ヘルメット治療とは?赤ちゃんの頭のかたちを矯正するヘルメット治療外来の選び方
ヘルメット治療は、赤ちゃんの頭蓋骨の形を整える治療法です。
今回の記事では、ヘルメット治療の概要や治療開始に適した時期、治療を行う医院の選び方や治療の流れなどについて詳しく解説します。
赤ちゃんの頭の形が気になる方、ヘルメット治療を検討している方はぜひ参考にしてください。
監修医師:
上野 龍(宮前平脳神経外科クリニック)
横浜市立大学市民総合医療センター 脳神経外科 非常勤医師
横浜市立大学病院 脳神経外科 非常勤医師
神奈川県立こども医療センター 脳神経外科 常勤医師
西新井病院 脳神経外科 常勤医師
東京都立多摩総合医療センター 脳神経外科 常勤医師
埼玉医科大学国際医療センター 脳卒中外科 助教
横浜市立大学 医学部 脳神経外科学 助教
横浜南共済病院 脳神経外科 医長
みらい在宅クリニック 常勤医師
目次 -INDEX-
赤ちゃんの頭のかたちを矯正するヘルメット治療とは?
乳児期にみられる頭蓋骨の変形を、頭蓋変形と呼びます。頭蓋変形は大きく、頭蓋骨縫合早期癒合症と位置的頭蓋変形症に分けられます。
頭蓋骨縫合早期癒合症は、本来であれば癒合せず脳の成長に合わせて広がるはずの頭蓋骨が、何らかの原因で早期に癒合することで起こります。
一方、位置的頭蓋変形症は出産時の産道通過や寝る向きの癖など、外からの圧力により頭蓋骨の一部が扁平化するものです。このうち、ヘルメット治療は位置的頭蓋変形症に適用される治療方法です。
治療の特徴
乳児期は、頭蓋骨がまだやわらかく、成長の過程で形が変わりやすい時期です。そのため、ベッドの環境や寝る方向の癖などにより、頭の形が不均等になることがあります。この歪みを、専用のヘルメットにより整える治療方法がヘルメット治療です。
ヘルメットは赤ちゃんの頭に合わせて製作され、押されて広がれなかった部分を保護して除圧することで、均等で丸みのある頭蓋骨の成長を促します。「長時間の装着が必要と聞いたけれど、赤ちゃんは嫌がらないだろうか」と不安な方もいるかもしれません。しかしヘルメットは軽量で通気性に優れているため、長時間装着しても赤ちゃんが嫌がることは少ないでしょう。
また、前述のとおりヘルメット治療は扁平化した部分を保護する治療法であり、出ているようにみえる部分を圧迫して矯正するわけではありません。そのため、赤ちゃんにとって痛みのない治療といわれています。
ただし、デメリットとして皮膚炎や皮膚の損傷など肌への影響が出ることがあったり、1日23時間装着しなければならない、重度のゆがみは自然に改善しづらいなどがあります。
治療開始時期
ヘルメット治療の開始に適した時期は、首がすわり始める生後3ヵ月から7ヵ月の間といわれています。この時期は頭蓋骨がやわらかく成長が早いため、治療効果が期待できます。
一方、生後8ヵ月以降になると頭蓋骨の成長速度が徐々に緩やかになるため、7ヵ月以前と比較すると治療効果が実感しにくくなることがあるでしょう。そのため、治療が可能な月齢になったら早期に治療を開始することが望ましいといえます。
「すぐ治療を始めたほうがよいか、それとも体位変換や円座枕で様子をみるべきだろうか」と悩んだら、まずはヘルメット治療を行っている医療機関に相談をおすすめします。医師に相談することで、赤ちゃんの成長や頭蓋骨の状態にあわせてアドバイスを受けられるでしょう。
治療期間
ヘルメット治療の完了までにかかる期間は、おおよそ3~6ヵ月です。ただし、赤ちゃんの頭蓋骨の状態や成長速度によって治療に必要な期間は異なります。治療期間中は定期的に医師の診察を受けて、治療の経過や頭蓋骨の状態を確認してください。
また、基本的には最初から治療完了まで使い続けられるようにヘルメットを製作しますが、経過によってはヘルメットの調整が必要になることもあります。
ヘルメット治療外来の選び方
ヘルメット治療を行う医療機関が徐々に増えるなかで、どの医療機関を選べばよいのかと迷っている方もいるかもしれません。
