トリコモナスの感染経路は?男性は症状に気づきにくいので要注意!
トリコモナスは、主に性行為によって感染する性感染症で、早期発見と早期治療が重要な疾患です。男性と女性とでは症状が異なり、トリコモナスに感染した男性の多くが無症状もしくは自覚症状がないと言われています。本記事では、トリコモナスについて、男女別の症状や感染経路、検査方法とその費用、治療方法、予防方法を詳しく紹介します。トリコモナスに関する正しい知識を得ることで、感染予防や健康管理に役立てていただければ幸いです。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
トリコモナスについて
トリコモナスの特徴や現れる症状、感染によるリスクについて解説していきます。「感染しない」「感染を拡大させない」ためにも、トリコモナスについての正しい知識を身に付けましょう。
トリコモナスとは
トリコモナスは肉眼で見ることができないほどの小さな原虫で、この原虫が性器内に侵入して炎症を引き起こす性感染症です。寄生部分は男女で異なり、男性は前立腺や精のう、尿道、女性は膣内や子宮頸管(けいかん)、膀胱(ぼうこう)、尿道に寄生します。
基本的に性行為を行うことで感染しますが、タオルや下着などを共有したり、便器や浴槽などに付着したトリコモナス原虫に性器が接触したりすることで感染する可能性もあります。性行為経験のない人や子どもが感染することもあるので、注意が必要です。
トリコモナスの症状
トリコモナスに感染すると、現れる症状が男女で大きく異なります。男女別にそれぞれの主な症状について見ていきましょう。
・男性の場合
男性の場合は、軽い排尿痛やかゆみ、尿道からの分泌物(うみ)といった症状が現れます。しかし、男性は無症状の人が多く、感染していることに気づかず放置してしまうケースが多く見られます。
パートナー間で性感染症をうつし合う「ピンポン感染」の原因にもなるので、少しでも気になる症状がある場合は、泌尿器科や性病科を受診することが大切です。また、男性の場合、トリコモナスが前立腺や精のうに寄生していることも多く、放置すると尿道炎や前立腺炎を引き起こすと言われています。
・女性の場合
女性の場合は、膣や膀胱が炎症を起こしたり、性交時に痛みを感じたり、あわ状のおりものが増加し強い臭いがするといった症状が現れます。しかし、女性感染者の約2割から半数の方は症状がなかったり、自覚症状があまりなかったりするとも言われているので注意しなければなりません。また、妊婦がトリコモナスに感染すると、早産のリスクが高まるとされています。
もし、トリコモナスにパートナーが感染した場合、特に症状がなくても医療機関を受診し、検査することが大切です。また、男女ともに、トリコモナス以外にも似た症状を引き起こす病気があり、個人差もあるため、症状だけでの自己診断は避けましょう。少しでも不安な方は専門家に相談し、検査することをおすすめします。
トリコモナスの感染経路
トリコモナスの感染経路は、主に感染者との性行為と言われていますが、時には心当たりがないのに感染する場合もあります。トリコモナスの感染経路について知ることで予防につなげましょう。
性行為による感染
男性の場合は前立腺や精のう、女性の場合は腟や子宮頸管に寄生しているトリコモナス原虫が、性行為を行うことで精液や腟分泌液を介して感染します。また、口腔性交や肛門性交、キスによってトリコモナス原虫に感染する場合もあるので注意が必要です。男女ともに性交渉のすぐあとに排尿することで、尿道への感染を防げる場合もありますが、女性は膣と尿道の場所が異なるため膣への感染は排尿では予防できません。
下着、タオル、便器、浴槽での感染
トリコモナス原虫は、タオルや下着、浴槽、トイレの便座などにも付着し、接触することで性行為経験のない人や幼児でも感染することがあります。家族に感染者がいる場合は、タオルや下着などの共有、感染者が入浴した浴槽に入るのはやめましょう。また、銭湯や公共のトイレなどを使用する際は、浴槽やイス、便座などに性器が直接触れないように注意することで感染のリスクを下げることができます。
公共のトイレを使用する際は、便座などを除菌スプレーなどで消毒したり、便座シートを敷いたりするとよいでしょう。
女性の場合は膣や子宮頸管からの感染
女性の場合、性行為などにより腟や子宮頸管に感染します。また、治療したにもかかわらず膣や子宮頸管、尿路にトリコモナス原虫が残存していると自己感染することもあります。特に生理中はトリコモナスが増殖しやすく、感染のリスクや再発する可能性が高くなるため、性行為は控え、感染している場合はしっかり完治することが大切です。
男性の場合は前立腺からの感染
男性の場合、性行為などにより、感染者に寄生しているトリコモナス原虫が尿道や前立腺、精のう、尿道に感染します。尿道だけの感染の場合、尿の排出によって洗い流されることがありますが、前立腺や精のうにトリコモナス原虫が寄生している場合には、尿道炎や前立腺炎を引き起こすことがあります。
トリコモナスの症状
トリコモナスに感染するとさまざまな症状が現れ、男性と女性とでは症状が異なります。女性はおりものの形状やにおいに異常が出るのが特徴ですが、男性は無症状なことが多く、感染を見逃しやすくなります。トリコモナスの症状について把握することで、早期発見につながります。
尿道からの分泌物
男性の症状のひとつに、尿道から無色や白色の分泌物(うみ)が出ることがあります。また、尿道にかゆみや違和感、熱感を生じることもあります。
軽い排尿痛
男性の場合、軽い排尿痛が生じることがあります。排尿痛がある場合、トリコモナス以外の性病(クラミジアや非クラミジア性非淋菌性尿道炎など)に感染している場合や他の病気の可能性もあるので、自己判断せず、速やかに医療機関を受診することが大切です。
