睡眠薬の副作用を解説|種類や副作用が起こる原因・対処法もご紹介
睡眠に悩む方は多く、運動や食事に気を使う方も多いと思います。しかし、基本的な方法でも解決しない場合があります。
そこで、睡眠薬の服用を考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。睡眠障害の助けになる睡眠薬ですが、睡眠薬の副作用には注意が必要です。
そのような方に向けて、この記事では睡眠薬の種類や副作用について解説します。
また、副作用が起こる原因や対処法についても記事内で触れているため、睡眠に悩みを抱えている方はぜひ参考にしてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
睡眠薬の副作用
睡眠薬の副作用については下記のような症状があげられます。
- 日中の眠気
- ふらつき・頭痛
- イライラ
- 悪夢
- せん妄
- 睡眠時異常行動
- 反跳性不眠
上記について詳しく解説していきます。
日中の眠気
日中の眠気は、文字通り日中に強く眠くなる状態です。日中の眠気は、日常生活を妨げ、集中力の低下などを引き起こします。職場や学校でのパフォーマンスを低下させ、場合によっては運転などの安全を脅かす可能性もあるでしょう。
日中の眠気は、睡眠薬の一般的な副作用として知られています。睡眠薬は通常、深い眠りを誘導し、一晩中継続することが目的です。
しかし、これらの薬剤が体内に残留すると、起きているはずの日中も眠く感じることがあります。これは特に強力な睡眠薬を使用したり、推奨される量以上を摂取した場合に一般的です。
ふらつき・頭痛
ふらつきは、身体のバランスや安定性が保てない状態を指します。通常、立っている・歩いている・または急な動きをするときに特に感じます。
ふらつきはめまい感を伴うこともあり、それは周囲の環境が回転しているように感じるか、あるいは自身が動いているかのように感じる状態です。
頭痛は頭全体または特定の部分に痛みを感じる状態で、頭痛の強度は軽度から重度までさまざまで、持続時間も短時間から長時間まで幅広くあります。
睡眠薬が中枢神経系に作用することで、体のバランスを崩す可能性があり、これがふらつきや頭痛を引き起こす原因となります。
イライラ
睡眠薬の副作用として感じられるイライラは、薬物が脳内の神経伝達物質のバランスを変化させることに起因する可能性があります。
睡眠薬は脳内の化学バランスを変化させることで、一部の人々では気分の変動やイライラといった精神的な副作用を引き起こすのです。
また睡眠薬が原因で一晩中ぐっすり眠れなかったり、または睡眠の質が低下したりすると、結果として日中にイライラを感じることもあります。
悪夢
睡眠薬の使用による悪夢の増加は、睡眠パターンと脳内の神経伝達物質のバランスの変化からくる可能性があります。
睡眠はいくつかの段階からなり、これらの段階は一晩中何度も繰り返されます。これらの睡眠段階の一つがREM(Rapid Eye Movement)ステージであり、夢が最もよく観察されるステージです。
一部の睡眠薬はREMステージを抑制し、これによりはじめは夢をほとんど見なくなるかもしれません。しかし、薬物の効果が薄れると、反動でREMステージが急速に増加することがあります。
これを「REM反跳」と呼び、この反跳現象により夢が多くなり、その中には悪夢も含まれることがあるのです。
また、睡眠薬が脳内の神経伝達物質のバランスを変化させることは、夢の内容や感情的な強度に影響を及ぼす可能性もあります。
せん妄
睡眠薬の使用がせん妄を引き起こす主な理由は、これらの薬物が脳内の神経伝達物質のバランスを変化させることにあります。
せん妄は意識の混乱や認知機能の変化を特徴とし、通常は一時的な状態です。こういった症状には注意力の低下・意識の混乱・現実と幻想の区別がつかなくなる・時間や場所に対する認識の喪失などがあります。
睡眠薬は主にガンマアミノ酪酸(GABA)という神経伝達物質の作用を強化することで、脳の活動を鈍らせて眠りを引き起こします。
しかし、これらの薬物が脳内の化学バランスを変えることで、特に高齢者や既存の認知障害を持つ人々においてせん妄を引き起こす可能性があるのです。
