睡眠薬を処方してもらうには何科を受診する?市販薬との違いも解説
睡眠に悩む方は多く、運動や食事に気を使う方も多いと思います。しかし、基本的な方法でも解決しない場合があります。
睡眠障害の助けになる睡眠薬ですが、睡眠薬を処方してもらうには何科を受診したら良いのでしょうか。
そのような方に向けて、この記事では睡眠薬の処方について、また市販薬との違いについても解説します。
睡眠に悩みを抱えている方はぜひ参考にしてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
睡眠薬を処方してもらうには何科を受診する?
睡眠薬を処方してもらうには何科を受診したら良いのでしょうか?
- 内科
- 精神科
- 心療内科
詳しく解説していきましょう。
内科
内科では、身体的な病気が不眠の原因となっていないかをチェックします。
たとえば、心臓疾患や甲状腺疾患など、身体的な疾患が不眠の背景にあることも少なくありません。
また、軽度の不眠症に対しては内科でも睡眠薬の処方が可能です。かかりつけの医師がいる方は、まずは医師に相談してみましょう。
かかりつけの医師がいない方は、お近くの内科に足を運ぶのがおすすめです。
精神科
精神科は、重度の不眠症や特定の睡眠障害を扱う専門科です。
心の病気やストレスが原因となる不眠症・薬物依存症などがある場合は、精神科での診療が推奨されます。
精神科では、専門的な知識と経験を持つ医師が症状に合わせた適切な治療を提供します。
心療内科
心療内科は、主に精神的なストレス・うつ病・不安障害などを主な診療対象としています。
不眠が心理的な問題から来ている場合、心療内科でのカウンセリングや治療が有効となることもあります。
それぞれの診療科の特性を理解した上で、自身の症状や生活状況に合わせて適切な科を選ぶことが重要です。
睡眠薬の処方薬と市販薬の違い
医師によって処方される睡眠薬は、一般的に長期的な不眠症(例えば、毎晩なかなか眠れなかったり、途中で何度も目が覚めてしまったりする)の治療を目的としています。
これに対し市販の睡眠改善薬は、たまに眠れない夜・眠りが浅いと感じる時のような一時的な不眠の緩和を目指しているのです。
市販の睡眠改善薬は、医師が処方する睡眠薬と比べて、穏やかで自然な眠りを促す効果があります。つまり、これらの薬は体に優しく作用し、自然に眠りに誘導します。
睡眠障害の種類
一言で睡眠障害といってもさまざまな症状が現れ、下記のような睡眠障害の種類があります。
- 不眠症
- 過眠症
- 睡眠時無呼吸症候群
- 概日リズム睡眠障害
- むずむず脚症候群
詳しく解説していきましょう。
不眠症
不眠は非常に一般的な問題で、全国民の約20〜30%が悩んでいるといわれています。
不眠症は睡眠障害の中でも多い症状で、寝つきの悪さ・途中で目が覚める・深く眠れない・朝早く目が覚めるなどの症状です。
このような症状が1ヶ月以上続き、日常生活に影響を及ぼす場合、それを不眠症と呼びます。
不眠症の治療には薬だけでなく非薬物療法も大切な役割を果たし、不眠症の原因や悪化する要素に対処するもので、薬物療法と一緒に行う総合的な治療の一部です。
その第一歩に睡眠衛生教育があります。これは、睡眠を邪魔する要因を減らし、睡眠のメカニズムを理解することを通じて、睡眠に関連する生活習慣や環境を改善することを目指すものです。
さらに、認知行動療法と呼ばれる手法も有効性が報告されており、不眠症の治療に役立てられています。
過眠症
過眠症とは夜間の睡眠に問題がなくても、日中に過度の眠気や居眠りが1ヶ月以上続き、日常生活に支障をきたす状態を指します。
過眠症の中でも最も一般的なものはナルコレプシーです。その他には、深い睡眠が多く全体として睡眠時間が長い特発性過眠症や、1〜3週間程度の睡眠過多期が繰り返す反復性過眠症があります。
ナルコレプシーは「居眠り病」とも呼ばれ、日中にどうしようもない眠気に襲われ、短時間の居眠りを繰り返すこと、そして強い感情が動き出したときに突然筋力が失われる情動脱力発作が特徴的な症状です。
例えば、試験中や商談中といった、普通なら居眠りなどしない状況でも、突然の眠気に襲われて眠ってしまうことがあります。
情動脱力発作では、大笑いしたときなどに全身・膝・首・顎・ほおなどの筋肉が一瞬だけ力を失うのです。
このとき意識ははっきりしており、呼吸に問題はありませんし、すぐに筋力も戻ります。
