淋病の潜伏期間はどのくらい? 疑いのある症状や検査方法も解説
「女性の淋(りん)病は自覚症状がない場合が多いと聞くけど、これってもしかしたら?」 と思っている方もいるのではないでしょうか。「早く検査した方がいいかも」……と思いつつも、「感染症には潜伏期間があるっていうけど潜伏期間ってそもそもどういうものなの?」など、
いろいろと思い悩んでしまう人には、ぜひ病気のメカニズムを知ってほしいと思います。この記事の淋病に関する正しい情報から病気を理解し、その不安を和らげてください。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
淋病とは
淋病は主に性交渉や性的行為から淋菌に感染したことで起きる性感染症で、とても感染しやすい病気とわれています。しかし、淋菌は粘膜から離れれば数時間で感染性は失われ、日光や乾燥、温度変化、消毒剤で死滅してしまうのです。このような性質から性行為以外での感染はほとんどありません。
男性が感染すると主に尿道炎を発症し、女性では子宮頸(けい)管炎を起こします。また、感染するのは性器だけとは限らず、咽頭に感染すれば咽頭淋病を、さらに肛門や結膜にも発症します。
ほとんどの淋病では症状がなかったり、症状があっても風邪に似ていたりして、感染に気づかないケースが多くあります。しかし淋病は自然には治癒しません。軽症だからといって放置しておくことは危険で、男女とも病状が進行すると不妊のリスクも発生します。
淋病の原因・感染経路
淋病は自然発生することはありません。淋菌に感染した粘膜と直接接触することにより感染します。つまり、人から人へと感染していくため、感染経路として考えられているのは、性行為、産道感染、自家感染(淋菌がついた手で目をこするなど)の3つとされています。なお、淋菌は温度変化や日光、乾燥に弱いことから、お風呂やトイレ、ドアノブを触るなどの日常生活で感染することはごくまれ稀です。
性行為がもっとも多くの淋病の感染経路であることを認識しましょう。また、不特定多数の間での性行為や海外での遊びのあとは特に注意が必要といわれています。
淋病の症状
淋菌感染症にかかると、男性は淋菌性尿道炎、女性は淋菌性子宮頸管炎を多く発症します。また、男女ともに発症するのは咽頭淋病という病気ですが、そのほかにも発症する場所により病気が異なります。
次に特に男性・女性の性器感染の症状についてそれぞれ詳しく説明します。
男性の症状
男性の場合は、男性器から感染すると、尿道に炎症を起こす淋病性尿道炎を発症します。症状ははっきりしていて、尿道炎による激しい排尿痛が特徴です。初期症状は以下の症状が多いといわれていますが、個人差があることも覚えておきましょう。
そのまま治療せずに病気が進行すると、前立腺炎や精巣上体炎となり、前立腺や陰嚢(のう)の腫れ、うずくような痛み、全身の発熱などの辛い症状が出たり、と無精子症を発症して不妊になったりすることもあります。
女性の症状
女性器に感染すると、子宮頸管(子宮の入り口)に炎症を起こします。男性に比べて女性の症状は軽く、無症状の場合もありますが、下記の症状が出た場合は淋病を疑ってみましょう。デリケートゾーンに起こる変化については、日ごろから注意をはらっておくと、異常に気づきやすく判断基準としてとらえることができます。
さらに、治療せずに症状が進むと子宮内膜炎、卵管炎から骨盤内炎症性疾患を発症し、その後遺症として不妊症となることも覚えておきましょう。
淋病の潜伏期間について
淋病は淋菌による性感染症です。症状がないからといって安易に考えてはいけません。それは潜伏期間中であっても、パートナーに感染してしまうからです。では淋菌の潜伏期間はどのくらいなのでしょうか?
