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物忘れはセルフチェックできる?認知症による物忘れ・加齢による物忘れの特徴を解説

 公開日:2024/02/21
物忘れはセルフチェックできる?認知症による物忘れ・加齢による物忘れの特徴を解説

最近探し物が増えた・名前が出てこない・計算が面倒になったなど今までできていたことができなくなることがありませんか。

物忘れは脳の老化が原因で、誰にでも起こりうる現象です。物忘れにより、他人に迷惑をかけてしまったという人もいるのではないでしょうか。

しかし、認知症が原因の物忘れと、加齢による物忘れとは性質が大きく異なります

加齢によるただの物忘れだと思っていたら、認知症の始まりだったという可能性も否めません。

認知症による物忘れはセルフチェックである程度の判別はできます。この記事ではセルフチェックとあわせて、認知症による物忘れ・加齢による物忘れの特徴を解説します。

勝木 将人

監修医師
勝木 将人(医師)

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2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

物忘れはセルフチェックできる?

物忘れはセルフチェックできる?
物忘れの程度をチェックすることで、認知症によるものか判断することが可能です。各自治体やクリニックなどのホームページで、セルフチェックができるシートを公開しています。
例えば、「同じことを何回も言ったり聞いたりする」「よく知っている人の名前を忘れる」などの質問事項があります。
当てはまる項目が多いほど、認知症の可能性が高いです。早めにかかりつけの医師に相談してください。

認知症による物忘れの特徴

認知症による物忘れの特徴
認知症による物忘れには、どういった特徴があるのでしょうか。
認知症の場合は物事を記憶する機能に障害が起こります。そのため、財布をしまったことを忘れる・約束をしたことを覚えていないなどの症状がでます。
ほかにも見当識障害や理解・判断力の障害などがあります。見当識とは、日にち・時刻・場所・人物・周囲の状況などを総合的に判断して自分が今置かれている状況を理解する能力です。
下記では、認知症による物忘れにはどんな症状がでるのか解説します。

日にちや曜日がわからない

見当識障害は、日にちや曜日感覚がわからなくなる症状です。
日にちや曜日を間違えるだけでなく、夏や冬などの季節や1日の朝・昼・夜の区別がつかなくなり、朝食をとったかどうかもあやふやになってしまうケースもあります。

場所がわからない

場所が分からない
見当識障害の1つとして、街並失認と道順障害もあります。街並失認とは建物や風景の識別ができなくなることで、外出すると家まで戻ってくることが困難になります。
道順障害は、目的地を識別はできるものの、見慣れた道であってもどの方角に曲がればよいかなどわからなくなる症状です。
認知症の人が迷子になってしまうのは、これらの障害がでているためです。

身近な人や物の名前がすぐに出てこない

症状が進行し、過去の記憶が失われはじめると人間関係についての見当識障害がでてくるでしょう。
自分の名前や生まれ育った場所に関する認識を失い、家族や友人などの人間関係のつながりもわからなくなってしまいます。
認知症の人によくみられる症状として、子どもを自分の親や親族と間違えるというのがあります。それは、過去の記憶が失われたためです。
例えば20代以降の記憶をなくした場合、自分に子どもがいるとは思っていません。そのため、親や親族と勘違いしてしまうのです。

同じことを何度も言う・聞く

支離滅裂な行動をしたり、TPOにそぐわない不適切な行動をしてしまったりするのは、「前頭側頭型認知症」の可能性が高いです。「神経変性」による認知症では、前頭葉・側頭葉前方の萎縮がみられます。
神経変性は何らかの要因で脳や脊髄の神経細胞が失われ、認知症や運動障害が発症する病気です。
前頭葉・側頭葉前方にはそれぞれ以下の役割があります。

  • 前頭葉:人格・社会性・言語
  • 側頭葉:記憶・聴覚・言語

前頭側頭葉型認知症を発症すると、これらの機能が正常に作動しなくなります。そのため、同じことを繰り返すようになるのです。

物忘れをしている自覚がない

認知症は自覚が難しいと思われますが、認知症を自覚できるケースがあります。
認知症を自覚できる・または自覚できないケースについて解説します。
まず、認知症を自覚する場合というのは、日常生活が困難な人に多くみられる傾向があります。日常生活のなかで家事や仕事がうまくいかなくなるといったことが起きます。そしてもの忘れが増えるなど具体的な症状が現れ不安を覚え自覚するのです。
次に、認知症を自覚できないのは、認知症の人が自分の行動自体を忘れてしまっているためです。そのため、人から指摘されても自分は悪くないと思ってしまいます。
家族や友人のアドバイスも、本人にとってはストレスになります。そのため、精神状態が不安定になり、自覚しないまま症状が悪化する場合もあるでしょう。