悪臭の強いおりものの増加
女性の主な症状のひとつが、おりものの増加で、あわ状で悪臭が強いのが特徴です。女性の膣内には乳酸菌が常在しており、酸性に保つことで雑菌の侵入を防いでいます。トリコモナスに感染すると乳酸菌が減少し、膣内のバリア機能が低下します。雑菌が繁殖することで、おりものが臭くなるのです。
外陰部や腟の痛みや強いかゆみ
女性の場合、外陰部や膣に痛みや強いかゆみが出るのが特徴で、膣内が熱いと感じるほどの激しいかゆみが現れることもあります。ただし、トリコモナスに感染している女性の20~50%は無症状と言われていて、感染に気づかない人も少なくありません。卵管まで感染が進むと、不妊症や早産、流産のリスクが高まるので注意が必要です。
男性は気づかないことが多い
男性の場合、トリコモナスに感染しても多くの人が無症状のため、気づかないことが多いと言われています。また、症状があっても一過性のため、自覚症状のない人がほとんどです。パートナーがトリコモナスに感染した場合、症状がなくても必ず検査を受け、必要な場合はしっかり治療を受けましょう。
トリコモナスの検査方法と費用
トリコモナスの検査方法は男女で異なります。ここでは、男性と女性、それぞれの検査方法や費用について紹介しますので、受診の際の参考にしてください。
男性は尿検査
男性の場合、尿を採取し検査します。手軽な検査方法で、感染の有無を確認するのに役立ちますが、感染している場合でも検出されないことが多いようです。そのため、パートナーが感染している場合や感染の疑いがある場合は、検査ではなく、問診・診察後に治療を行うことがあります。
女性は膣分泌液検査
膣分泌液検査は、膣内の分泌物を綿棒で拭い、その中からトリコモナスの有無を検査する方法です。感染機会から24時間以上経過すると検査することが可能で、感染の早期発見に役立つ検査です。採取された膣内の分泌物はPCR法や顕微鏡検査などで分析されます。
PCR法
PCR法とは、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)の略で、トリコモナスの検査の場合、検体からトリコモナス原虫のDNAを抽出し、温度変化させ増幅させて検出します。高感度かつ短時間で結果が得られるため、すぐに正確な検査結果を知りたい方におすすめの検査方法です。
TMA法
TMA法とは、「Transcription Mediated Amplification」の略で、PCR法と同じく生物の遺伝情報をもつDNAを複製して増幅させる方法です。PCR法との違いは、検出対象が主に遺伝物質であり核酸のひとつであるRNA(RiboNucleic Acidの略でリボ核酸という物質)で、温度変化が不要な点です。温度変化をさせる必要がないため、PCR法より、より短時間で高感度な結果を得ることができます。
保険適用が可能
トリコモナス感染の治療が保険適用されるか否かは、各病院の治療方針などによって異なるので、受診予定の病院にあらかじめ確認しましょう。保険適応でない場合、一般的に、診察料・検査代は約3000~5000円、薬代は約3000円からと言われています。
トリコモナスの治療方法
トリコモナスの感染が確認された場合、治療に移ります。トリコモナスの治療方法は次の通りです。
10日間の服薬
トリコモナスの治療方法は、抗原虫剤の服用で、女性の場合は膣錠が用いられることもあります。約10日間薬を服用しますが、抗原虫剤の内服中は、悪心・嘔吐、腹痛、頭痛、動悸、紅潮といった症状が強まる恐れがあるため、アルコールの摂取は禁止です。その後、自覚症状がないことやトリコモナス原虫が残存していないか再検査を行い、トリコモナスが確認されなければ完治となります。女性の場合、次回月経後にもう一度検査をするとより安心です。
トリコモナスの予防方法
トリコモナスに感染しないためには予防することが大切です。ここで紹介する予防方法はトリコモナス以外の性病の予防にもつながりますので、しっかり知識を身に付けましょう。
コンドームの着用
コンドームを使用することで、膣内や尿道にトリコモナス原虫が入り込む可能性を低くすることができます。ただし、トリコモナスに感染している場合、コンドームを使用したとしてもトリコモナス原虫の侵入を完全に防ぐことはできないため、性行為は避けるべきです。また、不特定多数との性行為やトリコモナスが繁殖しやすい生理中の性行為はやめましょう。
タオルの共有をしない
家族やパートナーがトリコモナスに感染している場合、タオルを共有すると感染することがあります。日頃から家族やパートナー間でのタオルの共有はせず、個別のタオルを用意して拭くようにしましょう。
入浴を一緒に行わない
トリコモナス原虫は、水の中でも数時間生存できるので、感染者と一緒にお風呂に入ると感染することがあります。感染者は最後に入浴するか、感染者のあとに入る際はしっかり掃除し、お湯を入れ替えるとよいでしょう。
まとめ
トリコモナスの感染経路や症状、検査方法、治療方法、予防方法について詳しく紹介しました。トリコモナスは性行為が主な感染経路であり、男性は無症状や自覚症状が少ない傾向にあります。大切なパートナーや家族を守るためにも、トリコモナスについての正しい知識を身に付け、しっかり予防することが重要です。
トリコモナスは残念ながら自然治癒しない性感染症で、治療には薬の服用が必要となります。もし、気になる症状が少しでもあったり、自身やパートナーが感染したりした場合は、一緒に医療機関を受診し、検査をしましょう。早期発見と適切な対応がトリコモナスの感染拡大を防ぎ、健康を守ります。