潜伏期間の定義
病原体(淋菌)に感染してから、最初の症状が出るまでの期間を潜伏期間といいます。淋病は性感染症のなかでも潜伏期間が比較的短いといわれていますが、1年以上経ってから症状が出る場合もあるようです。
このように、性感染症の潜伏期間は人によって期間が異なります。性病の細菌自体の性質や感染者の体質、健康状態の違いからも変わるので、潜伏期間はあくまでも目安であることを把握しておきましょう。
この項では具体的な淋病の潜伏期間について説明します。
淋病の潜伏期間
淋菌の増殖スピードは比較的速く、発症するまでにはさほど時間はかかりません。性器や喉、直腸での潜伏期間は2日~7日、目では成人で12~48時間、新生児では生後2~5日とされています。ただ潜伏期間については個人差もあり、この期間中に症状がないからといって、感染していないというわけではありません。
尿道に感染した場合の50%は無症状であり、咽頭感染では約90%は症状が出でないといわれています。淋病の感染率は1回の行為で約30%とかなり高く、キスだけでも咽頭感染で発症するのです。潜伏期間中であっても、疑いがある場合は十分注意しましょう。
淋病の検査について
淋病かもしれない! と不安がよぎったら、まずは医療機関で検査を受けましょう。精密検査には、抗原検査と遺伝子検査があります。即日の簡易判定ができる検査から精密検査まで多くの検査方法がありますので、自分に合った検査方法を見つけることが肝心です。
検査可能時期、検査方法の種類と自宅でできる検査についても説明していきます。
検査可能時期
性行為から24時間以上経過すれば検査は可能です。また、無症状であっても検査可能な検査方法(TMA法やSDA法など)もありますので、不安を感じたらすぐに検査を検討することをおすすめします。
検査方法①:尿検査
排尿時の痛みや尿道のかゆみなどの症状がある場合は淋病が疑われ尿検査が行われます。トイレで尿を採取し、検査機関に送ってPCR検査で病原を特定します。クラミジア感染症の場合も同様な症状が見みれるためです。結果の判明までは2日~4日要しますが、即日検査では精度に違いがあるので、時間はかかってもPCR検査を受けた方がよいでしょう。
検査方法②:うがい検査
喉の痛みや腫れ、咳、発熱など風邪のような症状がある場合は、淋病咽頭炎が疑われるため、うがい液検査を行います。
コップに入った生理食塩水を口に含んで、ガラガラうがいをして検体を採取。検査機関にまわしてPCR検査を行います。検査結果は2~4日で判明します。
検査方法③:自宅でできる性病検査キット
感染の疑いがあっても、人目を気にするあまり、受診をためらってしまうこともあるでしょう。しかし放置していてもいいことはありません。
そのようなときのために、検査キットを使って検査をする方法があることをご存知でしょうか。秘匿性に優れた方法で、パッケージも配慮されていますので、誰にも知られず検査ができるのです。インターネット上から申し込むと検査キットが届き、自宅で検体を採取し郵送するだけです。結果もWEB上で確認できるので手軽に検査が受けられます。もし、陽性だった場合はオンライン診療も可能で、クリニックに行かなくとも治療可能な場合があることを知っておきましょう。
淋病の治療方法
淋病の治療では、3割負担の保険診療と全額負担の自費診療を選ぶことができます。金額の差があることはもちろんですが、それぞれメリット・デメリットがありますので説明します。
自由診療は全額自己負担なので費用はかかりますが、秘匿性を重視していますので、誰にも知られず診療を受けられる利点があります。また、淋病は無症状では保険が適用されない場合もあることを覚えておいてください。
症状がある場合は自費診療と保険診療のメリットとデメリットを考えた上で選択することをおすすめします。具体的な治療方法は内服薬、点滴、注射の3種類です。それぞれ長所、短所がありますので、その3つの説明をしていきます。
・内服治療
この治療のメリットはほかの治療法よりも安価である点と、時間がなくても自宅で手軽に治療できることがあげられます。主な治療薬はアジスロマイシン、オーグメンチンなどの抗生物質です。内服薬治療ができると診断された場合は、90%以上の有効性があるといわれているため安心して治療を受けられるでしょう。また、点滴や注射にアレルギー反応が見られる場合にも処方されるようです。
・注射治療
静脈注射と筋肉注射があり、抗生物質の成分により注射部位が違います。セフトリアキソンは静脈注射、スペクチノマイシンは筋肉注射に使われます。どちらも素早く体内に薬がいきわたるため、非常に有効性は高いのですが、病院で注射を受けるので、手軽に治療とはいきません。しかし、自由診療では秘匿的な治療を望んでいる方には有効な手段となるはずです。
・点滴
この治療のメリットは注射と同様、有効性が高い点にあります。セフトリアキソン(抗生物質)を静脈に入れる治療法です。しかし、病院に行かなければ点滴は受けられず、また自由診療では内服薬に比べて治療費がかかる点も注射と同じく考慮が必要です。
淋病の診療費用
自由診療か保険診療かでは費用は大きく異なります。自費診療で内服薬治療を受ける場合の費用はおよそ、7000円~9000円が相場ですが、保険診療では、1000円~2000円ですみます。また、点滴及び注射治療の場合は、自費診療が9000円~22000円であるのに対し、保険では2000円前後で受けられるといわれています。
自費、保険を両方行っているクリニックの場合は、よく比較して自身に合う方法を選ぶようにしましょう。
まとめ
潜伏期間はおおむね2~7日ですが、個人によって差があり、自覚症状がない状態で感染に気づかず治療が遅れると、どんどん病気は進行し、体のいろいろなところに感染が広がってしまうというのが淋病の怖いところです。
淋病には予防接種はなくありませんし、感染しても免疫ができるわけではないので、何度も感染します。まず、できる予防としては、性的接触時にはコンドームを必ず使用することです。また、複数の性的パートナーがいる場合には、感染の拡大を防ぐために定期的な検査が必要でしょう。
参考文献