体験自体を忘れる

体験自体を忘れる
普通の人は細かいことは忘れても、重要だと思うことや体験したことを忘れることはありません。しかし、認知症の人はできごとの全体をごっそり忘れてしまうことがあります。
訪ねてきた人が帰った後に、「だれも来ていない」と言ったり、デイサービスから帰った後「どこも出掛けていない」などと言うことがあります。
これは認知症の記憶障害の特徴の1つです。加齢による物忘れでも体験したことを忘れることはありますが、忘れるのは体験したことの一部分だけです。

加齢による物忘れの特徴

加齢による物忘れの特徴
加齢による物忘れには、情報を必要に応じて思い出す「想起(再生)」の機能が低下するために起こり、覚えたことを思い出すまでに時間がかかります。
例えば次のようなことです。

  • 眼鏡をどこに置いたか忘れてしまう
  • お昼に何を食べたか思い出せない

眼鏡を置いたことや食事をしたことは覚えており、体験の一部のみを忘れるのが加齢による物忘れです。自分が忘れているという自覚があります。
そのため、加齢による物忘れの場合は、最近物忘れがひどくなった、と感じても日常生活に支障はありません。また、認知症のように症状が進行したり記憶以外の障害がみられたりすることもありません。

有名人の名前を思い出せない

テレビを見て、芸能人が出ているのに名前が出てこないことがあります。
これは、いままで覚えた「長期記憶」が思い出せなくなることによる物忘れと考えられます。加齢とともに生じる生理現象です。長期記憶とは、ほぼ永久的に覚えていられる記憶です。
人間の得た情報は脳の海馬で保存され、必要なものとそうでないものに選別されます。
必要な情報は、海馬から保存庫の役割をもつ大脳皮質に移し替えられ、長い間保存されます。これが長期記憶です。
長期記憶は忘れにくい代わりに、海馬が大脳皮質内を検索して必要な情報を取り出すため、思い出すのに時間がかかることがあります。
また、加齢による海馬の機能低下で保存場所がわからなくなり、覚えた記憶が思い出せなくなることがあるのです。
特に名前などの固有名詞は思い出しにくい代表的な例となります。苗字などのヒントを出されると思い出せるのは完全に忘却しているわけでないからです。

物をしまった場所を忘れる

ポストに封筒を入れたと思ったら鞄の中に入っていた、このようなことは、短期記憶の喪失といえます。
これは、疲れているときや気持ちが落ち込んでいるときに起こりやすくなります。もしこのような物忘れが増えてきたら心の状態を疑ってみることも大事です。
心の不調は記憶力が低下する大きな要因です。物忘れが多いときはこのような精神状態も確認しましょう。

買うつもりだったものを買い忘れる

加齢による物忘れの一つで、買い物へ行ったときに、うっかり買い忘れることがあります。
買い物に行く前は覚えているのですが、複数の買い物をしているうちにうっかり忘れてしまうのです。
認知症の場合は買い物に行ったことを忘れ、また買い物へ行く行動がみられます。

物忘れを自覚している

物忘れを自覚している
物忘れを自覚していれば問題ありません。物忘れの症状は、人によってレベルが異なります。
大部分の人が物忘れを自覚し始めるのは、人の名前が出てこない・物のしまった場所を忘れる・買い物で買うつもりだったものを忘れるなど、うっかりしたミスではないでしょうか。
しかし直前の記憶を忘れてしまっているようなら、認知症の可能性が考えられます。

体験の一部のみを忘れる

例えば手紙を出したという体験を忘れる場合は認知症の可能性が高くなりますが、手紙に書いた内容を忘れるというような記憶の一部を忘れるのは加齢によるものといえるでしょう。
記憶は、ストレス・飲酒・体調などによっても影響されます。物忘れがあったからといって過度に心配しすぎずに、まずは生活に支障があるレベルかどうかを判断することが大事といえます。

認知症かどうか不安ならチェックリストで調べる方法も

認知症かどうか不安ならチェックリストで調べる方法も
ホームページで検索すると、いろいろなチェックリストが出ますが、例えば和歌山県立医科大学附属病院 認知症疾患医療センターでは次のようなリストを出しています。