また、睡眠薬の中断や急な減量がせん妄を引き起こす原因になることもあります。
これは、薬物が引き起こす脳内の化学変化からの急激な逆転が、神経系にストレスを与えるためです。
睡眠時異常行動
睡眠時異常行動は睡眠中に起きる一連の行動や体験を指し、睡眠歩行・夜間のパニック発作・レム行動障害・特定の睡眠薬の使用に関連する行動などが含まれます。
これらの睡眠時異常行動は、患者が覚醒状態と完全な睡眠状態の間の遷移段階にあるときに起こります。
睡眠薬の使用により異常行動が起こる主な理由は、これらの薬物が脳内の神経伝達物質のバランスを変え、睡眠パターンを変化させることがあるのです。
睡眠薬として一般的に使用されるベンゾジアゼピン系は、中枢神経系に深く作用し睡眠状態と覚醒状態の境界をぼんやりとさせる可能性があります。
これにより、睡眠中に通常は起こらないような行動(例えば、睡眠中に食事をする・運転をする・電話をかけるなど)が起こりえるのです。
これらの行動は、個人が完全に覚醒しているわけでもなく、完全に眠っているわけでもない状態で起こります。また、これらの行動は記憶に残らないことが特徴です。
反跳性不眠
反跳性不眠は睡眠薬を一定期間使用した後、薬物の使用を中断または減量した際に、はじめの不眠症状が一時的に増悪する現象を指します。
睡眠薬を一定期間以上使用すると、脳が薬物の存在に慣れてしまい、自身のGABA生産を抑制するようになります。これは脳が薬物に対する耐性を形成している状態です。
睡眠薬を使用した状態で睡眠薬の使用を突然中断したり、用量を大幅に減らしたりすると、脳は薬物の助けなしに自身のGABAを生産する必要性に直面します。
結果、一時的に不眠症状が悪化する可能性があり、これを反跳性不眠と呼びます。
睡眠薬の種類と副作用
色々な副作用がある睡眠薬ですが、睡眠薬の種類と副作用はどのようなものがあるでしょうか。
- 超短時間型
- 短時間型
- 中時間型
- 長時間型
上記について詳しく解説していきます。
超短時間型
代表的な薬として、マイスリー・アモバン・ルネスタ・ハルシオンがあり、これらは非ベンゾジアゼピン系とベンゾジアゼピン系です。
超短時間作用型の睡眠薬は、寝る前になってもなかなか眠れない人や、寝つきが悪い人に向いています。
しかし、睡眠薬を飲むと頭がぼんやりすることがあり、翌朝になっても夜中に何があったか覚えていないときがあるでしょう。
また、この薬を突然止めると一時的に不眠がひどくなることがあります。薬を止めようとすると身体がそれを求めるようになることがあり、睡眠薬を止めるのは難しい傾向にあります。
短時間型
代表的な薬として、レンドルミン・エバミール・リスミーがあり、これらは全てベンゾジアゼピン系です。
短時間作用型の睡眠薬は、寝つきが悪い人によく使われます。超短時間作用型の薬と比べて、翌日になっても薬の効果が残ることが少ないので、朝スッキリと起きれる可能性が高いです。
しかし、睡眠薬を毎日続けて飲むと、日中に不安を感じることが増えるかもしれません。そのため、睡眠薬を飲むときは注意が必要です。
中時間型
代表的な薬としてユーロジンやベンザリン・サイレースがあり、これらはベンゾジアゼピン系です。
中間作用型の睡眠薬は、寝つきが悪い人・夜中に何度も目が覚める人・早く目が覚めてしまう人のための薬になります。
睡眠薬は急に止めても、寝つきが特に悪くなったり、体調が悪くなったりすることが少ないです。しかし、毎日飲んでいると体内に薬が溜まり、次の朝まで眠さが続くことがあります。
中間作用型の睡眠薬を飲むときは、次の日の朝まで眠気が続くことを理解しておきましょう。
長時間型
代表的な薬にはドラールがあり、これはベンゾジアゼピン系です。
長時間作用型の睡眠薬は、その名の通り、効果が長く続くことで知られています。これは体内で薬の量が半分になるまでの時間が24時間以上だからです。
結果夜間だけでなく日中の不安感にも対処できます。
しかし効果が長く続くため、日中の思考や動きに影響を及ぼす可能性があり、高齢の人にとって注意が必要です。
睡眠薬の副作用で太ることはある?
