高血圧の基準とは?血圧を下げる目標値や、高血圧の改善法など徹底解説!
高血圧の基準はどこからで、そもそも血圧の目標値はどれくらいなのでしょうか?本記事では以下の点を中心に紹介します。
- ・高血圧について
- ・血圧の基準値について
- ・高血圧の原因
さらに高血圧の治療法や予防法についても解説します。高血圧の基準について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
小鷹 悠二(おだかクリニック)
目次 -INDEX-
高血圧について
高血圧とはどのような基準で定められるのでしょうか?以下に高血圧について解説します。
高血圧とは
血圧は、日常の動作(体を動かす、寒さを感じるなど)で一時的に上昇することがあります。
しかし、これらの短期的な血圧の上昇は高血圧とは認識されません。
高血圧とは、体が安静状態にあるときでも血圧が持続的に正常範囲を超えている状態を指します。
高血圧が続くと、血管には常時ストレスがかかり、その結果、血管の内壁が損傷し、血管が硬くなってしまうことがあります。
これにより、動脈硬化という状態が引き起こされ、これがさまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。
高血圧の基準
高血圧とは、診察室で測った場合の血圧の基準として、最高血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、または最低血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上の場合を高血圧と定義します。
一方、家庭で測った場合の高血圧の基準は、最高血圧が135mmHg以上、または最低血圧が85mmHg以上です。
血圧を下げる目標値
高血圧の治療は、将来的に起こり得る脳心血管疾患(脳卒中や心筋梗塞など)や腎機能の低下を防ぐ目的で行われます。
一般的な治療の目指す血圧の目標は、75歳未満では診察時の血圧を130/80mmHg以下に、75歳以上では140/90mmHg以下に保つことです。
しかし、これらの目標は個々の病状により、より厳格に設定する必要がある場合や、逆に慎重に設定する場合もあります。
また、血圧を下げることによる利益が副作用などの不利益(有害事象とも呼ばれます)を上回るような状況を避けることも重要です。
血圧について
血圧の平均値や正しい血圧の測り方について解説します。
血圧の平均値
血圧を下げる薬を飲んでいない場合
20〜29歳:男性は最高血圧115.9、最低血圧68.1、女性は最高血圧105.7、最低血圧63.8
30〜39歳:男性は最高血圧117.2、最低血圧73.8、女性は最高血圧108.0、最低血圧66.4
40〜49歳:男性は最高血圧125.4、最低血圧80.6、女性は最高血圧113.7、最低血圧70.9
50〜59歳:男性は最高血圧129.7、最低血圧81.0、女性は最高血圧121.8、最低血圧74.5
60〜69歳:男性は最高血圧134.1、最低血圧78.3、女性は最高血圧130.6、最低血圧76.7
70歳以上:男性は最高血圧133.9、最低血圧74.5、女性は最高血圧133.1、最低血圧73.9
血圧を下げる薬を飲んでいる場合
20〜29歳:男性は最高血圧115.3、最低血圧67.7、女性は最高血圧105.7、最低血圧63.8
30〜39歳:男性は最高血圧117.3、最低血圧73.7、女性は最高血圧107.9、最低血圧66.3
40〜49歳:男性は最高血圧125.8、最低血圧81.3、女性は最高血圧114.3、最低血圧71.2
50〜59歳:男性は最高血圧131.7、最低血圧82.0、女性は最高血圧123.7、最低血圧75.4
60〜69歳:男性は最高血圧135.8、最低血圧78.5、女性は最高血圧131.0、最低血圧76.7
70歳以上:男性は最高血圧135.8、最低血圧73.1、女性は最高血圧136.1、最低血圧73.0
血圧の正しい測り方
測定前は1〜2分間安静にする: 運動や活動の後は血圧が一時的に上昇するため、測定前には1〜2分間安静にすることが重要です。