  • 同じことを何回も言ったり聞いたりする
  • 今切ったばかりなのに電話の相手の名前を忘れる
  • しまい忘れ・置き忘れが増え、いつも探しものをしている
  • よく知っている人の名前を忘れる
  • ものの名前が出てこなくなった
  • 簡単な計算の間違いが多くなる、いつも大きなお金で支払いをする
  • 料理・片付け・運転などのミスや、蛇口・ガス栓の閉め忘れが多くなった
  • 雑誌や新聞、テレビ番組の内容が理解できなくなった
  • 薬の飲み忘れが多くなった
  • 今日の日付・時間がわからない
  • 慣れているところでも道に迷うことがある
  • 約束の日時・場所を忘れたり 間違えたりする
  • ささいなことで怒りっぽくなった
  • 自分の失敗を人のせいにしたり、以前よりも疑い深くなった
  • 趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなった
  • 身だしなみに気をかけなくなった
  • 一人で外出することが減った
  • 気分が落ち込みやすくなった

このチェックリストに当てはまる数が多いほど、認知機能や社会生活に支障が出ている可能性があります。

認知症の物忘れ以外の症状は?

認知症の物忘れ以外の症状は?
認知症は、物忘れだけでなく、次のような怒りっぽくなる・意欲が低下するといった症状も生じるのです。それぞれ紹介します。

怒りっぽくなる

認知症の初期症状で怒りっぽくなります。原因は、感情を抑制できなくなるからです。「易怒性」という認知症の症状の一つです。
認知症によって、大脳の前頭葉部分が委縮し、感情をコントロールできず怒りやすい性格になります。
怒りっぽくなる性格の原因はその他に人間関係の悪化・体調不良・薬の副作用もあるのです。
急に不機嫌になる・大声をあげ威嚇する・殴りかかろうとするような行動をするようになります。

意欲が低下する

認知症を発症すると早い段階から、意欲低下がみられるようになります。
元気で活発に活動していた人でも、意欲低下により覇気が感じられなくなります。このように何も手につかなくなるような状態をアパシーというのです。
意欲低下の原因は、認知症になると脳の活動が劣り、以前よりも一層脳を使って周囲と合わせようとします。そのため多くのエネルギーを使い心身共に非常に疲れやすくなるからです。
その結果、今までは楽しいと感じていたことがつまらない・やりたくないといった意欲低下に繋がります。

  • オシャレ好きな人が、身だしなみが気にならず風呂に入らなくなる
  • 活動的だった人が、人との交流を避けるようになる
  • 好きだった趣味や活動が楽しくなる

これらの症状は比較的軽度な方ですが、悪化すると次のような症状が出るようになります。

  • 生きることのエネルギーがどんどん失われる
  • 認知症の進行に伴い、以前とは全く異なり才能や特技が薄れた姿になる

生きるエネルギーを失うということは、生きるために必要なことをしなくなるということに繋がります。

物忘れの対処法は?

物忘れの対処法は?
物忘れを防止するには、目に見える対策だけではなく普段の生活習慣も見直します。
生活習慣を見直し、脳の活性化と、身体の疲労を削減しましょう。
次に、紹介するメモやリストを活用したり、アラームを活用したりすることは簡単にできます。
物忘れで日常生活に影響が出ないよう、「忘れないように」また「思い出せるように」工夫しましょう。

メモやリストを活用する

付箋にメモし、常にチェックすることで物忘れを防止できます。忘れてはらならないことは付箋に書き、見えるところに貼ります。メモ帳だと書いたことを忘れてしまう可能性があるため効果がありません。
付箋は取り扱いが簡単で、使い終わったら捨てるだけのため、後片付けも簡単です。
また、ToDoリストを作るのも効果的です。自分でやるべきことを洗い出してリスト化すると、何をする必要があるのか明確になります。
リストの内容を緊急度や重要度で分けておくと、やるべきことの優先順位がわかりやすくなるでしょう。
また、やるべきことに着手する時間を決め、時間通りに行動すると効果が上がります。

アラームを活用する

アラームやリマインド機能を使うことも効果的で、スマートフォンとスケージュール帳で確認することは、物忘れの防止にうってつけです。
スケジュールアプリは、時間になるとアラームで知らせてくれます。すべきことを思い出させます。
そのうえ、いつ何をするのか予定を具体的に入れることで、すぐに物事に着手できるのです。
周りの人に迷惑の掛からない程度にリマインドしてもらう方法もあります。

編集部まとめ

家族
物忘れといっても、認知症によるものと加齢によるもので症状が大きく異なります。

加齢による物忘れは老化現象の一種ですので、気にする必要はありませんが、認知症は早期発見・早期治療することが大切です。そのため、日常生活から物忘れの様子をチェックして、加齢によるものか、認知症によるものなのかしっかり見極めましょう。

なお、物忘れはメモ・リスト・スマホなどのアラームを使うことで防ぐことができます。

物忘れをセルフチェックしたり少しの工夫をしたりすることで日常生活に支障ない生活ができます。

この記事の監修医師