さらに、ナルコレプシーの患者さんは入眠時に幻覚を見たり、体が動かなくなる睡眠麻痺(金縛り)になったりする可能性があるのです。
入眠時幻覚は、寝る直後でまだ半分ほど意識がある状態で、現実と区別がつかないほど鮮明な夢を見ることを指します。
その内容は、怪物が部屋に入ってきて襲いかかるなど、現実感と恐怖感を伴うものが多いです。
これらの症状は、覚醒状態でありながらレム睡眠(夢を見る睡眠)の特徴である筋力の低下や夢体験が生じるレム睡眠の解離現象が根底にあると考えられています。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中にリラックスすると、上気道が周りの筋肉の緊張が和らいで狭くなり、呼吸が一時的に止まる無呼吸が起こることがあります。
これにより酸素が十分に体に届かず、その状態を呼吸中枢が感知します。睡眠中に短時間だけ覚醒(脳波が活発になる)して呼吸を再開させるのです。
しかし無呼吸が頻繁に起きると、睡眠が何度も中断され、夜間の睡眠の質が低下します。その結果、日中には過度の眠気や全身のだるさが出ることがあります。
さらに、これが成人病などのさまざまな病状を悪化させる要因となることが指摘されていて、肥満の方は顎や顔の形状のため上気道が狭くなりやすいです。
肥満が原因の場合には、生活を改善し、食事や運動による体重の減少が最も効果的な治療となります。
その他、脳から呼吸をする指令が出ないことが関係しているといわれるタイプがあり、心臓や脳の病気等が原因となる場合があります。
概日リズム睡眠障害
人間の体内時計は本来約25時間周期とされていますが、私たちは日々生活する中でこれを地球の24時間リズムに合わせて調整しています。これを「同調」と呼びます。
しかし、概日リズム睡眠障害では、この睡眠と覚醒のリズムが地球の24時間リズムと同調しません。
それにより入眠困難・覚醒障害・体温リズム・睡眠リズムの不調和による疲労感などの症状が出ることがあります。
これを理解するためには、時差ボケが長期間続いている状態を想像すると良いでしょう。
現代社会では、生活が夜型化し、睡眠時間が短くなる傾向にあります。
それにより、夜更かしと朝寝坊が極端になり、このような概日リズム睡眠障害を持つ人が増えているのです。
下記のどちらのタイプも日常生活への適応に大きな影響を与えます。
特に多いのは、睡眠開始時間が大幅に遅く固定される睡眠相後退型です。
もう一つは睡眠と覚醒の時間が毎日1〜2時間ずつ遅くなり、ある時点で昼夜が逆転する非同調型もあります。
一般の不眠症や過眠症とは違い、体内時計に合った時間に睡眠をとれば睡眠自体に大きな異常はないのが特徴です。
むずむず脚症候群
高齢者の間でよく見られる一つの症状は、夕方から夜にかけて寝ようと安静になったときに、下肢にむずむずとした不快感が生じてじっとしていられなくなります。
これは足を叩いたり歩き回ったりといった体の動きを引き起こし、その結果、寝つけなくなる疾患です。
日本ではこの症状の認知度はまだ低いですが、実際にはかなり一般的で、全人口の2〜12%がこの症状を経験していると推定されています。
この症状は鉄欠乏性貧血・妊娠・尿毒症といった状態に伴うことがある一方で、特にその原因が見当たらない特発性の場合もあるのです。
また、一卵性双生児間でこの症状が共通して見られることから、遺伝的な要素が関与している可能性が示唆されるでしょう。
さらに、この症状を持つ人の60%から80%が周期性四肢運動障害という別の症状を同時に持つと報告されています。
睡眠障害の原因
睡眠障害になると様々な症状がでますが、睡眠障害の原因は下記のようなものが考えられます。
- ストレス
- 身心の不調
- 薬の副作用
上記の内容について、詳しく解説していきましょう。
ストレス
ストレスと緊張は、快適な睡眠を阻害します。神経質で真面目な性格の人々は、ストレスをより深刻に感じるのです。
真面目な人ほど不眠について悩む可能性が高く、結果的に不眠症になりやすいと考えられています。
身心の不調
多くの身体の疾患、例えば下記のような疾患が心身の不調の原因の場合もあります。
- 高血圧・心臓病
- 呼吸器疾患
- 腎臓病
- 前立腺の肥大・糖尿病
- 関節リウマチ・アレルギー
- 脳出血・脳梗塞
上記のような疾患が不眠を引き起こすことがあります。