治療中も安心感をもって過ごすためには、治療にあたって十分な説明が行われているかどうか、治療器具や治療方法の選択肢があるかどうかの2点に注目してみましょう。
事前にしっかりと説明してくれるかどうか
赤ちゃんが受ける治療について、保護者の方はさまざまな不安や疑問を抱えている場合も少なくないのではないでしょうか。
また、ヘルメット治療は医療保険が適用されない自費診療であり、費用も高額になりがちです。事前にカウンセリングを受け、治療の流れや効果・費用、注意すべき点などについて十分に説明してくれる医療機関を選びましょう。
ヘルメットの種類や治療の選択肢が広いかどうか
治療に使用するヘルメットは、医療機関ごとにメーカーが異なる場合があります。医療機関のホームページや診察時の説明で、事前にどのようなヘルメットを使用するか確認しておきましょう。
ヘルメットは赤ちゃんが装着するため、下記のようなものが望ましいとされています。
- 軽量なもの
- 通気性に優れたもの
- 付け外しが容易なもの
- 洗いやすいもの
また、治療を始めると最終的にはお風呂のとき以外はほぼヘルメットの装着が必要で、ヘルメットは治療器具であると同時に服や靴と同じ日常生活の一部となります。そのため、機能性だけでなくデザインの選択肢があるとさらによいでしょう。
なお、姿勢による位置的頭蓋変形症では、姿勢や睡眠環境の改善も大切です。環境的なアドバイスも含めた総合的な対応をしてくれる医療機関を選ぶことで、より効果的で安心感のある治療が期待できるでしょう。
ヘルメット治療の流れ
では、実際にヘルメット治療を行う際の具体的な流れについてみていきましょう。
医療機関により流れに多少の違いはありますが、まず検査を行ってヘルメット治療が適応と判断されたら、ヘルメットを製作して治療を始めるという流れは多くの医療機関に共通しています。
治療適応の判断
頭蓋変形がみられる場合、まずは変形の原因を確認するためにX線検査やMRI検査を行います。
これらの検査には変形の度合いを確認するだけでなく、水頭症や頭蓋骨縫合早期癒合症など、病的な原因で変形が起こっている可能性を除外する意味合いがあります。検査の結果をもとに、医師がヘルメット治療の適応有無を判断します。
3Dスキャナーで測定
ヘルメット治療をする方針となった場合、ヘルメットを製作するために赤ちゃんの頭の形を正確に測定します。この測定には、3Dスキャナーを使用する医療機関が多いでしょう。
3Dスキャナーは検査による放射線被ばくがなく、赤ちゃんの頭部を非接触で撮影して細かな凹凸や歪みまで高精度でデータ化する検査です。スキャンは短時間で終わり、痛みや圧迫感もない検査なので、赤ちゃんの負担はほとんどありません。
オーダーメイドのヘルメットを製作する
3Dスキャナーのデータはメーカーに送られ、赤ちゃんの頭に合わせたオーダーメイドのヘルメット製作が始まります。
頭部のスキャンをしてから手元にヘルメットが届くまでの期間は地域やメーカーにより差がありますが、おおよそ1~2週間かかることが多いでしょう。
複数のデザインを用意しているメーカーの場合は、好きな色や柄を選べます。
治療開始
ヘルメットが手元に届いたら、いよいよ治療が開始されます。ヘルメットを引き渡す際に、装着方法や治療中の注意点など詳細な説明があるため、不明な点があればしっかりと質問しておくことをおすすめします。
赤ちゃんがヘルメットに慣れるまで少し時間がかかる場合もありますが、適切に治療を進めるためには1日23時間程度ヘルメットの装着が必要です。
しっかりと装着できれば効果も実感しやすいので、無理のない範囲で少しずつ慣らして、お風呂のとき以外はつけていられるようにしましょう。
定期的な診察
治療期間中は、おおよそ1ヵ月ごとに定期的な診察が必要です。診察では、赤ちゃんの頭の成長やヘルメットのフィット感を確認し、必要に応じて調整が行われます。