測定時には、腕に巻くカフが心臓と同じ高さになるように座り、リラックスすることが推奨されています。
また、快適な温度と静かな環境で測定することが望ましいです。
毎回同じ腕で測定する: 通常、利き手と反対の腕で血圧を測定します。
しかし、左右の腕で血圧に差がある人は、高い値が出た腕で測定することが推奨されています。
また、シャツなどで腕を締め付けすぎないように注意することが重要です。
朝晩毎回同じ時間に測定する: 朝は起床後1時間以内、食事や薬を飲む前に測定します。
夜は就寝前に測定します。
また、仕事中やストレスを感じているとき、体調が悪いときも血圧を確認することが望ましいとされています。
測定前に喫煙したり、アルコールやカフェインを摂取したりすることは避けるべきです。
記録を付ける: 血圧を測定したら、必ず記録を付けます。
長期間にわたり継続して測定し、毎日の測定値は全て記録に残すことが推奨されています。
高血圧の原因
高血圧の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
遺伝的な原因
高血圧の発症には、遺伝が一定の役割を果たしています。
研究報告によると、高血圧を持つ両親から生まれた子供の約半数、一方の親が高血圧患者である場合でも約30%が高血圧になる可能性が示されています。
しかしこれは、特定の「高血圧遺伝子」が存在するわけではなく、身体的な特性が受け継がれるという理解がより適切です。
また、親子間での食事や生活習慣の類似性も影響を与える可能性が考えられます。
環境的な原因
塩分過剰
身体は塩分濃度を保つ機能を有しています。
それ故に、過度な塩分摂取は体内の水分量を増やし、結果として血液量が増加し、血圧が高まります。
野菜や果物不足
野菜や果物に含まれるカリウムは、体内のナトリウム(塩分成分)の排出を助けます。
しかし、野菜や果物の摂取が不足すると、ナトリウムの排出が十分行われず、血液中の塩分濃度が高まり、血液量も増え、血圧が上昇します。
肥満
肥満体の脂肪細胞は、血圧上昇や動脂硬化を引き起こす物質を分泌します。
また、肥満はインスリンの作用を阻害し、交感神経を活性化して血管収縮を招きます。
特に内臓脂肪型肥満は要警戒であり、肥満は体重比例で血液量を増やし、心臓に負担をかけます。
飲酒過度
常習的な大量のアルコール摂取は血圧を上昇させ、中性脂肪の増加や動脂硬化を加速させます。
酒は気持ちをリラックスさせますが、過度な摂取は禁物です。適度な摂取が大切です。
精神的ストレス
精神的ストレスは交感神経を刺激し、心拍数を増やし、血液量を増加させます。
それにより血管収縮も引き起こします。
運動不足
適度な運動不足は血行を悪化させ、結果として血圧を高めます。
一日の大半を座った状態で過ごすと、高血圧リスクが増えます。
喫煙
タバコの成分であるニコチンは交感神経を活性化し、血圧を上げるホルモンの分泌を促進し、血管を収縮させます。
また、血中の活性酸素(強力な酸化能力を持つ酸素)が増加し、動脂硬化を進行させます。
高血圧の治療法
高血圧はどのように治療するのでしょうか?以下に3種類の治療方法について解説します。
食事療法
高血圧の管理には、適切な食事療法が重要な役割を果たします。
以下に、その主要なポイントを説明します。
塩分の制限: 高血圧の人は、1日の塩分摂取量を6g以下に抑えることが推奨されています。
これは、約一茶さじの食塩に相当します。
食事の際には、加工食品や外食の頻度を減らし、自炊を心掛けることで塩分摂取量を抑えることが可能です。
バランスの良い食事: 高血圧の予防と管理には、バランスの良い食事が必要です。
特に、野菜や果物、全粒穀物、低脂肪の乳製品、魚、鶏肉などの良質なタンパク質を摂取することが重要です。
アルコールの摂取量を抑える: アルコールは血圧を上げる可能性があるため、適度な摂取が必要です。
男性は1日に2杯、女性と65歳以上の人は1日に1杯を目安にしましょう。
体重の管理: 適切な体重を維持することは、血圧を正常範囲に保つために重要です。
適切な運動と食事で、健康的な体重を維持しましょう。
