたくない」と思っても「友人が待っているから行くしかないか」と思ってもらえるかもしれません。そして診察後に友人と会うことができれば、診察の様子を話すことができます。それは初めてクリニックを受診した際の不安を和らげるでしょう。
ただし、無理に同行することのないように気をつけることが大切です。

長期的なサポート

うつ病の治療は、一朝一夕で結果が出るものではありません。友人が専門家に相談し、治療を始めたとしても、その後も長期的なサポートが必要となります。友人として長く見守ってあげてください。
うつ病患者さんは「もう自分にかまわなくていいから」と言うかもしれません。このような表現は、うつ病の人が自分を孤立させようとする典型的な行動の一つです。もしそう言われても、言われたときも、あなたが友人であることを放棄しないというメッセージを伝え続けることが大切です。

そのときは少し時間をおいてから再びアプローチしてあげます。少し離れることでうつ病患者さんに「友人と会いたい」という気持ちが芽生えたら、その再アプローチは効果的になるはずです。「君と話をしているときは落ち着くことができる」と言ってもらえるようになるかもしれません。

まとめ

もの忘れ外来とは

うつ病の友人を支えるためには、顔つきの変化を見逃さず、早期発見が重要です。友人に気づかれたらすぐに声をかけ、必要であれば専門家への相談を促してみましょう。うつ病の治療は、一朝一夕で結果が出るものではありません。友人が専門家に相談し、治療を始めたとしても、その後も長期的なサポートが必要です。

うつ病の友人をサポートすることは、時には難しいかもしれません。しかし、その一方で、あなたが友人として、その友人のうつ病と向き合い、一緒に闘うことができる唯一の人物であることを忘れないでください。そのサインに気付け、適切な行動を起こすことで、友人のうつ病の早期発見と治療に大いに貢献することができます。

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