また、治療が順調に進んでいるかどうかを確認するために再度3Dスキャンを行うこともあります。定期的なチェックにより、専門的な視点から治療の進捗確認ができ、トラブルがあっても早めに対応できるでしょう。
赤ちゃんの成長とともに頭の形が整ってきたら、徐々にヘルメットの装着時間を減らしていき、治療は終了となります。
ヘルメット治療の費用
ヘルメット治療は医療保険がきかない自費診療であり、ヘルメットの作製費用はメーカによって異なります。
その他にかかる費用としては、治療開始時の検査費用や初診・再診料などがあります。1回の診療費は通常数千円程です。
しかし、治療期間により診療を受ける回数は異なるため、これに伴い費用の総額も変化します。一例として、Berry社のbaby bandは診察代を含め300,000~400,000円(税込)です。
ヘルメット治療のことなら宮前平脳神経外科クリニックにご相談を
ここまで、赤ちゃんの頭蓋骨の形を整えるヘルメット治療の概要や治療の流れ、医院の選び方などについて解説してきました。
最後に、ヘルメット治療を検討している方へ、神奈川県川崎市にある宮前平脳神経外科クリニックを紹介します。
日本脳神経外科学会や日本小児神経外科学会の専門の医師による治療
ヘルメット治療の対象となる位置的頭蓋変形症は、外圧が原因で病的なものではありません。
しかし、治療前の検査で水頭症や頭蓋骨縫合早期癒合症といった病的な原因がないかを確認する必要があります。こうした病気を見逃さないためには、脳神経外科を専門とする医師が在籍する病院での治療をおすすめします。
宮前平脳神経外科クリニックは、日本脳神経外科学会脳神経外科専門医・指導医の資格を有する医師のほか、小児脳神経外科を専門とする医師も在籍しているクリニックです。
そのため、ヘルメット治療はもちろん別の病気がみつかった場合にも、診察や必要に応じた紹介など適切な対応につながりやすいでしょう。
赤ちゃんの頭のかたち外来による幅広い治療
宮前平脳神経外科クリニックでは、2024年から赤ちゃんの頭のかたち外来を開設しています。乳児の頭蓋変形を専門とする外来なので「小児科でなく脳神経外科でも診察してもらえるだろうか」と迷っている保護者の方も相談しやすいのではないでしょうか。
赤ちゃんの頭のかたち外来では、ヘルメット治療を行うだけでなく、ヘルメット治療が患者さんに合った治療法かどうかの判断も行っています。
さらに、ヘルメット治療以外の対処法のアドバイスや治療中の皮膚トラブルへの対処、別の病気がみつかった場合の大規模病院との連携など、幅広い対応が可能です。
充実した設備を備え「脳のかかりつけ医」を目指す
頭のかたちは外見から気付ける異常ですが、原因や頭蓋骨・脳の状況は検査をしてみなければわかりません。
宮前平脳神経外科クリニックでは、X線検査だけでなくMRIの検査装置も備えているため必要な検査を院内ですぐに行えます。ヘルメット治療の場合も、初診時にこうした検査を行い状態を評価するのが基本的な流れです。
ヘルメット治療を希望する方はもちろん、病的な原因がないかと心配な方も一度相談してみてはいかがでしょうか。
宮前平脳神経外科クリニックの基本情報
アクセス・住所・診療時間・費用・治療期間・治療回数
東急田園都市線 宮前平駅より徒歩1分
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
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9:00~12:30 | ● | ● | ● | ▲ | ● | ▲ | - | - |
14:30~18:30 | ● | ● | ● | - | ● | - | - | - |
▲:9:00~13:30
【費用(税込)】ヘルメット製作料金:390,000円
【治療期間】3〜6ヶ月
【治療回数】通院頻度1~1.5ヶ月毎、都度改善度合いを医師がチェックして調整