カリウムを含む食品の摂取: カリウムは血圧を下げる効果が期待できるとされています。
バナナ、オレンジ、ヨーグルト、牛乳などの食品にはカリウムが豊富に含まれています。
これらの食事療法は、医師や栄養士と相談しながら、個々のライフスタイルや健康状態に合わせて調整することが重要です。
運動療法
高血圧の運動療法についての基本的なガイドラインを提供します。
ただし、これらのアドバイスは一般的なものであり、個々の健康状態や体力により適切な運動量や種類は異なるため、医師や専門家と相談することを強く推奨します。
有酸素運動: 歩行、ジョギング、自転車、水泳などの有酸素運動は、心臓と血管の健康を維持し、血圧を下げるのに役立ちます。
週に5日、各回30分以上の運動を目指しましょう。
筋力トレーニング: 筋肉を強化することで、全体的な健康状態を改善し、血圧を下げることが可能です。
週に2〜3日の筋力トレーニングをし、全身の筋肉をバランス良く鍛えることが重要です。
ストレッチング: 筋肉の柔軟性を保つことは、全体的な健康と血圧管理に役立ちます。
運動前後のストレッチングは、筋肉の緊張を和らげ、怪我の予防にもなります。
適度な強度: 運動は必ずしも激しいものである必要はないです。
適度な強度の運動でも、血圧を下げる効果に期待できます。
運動中に息切れしない程度の強度で行うことが推奨されます。
継続性: 運動療法は、継続的に行うことで発揮されます。
毎日の生活に運動を取り入れ、習慣化することが重要です。
薬物療法
高血圧の治療には、生活習慣の改善と薬物療法の2つのアプローチがあります。
薬物療法は、特に血圧が高い場合や、生活習慣の改善だけでは血圧をコントロールできない場合に用いられます。
薬物療法には、さまざまな種類の薬があります。
それぞれの薬は、血圧を下げるために体内で異なる作用が働きます。
以下に、主な薬物の種類とその作用について説明します。
カルシウム拮抗薬(CCB):カルシウム拮抗薬は、血管の筋肉に作用して血管を広げ、血圧を下げます。
また、心臓の働きを抑えることで、心臓が必要とする酸素量を減らします。
ACE阻害薬とARB: ACE阻害薬とARBは、血圧を上げるホルモンの働きを抑えることで、血圧を下げます。
これにより、血管が広がり、血液の流れが改善します。
利尿薬: 利尿薬は、体から余分な水分とナトリウム(塩)を排出することで、血圧を下げます。
β遮断薬: β遮断薬は、心臓の働きを抑えて心拍数を減らし、血圧を下げます。
高血圧の予防法
食生活の改善
塩分の摂取量を減らす:一日の塩分摂取量は男性で8g以下、女性で7g以下が目安とされています。
外食や加工食品には隠れた塩分が多いので注意が必要です。
アルコールの摂取を控える:アルコールは血圧を上げる可能性があります。
特にビールや日本酒などのアルコール度数が低い飲み物は、つい多く飲んでしまうため注意が必要です。
野菜や果物をたくさん食べる:野菜や果物に含まれるカリウムは、体内のナトリウムを排出し血圧を下げる効果が期待できます。
脂質を適量にする:脂質の摂取過多は肥満の原因となり、高血圧のリスクを高めます。
特に動物性脂肪は控え、植物性脂肪を適量摂取するようにしましょう。
食事のリズムを整える:食事は一日三食、規則正しく摂ることが大切です。
食事を抜くことや、一度に大量に食べると血糖値が急上昇し、インスリンの分泌が増えます。これが血圧上昇につながる可能性があります。
適度な運動
高血圧の対策として運動をすることは効果が期待できます。
特に、有酸素運動は血圧を下げることが認められています。
有酸素運動とは、酸素を使って糖分や脂肪を燃料とし、筋肉への負荷が比較的軽い運動のことを指します。
具体的な例としては、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、エアロビクスダンス、水泳などがあります。
適切な運動量は、ややハードだと感じる程度の有酸素運動を毎日30分以上継続することが理想です。
また、一度に30分を確保するのが難しい場合、1日に合計して10分以上の運動を40分以上行うことが推奨されています。
