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生理痛に漢方は効果的?種類・症状改善について解説

 公開日:2024/03/06
生理痛 漢方

女性にとって生理は健康の証である一方、症状がひどい方にとっては辛い期間でしょう。

生理痛の症状に対処するための方法として市販薬を用いるのが一般的ですが、近年、漢方が注目されています。

漢方は市販薬と比べて即効性で劣るものの、体質の改善を含めた根本的な痛みへの対処ができる特徴があります。

この記事では漢方の種類や症状の改善効果を解説します。この記事を参考に、自身の体質に合った有効な漢方を選んでいただけると幸いです。

馬場 敦志

監修医師
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

プロフィールをもっと見る
筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

生理痛に漢方薬は効果的?

お茶
生理痛がひどくて悩む女性は少なくないです。しかし生理痛がひどくない女性も一定数存在するので、生理痛の辛さが理解されないもどかしさを抱える方もいるでしょう。
特に仕事や私生活に影響が出る程症状が辛い方は、一刻も早く症状を抑えるために市販薬を服用するケースもあるかもしれません。
もちろん市販薬でも十分生理痛に対処できますが、症状によっては漢方を服用する方が効果的な場合があります。
漢方とは、東洋医学をベースとした薬です。漢方では体の不調の原因を気・血・水の3つの要素に分けて考えます。
ひどい生理痛などは「血」の異常である瘀血(おけつ)として考えられています。そのため生理痛の改善を目的とした漢方の服用では、血流の改善を図るのが一般的です。
特に生理痛の症状のひどさは、体格や年齢からくる体質の影響が大きく現れます。漢方は体質の改善を図り、症状の根本的な原因に対処できるのです。

生理痛に効く漢方の種類

漢方 生薬
漢方にはさまざまな種類があります。すでに述べたように、生理痛の症状や原因となる体質はさまざまなので、それぞれの状況に合わせた漢方選びが大切です。
主な漢方は以下の5つです。

  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
  • 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
  • 加味逍遙散(かみしょうようさん)
  • 温経湯(うんけいとう)

生理痛の症状や体質などによって有効な漢方は異なるので、それぞれの特徴を理解しましょう。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は特に冷え性の傾向が強い方に処方されます。生理痛・生理不順・めまい・むくみなどにも効果があります。
また、主に若い女性に処方されるのが特徴です。特に生理が遅れるなどの生理不順に一定の効果があるとされています。

桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

桃核承気湯(とうかくじょうきとう)は自律神経の乱れからくる精神不安・腰痛・頭痛などに効きます。
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)が処方される女性の症状として特徴的なのは、顔が赤くなることです。このような女性は冷え・のぼせなどに悩まされている傾向にあります。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は生理痛・精神不安・腰痛・頭痛などに効果があります。
処方されるのは、主に体力のある女性です。このような女性の傾向として、生理が早まり気味・出血量が多めなどの特徴があります。

加味逍遙散(かみしょうようさん)

加味逍遙散(かみしょうようさん)も生理痛・精神不安・腰痛・頭痛などに効果があります。
中年女性に処方されることが多く、このような女性には発作性のぼせやイライラが生じる傾向があります。

温経湯(うんけいとう)

温経湯(うんけいとう)は冷えをともなう生理痛や下腹部の痛みがひどい方などに有効です。
特にお腹の弱い女性に多く用いられます。また、皮膚の状態をよくする働きもあるので、女性にはうれしい漢方だといえます。

漢方薬は生理の症状改善にも役立つ?

うなだれる女性
すでに述べたとおり、漢方薬は生理の症状改善にも役立ちます。期待できる主な効果は以下のとおりです。

  • 生理不順が改善すうる
  • 足腰の冷えが改善する
  • 貧血にならなくなる
  • ホルモンバランスが安定する
  • 止血効果がある

上記の症状は生理痛で悩む方に特に見られる症状です。これらは漢方によって改善が見込まれるため、ぜひ試してみることをおすすめします。

生理不順が改善する

漢方で生理不順が改善することがわかっています。漢方の効能である体温の上昇が生理不順の改善に大きく寄与します。
そもそも生理不順は生理の周期が不安定なことをいいます。一般的には25〜40日周期で生理になるのが正常です。
しかし生理不順の場合、上記の期間より大幅に遅れたり早まったりするのです。このような症状は、仕事やプライベートの予定を立てにくくなるだけでなく、将来的な妊娠の可能性の低下などにも影響します。
このような生理不順を改善するため、漢方のなかでも上記で紹介した当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を服用するのが効果的です。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は血のめぐりを改善し体温を高く保つ効果があるので、生理の周期も安定するようになります。

足腰の冷えが改善する

足腰の冷えが改善することも漢方の特筆すべき効能です。上述したとおり、漢方には血の巡りを改善する働きがあります。
血の巡りが良くなることで手足の末端まで血液が循環するようになり、冷えなどの改善につながります。
冷えの改善につながるのは、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などの漢方です。漢方内科などで、自分に合った漢方はどれなのか相談してみるといいでしょう。