これらの疾患の場合、不眠そのものを治療するよりも、その背後にある疾患を先に治療することが重要です。原因となる症状が改善されれば、不眠も自然と改善されます。
また、心の病気でも多くの場合不眠が伴い、特にうつ病の患者さんが増加しています。単に不眠症だと思っていたものが、実はうつ病であるというケースは少なくありません。
不眠や過度の眠気といった症状に加えて、気分が落ち込んだり・何もする気が起きなかったり・趣味に対する興味がなくなったりといった症状が見られる場合は、早めに専門の医師に相談することが大切です。
薬の副作用
一部の治療薬は、不眠を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
睡眠を邪魔する可能性のある薬には、血圧を下げる薬・甲状腺ホルモン製剤・抗がん剤などがあります。
また、抗ヒスタミン薬は昼間に眠気を引き起こす可能性があり、タバコに含まれるニコチンは覚醒効果があり、睡眠を妨げる可能性があるでしょう。
睡眠薬を処方する際は専門的な知識を持つ医師と一緒に、その症状に適切な睡眠薬を選んでいくと良いでしょう。
睡眠薬なしで不眠を改善するには
睡眠薬なしで不眠を改善するには下記のような方法があります。
- 適度な運動をする
- 日光浴をする
- カフェインを控える
- ブルーライトをカットする
日常生活の改善について、詳しく解説していきましょう。
適度な運動をする
適度な運動は良質な睡眠を促すのに役立つでしょう。
体を動かすことで心拍数が上がり、エネルギーが消費され体温も一時的に上昇します。
その後、心拍数や体温が下がることで自然と睡魔が襲ってくるでしょう。
ただし、寝る直前の運動は興奮状態を引き起こすことがあるため、寝る数時間前に行うことがおすすめです。
日光浴をする
日中の太陽の光を浴びることは、体内時計を正常に保つ上で非常に有効です。
日光による紫外線は体内時計を調整するホルモン、メラトニンの生成を促し、昼夜のリズムを整えます。
特に朝の明るい光を浴びることは、起床時間のリズムを定着させるのに役立ちます。
カフェインを控える
カフェインはコーヒー・紅茶・緑茶・エナジードリンク・一部の薬物・チョコレートにも含まれている、中枢神経を刺激する物質です。
その働きによって一時的に疲労感を軽減し、心身を活性化させることができます。
これが日中の仕事や学習のパフォーマンス向上に役立つ一方で、カフェインが体内に残っていると眠りにくくなる可能性があります。
カフェインの効果は摂取後約30分で表れ、摂取したカフェインの半分が体から排出されるまで、最大で5時間程度です。
したがって、寝る前の数時間はカフェインの摂取を避けることが良質な睡眠を確保するための重要なステップとなります。
カフェインの影響は個人差が大きく、一部の人々はカフェインに対して特に敏感で、少量の摂取でさえも睡眠の質を低下させる可能性があります。
そのため不眠の問題を抱えている場合は、カフェイン摂取の全体的な量やタイミングを見直し、必要であれば専門家に相談することも重要です。
ブルーライトをカットする
スマートフォンやパソコンの画面から発生するブルーライトは、メラトニンの分泌を抑制し、睡眠を妨げることがあります。
寝る前のスクリーンタイムを減らすか、ブルーライトカットの機能や眼鏡を活用し、質の高い睡眠を確保しましょう。
症状に合う睡眠薬を正しく服用しよう
自分に合った睡眠薬を選ぶためには、まず自分の睡眠に関する問題や症状を明確に理解することが重要です。
その上で、専門的な知識を持つ医師と一緒に、その症状に適切な睡眠薬を選んでいくと良いでしょう。
また睡眠薬にはさまざまな種類があり、それぞれの薬がどのような効果を持ち、どのような副作用があるのかを知ることも大切です。
副作用については特に注意し、万が一心配な症状が出た場合はすぐに医師に相談するようにしましょう。
適切な睡眠薬を見つけるためには、医療専門家との密な連携が必要です。
編集部まとめ
睡眠薬を処方してもらうには、特徴や原因によってそれぞれどの科にいくかが違います。
ご自身の状態と状況によって、内科・精神科・心療内科など、生じている睡眠障害によって睡眠薬を処方してもらう場所も変わるでしょう。
睡眠障害を正しく理解して、医師と相談し、自分の症状に合ったものを服用することが大切です。
参考文献