ただし、急に運動を始めることは体に大きな負担となる可能性があるため、初めは掃除や洗車をする、子どもと遊ぶ、自転車や徒歩で買い物に行くといった日常生活の中での軽い運動から始めることがおすすめです。
適正体重の維持
肥満と高血圧: 肥満と高血圧には密接な関係があります。
特に内臓脂肪型肥満と呼ばれる状態は、高血圧や糖尿病、脂質異常症などを引き起こしやすいとされています。内臓脂肪型肥満は主に若年から中年の男性に見られ、女性よりも頻度が高いことがわかっています。
このタイプの肥満は、腸の周りに脂肪が過剰に蓄積する状態であり、メタボリックシンドロームの診断基準の一つとされています。
内臓脂肪は血管や内臓に悪影響を及ぼし、炎症を引き起こす物質の放出やホルモンのバランスの乱れをもたらすことがあります。
これらの生理的変化が高血圧の発症や進行に関与する可能性があります。
BMIと肥満: BMI(体格指数)は肥満の状態を確認する上で有用な指標です。
BMIは体重(kg)を身長(m)の二乗で割ることで求められます。
日本肥満学会では、BMIが25以上の状態を肥満と定義しています。
また、BMIがのときの体重は標準体重と呼ばれ、病気になりにくい状態とされています。
肥満の解消: 肥満を解消するために特定の食品を抜き、極端に食事量を減らす減量方法は避けるべきです。
健康的な減量のためには、バランスのとれた食事が重要です。
食事は栄養素をバランスよく摂取することを意識し、様々な食物を取り入れましょう。
野菜や果物、穀物、健康的な脂肪、良質なタンパク質をバランスよく摂ることが大切です。
また、有酸素運動を取り入れることで体内の脂質を燃料として利用しやすくなります。
ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどの有酸素運動はダイエットに適しており、心肺機能の向上や脂肪燃焼が期待できます。
無理のない減量を心掛け、専門家のアドバイスやサポートを受けながら、自分に合った方法で肥満の解消に取り組みましょう。
生活習慣の改善
高血圧の予防や管理には、生活習慣の改善が重要です。
以下に、その具体的な方法をまとめます。
禁煙: 喫煙は、血管を収縮させて血圧を上昇させるだけでなく、血液の流れを悪化させて動脈硬化を進行させる可能性があります。
特に高血圧に悩む方にとっては、禁煙は強く推奨されます。
飲酒量の見直し: 飲酒量の見直しは、健康管理や高血圧予防に重要です。
適切な飲酒量は1日に純アルコール20g以下とされています。
純アルコールはお酒に含まれるアルコールの量を指し、アルコール度数とお酒の量によって計算されます。
例えば、純アルコール20g相当の飲酒量はお酒の種類やアルコール度数によって異なります。
飲酒量の見直しは、まず自身の飲酒状況を把握することから始めましょう。自分が摂取するお酒の量とアルコール度数を確認し、それが20g以下に収まっているかをチェックします。もし摂取量が多い場合は、飲酒を減らす戦略を考えることが重要です。
純アルコール20g以下のお酒と量
ビール(5%):大瓶(633ml)1本
日本酒(15%):180ml 2合
ウィスキー(40%):60ml 2杯
ワイン(12%):240ml 2杯
また、毎日お酒を飲むのは避け、週に1日以上の休肝日を設けることが推奨されています。
これらの生活習慣の改善を通じて、血圧を正常に保つことが可能です。健康的な生活習慣を維持し、高血圧のリスクを低減させましょう。
まとめ
ここまで高血圧の基準についてお伝えしてきました。
ここまでの要点をまとめると以下の通りです。
- ・高血圧とは体が安静状態にあるときでも血圧が持続的に正常範囲を超えている状態
- ・血圧の基準値は最高血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、または最低血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上の場合を高血圧と定義します
- ・高血圧の原因遺伝的な原因と食生活の乱れやストレスなどが考えられる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献