貧血にならなくなる

漢方を服用すると貧血になりにくくなります。貧血は生理中の症状として知られていますが、原因は鉄分の不足などにあります。
生理が起こると生理出血をともないますが、特に生理出血の量が多い女性は貧血になりやすい傾向があるのです。
漢方では貧血に対する治療を「気」と「血」を補うことで行います。
特に当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などの漢方は血の巡りを改善するほか、血の生成も促すので貧血の症状によく用いられます。

ホルモンバランスが安定する

ホルモンバランスも漢方で整えることができます。漢方ではホルモンバランスの乱れは「気」の乱れとしてとらえられています。
「気」を補うものとして特に用いられている漢方は月見草です。月経前症候群や更年期障害などほかの婦人科関連の病気にも効果があるとされています。
また、月見草は婦人科関連の病気だけでなく傷に塗布するなどの使われ方もしています。
ホルモンバランスの乱れは精神的な不安定さなどにもつながるため、漢方でじっくり改善していくのがおすすめです。

止血効果がある

漢方を服用すると止血効果も得られます。生理出血が起こると血が出ていく状態ですが、多い方だと血が不足する状態になります。
この状態は漢方でいう血虚(けっきょ)です。血虚になると上記で述べた貧血の状態になりやすいです。
これを防ぐために用いられるのが四物湯(しもつとう)です。四物湯(しもつとう)は血虚に対する基本的な療法だとされており、よく用いられます。
四物湯(しもつとう)を服用すると血液の流れが調整され、出血量を抑えることができるのです。
過剰に血液が出ていかない状態を保てれば、結果的に貧血になることを防げます。

月経困難症にも役立つ漢方

漢方薬
月経困難症とは生理にともう腹痛や腰痛がひどい状態を指し、子宮内膜症や子宮腺筋症などを原因疾患とするケースもあります。
このような月経困難症にも漢方は有効です。ここでは月経困難症に有効な漢方を、以下の3点に絞って解説します。

  • 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
  • 当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

漢方は体の内側から症状を改善するのに適した薬です。市販薬よりもじっくり時間をかけて体質を改善していけるのが特徴なので、ぜひ自分に合った漢方を試してみましょう。

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は、筋肉の痙攣などを抑える効果があります。そのため、月経困難症のなかでも腹痛や腰痛などがひどい場合に処方されるようです。
市販薬でいう鎮痛剤のような役割をもっているので、あらゆる生理痛への対処として有用な漢方です。

当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)

当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)は、もともと体力が低めの方や顔色が優れない方の生理痛に効く漢方です。
このような女性は疲れやすい特徴があり、生理出血や腹痛がひどいケースがほとんどです。
当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)を服用すると体を徐々に温め、痛みなどを軽減してくれる効果があります。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は生理痛に用いられる漢方としてメジャーな薬です。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を服用すると血の巡りを改善し、体温の上昇を助けます。
また、余分な水分を放出させる働きもあるため、生理中にむくみやすい方にもおすすめできる漢方です。

生理痛に効果的な漢方薬は保険適用できる?

生理痛に効果的な漢方薬は保険適用できる?
漢方は保険適用できます。大幅に保険適用される漢方が増えたのは1976年とされています。
日本の医療は特殊で、診療や治療にあたっては西洋医学をベースとしつつ漢方医学も取り入れられてきました。
そのため漢方による治療が公的に認められており、早い段階で保険適用されている背景があります。
ただし基本的に医師の処方する漢方は保険適用となりますが、漢方薬局などの処方する漢方のなかには稀に保険適用外のものも存在します。
保険適用になるかどうかは,、医師やスタッフに十分確認のうえ、購入を検討しましょう。

漢方薬以外で生理痛の症状を緩和させる方法は?

湯たんぽで体を温める女性
漢方以外で生理痛の症状を緩和させる方法では、日常生活に気を付けることなどが挙げられます。
例えば、体を温める・楽な姿勢をとる・適度にトレーニングや運動をするなどが挙げられます。
生理痛の症状は日常生活の体の状態に依存するので、なるべく痛みが起こらないような生活を心がけることが重要です。
また、痛みの緩和に対して即効性を求めるのであれば鎮痛剤です。鎮痛剤の主な特徴としては、生理痛の原因となるプロスタグランジンを抑える効果が挙げられます。
プロスタグランジンが子宮内で発生すると筋肉の収縮が起き、腹痛などの生理痛に発展するのです。

編集部まとめ

漢方薬と水
この記事では生理痛に漢方が効果的かどうか・漢方の種類・症状の改善効果などを解説しました。

生理痛に漢方は有効です。漢方には血のめぐりを良くしたり体温を上昇させたりなど、さまざまな作用があります。

市販薬などに比べてじわじわと体の体質を改善していけるのも特徴で、近年注目されつつある薬です。

漢方の種類は主に以下の5種類です。

  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
  • 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
  • 加味逍遙散(かみしょうようさん)
  • 温経湯(うんけいとう)

これらは女性の生理痛における腹痛・腰痛・めまいなど、さまざまな症状に有効な漢方です。

もちろん、漢方以外にも日常生活の過ごし方や市販薬などで生理痛に対処することは可能です。

しかし先述したように漢方は内側からじわじわと体質を改善していけるので、中長期的に生理痛を改善する方途として注目されています。

気になる方は医師などと相談しながら、自分に合った漢方を選びましょう。

この記事の監修医師