ベンザリンなどの睡眠薬には、体重が増える副作用はないので、薬を飲むだけで体重が増えることはありません。
ただ睡眠薬は心をリラックスさせる薬なので、飲むことで気持ちが落ち着き、食欲が出ることがあります。そのため、食べ過ぎてしまって体重が増えることはあるかもしれません。
睡眠薬を飲んでいるときは、自分がいつも以上に食べていないか、よく確認してみてください。
睡眠薬の副作用が起こる原因
睡眠薬の副作用が起こる原因には下記のような原因があげられます。
- 服用する量が多い
- 睡眠時間と薬の作用時間が合わない
- 睡眠薬を飲むタイミングを間違えている
詳しく解説していきます。
服用する量が多い
睡眠薬の副作用は、服用する量が多い場合に特に起こりやすいです。医師が処方した量を超えて服用したり、1日に何度も服用したりすると、副作用のリスクが高まります。
ふらつき・頭痛・日中の眠気などが発生することがあるので、適切な量を服用して、副作用を予防しましょう。
このような症状が起こる場合、医師や医療専門家と相談することが重要です。自己判断で睡眠薬を中断したり、用量を減らしたりするのは避けてください。
医師は睡眠薬の使用を段階的に減らすよう指導したり、別の治療法を推奨したりすることがあります。
睡眠時間と薬の作用時間が合わない
睡眠薬は、薬の種類によって作用時間が異なるので注意が必要です。
例えば、短時間作用型の睡眠薬はすぐに効果が出て、数時間で効果が消える設計になっています。
一方で、長時間作用型の睡眠薬はゆっくりと効果が出て、一晩中効果が持続するでしょう。
睡眠時間と薬の作用時間が合わないと、眠りたいときに眠れなかったり、逆に目覚めたいときに眠気が続いたりするので注意してください。
睡眠薬を飲むタイミングを間違えている
睡眠薬は一般的に寝る前に服用することが推奨されています。基本的な就寝時間に合わせることで生活リズムを取り戻すためです。
しかし、就寝時間から外れた時間に服用してしまうと、薬の効果が必要ない時間帯に出てしまうことがあります。
これにより日中の眠気やふらつきなどの副作用を引き起こす一因になり、適切なタイミングでの服用が、副作用の予防には重要です。
睡眠薬が効きすぎてしまったときの対処法
睡眠薬が効きすぎてしまったときの対処法には下記のような方法があります。
- 専門家と相談する:まず第一に自分だけで判断せず、状況を医師や薬剤師に伝え、アドバイスを求めましょう。
- 服用量の調整:薬が強すぎると感じるなら、服用している量が過剰かもしれません。医師と話し合い、服用量を見直してください。
- ライフスタイルの改善:アルコールの摂取や食事のタイミング等、ライフスタイルが薬の効き方に影響を及ぼすことがあります。適切なライフスタイルを取り入れ、薬の効きすぎを防ぎましょう。
- 薬の種類を見直す:ある種類の薬が特に強く効く場合は、医師と話し合い、別の種類の睡眠薬に切り替えることも一つの選択肢です
- 睡眠習慣の改善:良い睡眠習慣を身につけることで、自然に良質な睡眠を得られるようになり、睡眠薬への依存を減らせます。リラックスできる就寝前の時間を設けたり、適切な睡眠時間を保つよう心掛けましょう。
睡眠薬が強すぎると感じたときには、自分で薬を減らしたり止めたりするのは危険です。どのような行動を取るにせよ、必ず医療専門家の指導を受けるようにしましょう。
症状に合う睡眠薬を服用しよう
自分に合った睡眠薬を選ぶためには、まず自分の睡眠に関する問題や症状を明確に理解することが重要です。
その上で、専門的な知識を持つ医師と一緒に、症状に合う睡眠薬を選んでいくと良いでしょう。
また睡眠薬にはさまざまな種類があり、それぞれの薬がどのような効果を持ち、どのような副作用があるのかを知ることも大切です。
副作用については特に注意し、万が一心配な症状が出た場合はすぐに医師に相談するようにしましょう。
適切な睡眠薬を見つけるためには、医療専門家との密な連携が必要です。
編集部まとめ
睡眠薬にはこのようにさまざまな副作用があり、特徴や原因は薬によってそれぞれ異なります。
また薬の種類によってそれぞれ4つのタイプに分けられ、超短時間型・短時間型・中時間型・長時間型など、生じている睡眠障害によって睡眠薬の効果を使い分けます。
睡眠薬には副作用もありますが、医師と相談し、自分の症状に合ったものを服用することが大切です。
参考文献