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もの忘れ外来でできることって?認知症の早期発見と対処のために

 公開日:2024/02/26
認知症を予防するための生活戦略!適度な運動とバランスの良い食事をとろう!

近年、ニュースや雑誌などで「認知症」を目にすることが増えてきました。
そもそも認知症について、どんな病気か詳しく知っていますか?

認知症は高齢になるほど発症リスクが上がり、今のところ根本的な治療方法がありません。
そのため、日頃から予防しておくことが非常に重要だと言われています。
あなたはどんな認知症の予防策を取っていますか? そもそも予防するためには何をすれば良いのでしょうか? この記事では、そんな認知症の予防について考えてみましょう。

勝木 将人

監修医師
勝木 将人(医師)

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2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

認知症を予防するための基礎知識

認知症を予防するための基礎知識

予防の話をするためにも、まずは認知症そのものについて基本的な知識を知っておきましょう。
認知症という言葉は日常的によく目にする機会がありますが、具体的にはどんな病気なのでしょうか。

認知症とは何か

認知症とは、正常な脳が何らかの原因で、記憶力や判断力など認知機能が低下していき、日常生活に影響が出る状態をいいます。
一昔前は、痴呆(ちほう)やぼけといった呼ばれ方をしていました。
認知症の原因となる代表的な疾患は、記憶や思考能力が時間をかけて障害される「アルツハイマー病」や、脳梗塞や脳出血などがきっかけで発症する「脳血管性認知症」などがあります。
このうち、アルツハイマー病は認知症全体の67%ほどで、日本国内に79万人ほどの患者がいると言われています。
特に「軽度認知障害(MCI)」は、認知症の前段階にあたり、物忘れの症状はみられるが、日常生活に影響のない状態をいいます。
症状が日常生活に影響が出るレベルまで悪化すると、認知症となるので早めの予防や対策が大切です。

認知症の主な症状

それでは、認知症になるとどのような症状が発症するのでしょうか。
認知症の症状は主に2つあります。

・認知機能の低下

認知症の症状で代表的な症状は「記憶力の低下」です。
記憶力の低下は歳をとるにつれて誰でも起きる症状です。
例えば「夕飯何を食べたか」を忘れるのは、加齢によって起きる物忘れですが、「夕飯を食べたこと自体を忘れる」は認知症による物忘れの可能性が高いと言えます。
症状が進むと、今日の日時や今自分がいる場所がどこなのかわからなくなり、さらに言葉がわからなくなるといった症状も出てきます。

・行動や心理症状

認知症の症状に伴って、行動・心理症状が発生することもあります。
「怒りっぽくなる」「妄想がある」「徘徊(はいかい)する」「興奮して暴言や暴力がみられる」といった症状のことを指します。
ただし、これらはあくまで認知機能の低下によって起こる二次的な症状です。
周囲の人の不適切なケアや、ストレスや不安などの心理状態が原因で起きると言われています。
ご家族など周囲の方々は患者さんご本人が安心できるように、混乱しないような対応をとるように心がけることが大切です。

また、認知症として間違えやすい病気として「うつ病」や「せん妄」があります。
高齢になるにつれて体力の衰えや大切な人との別れなどが原因でうつ状態になりやすいと言われています。
特にせん妄は薬の飲み過ぎによって現れることもあります。
「普段と違うな……」と思ったら周りの人から、かかりつけ医や薬剤師さんに相談してみましょう。

認知症の予防が重要な理由

認知症は加齢が大きな危険因子ですが、発症してしまうと根本的な治療方法がありません。
なので未然に予防することがとても大切になってきます。
定期的な運動習慣やバランスの良い食生活が、認知症の予防につながると言われています。また、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予防と改善を行ったり、社会活動に参加することによっても発症を遅らせることができると言われています。
今までの運動習慣や食事習慣を思い出しながら、認知症予防に取り組んでみましょう。

認知症を予防するために適度な運動を

認知症を予防するために適度な運動を

定期的な運動や、買い物や洗濯物を干すような日常生活の身体活動が認知症の発症に予防効果があると言われています。

なぜ運動で認知症が予防できるか

運動は体力維持や筋力アップのためにというイメージが強いかもしれませんが、実は脳や認知機能にも良い効果があります。
運動によって脳の神経細胞が活性化して若返ることが分かっています。
認知症予防の運動でよく挙げられるのは「有酸素運動」です。
有酸素運動をすることで心拍数が上がり、体内に取り入れられた多くの酸素が全身に送りこまれます。
脳の血流が増加して、必要な酸素や栄養が脳に送られます。

また、運動は脳への効果以外にも、筋力アップや関節機能の改善、転倒予防など様々な効果があります。
運動習慣のある人は、「1回30分以上の運動を週2回以上行い、それを1年以上続けている人」をいいます。
ただし、マラソンやウェイトトレーニングのような激しい運動を続けるのは、ほとんどの人にとって難しいでしょう。
簡単なことを長く続けていくことが、認知症予防に必要な運動習慣になります。

認知症予防におすすめの運動

具体的にはいったいどのような運動習慣を心がければ良いでしょうか。
おすすめの運動方法を挙げてみました。

・ウォーキング

有酸素運動の中で、最も手軽に行えるのがウォーキングでしょう。
早歩きをしたり、長時間歩いたりする必要はありません。
無理せずゆっくり毎日30分〜60分を目安に歩き続けることが大切です。
ウォーキングは身体を動かす以外にも、日光を浴びることで生活リズムが整ったり、睡眠の質が高まったりするので、生活習慣全体を整える役割もあります。
無理せず自分のペースでウォーキングを続けるのは、認知症予防としてとてもおすすめです。

・ヨガ

ヨガはストレス解消や心身の健康だけでなく、脳や心臓の研究でも、有酸素運動と同じ効果があると注目されています。
ヨガは全身を動かすため、柔軟性が上がり、筋力や持久力、バランス能力の低下を予防できます。
またヨガの瞑想(めいそう)は脳を休ませる効果があるため、認知機能の維持など心身に良い効果が期待できます。
安全にできるヨガも、決して無理せずに「心地よい」と感じる範囲で行いましょう。

・水泳

高齢になると筋力が衰えてしまうため、転倒による骨折のような危険が伴います。
怪我のリスクを考えてしまうと、どうしても運動習慣を持つことは難しいと思われるかもしれません。
そんな時は、プールでの運動はどうでしょうか。
泳ぐのももちろん効果的ですが、泳げなくても水中を歩くだけでも十分効果があります。
水の中では全身に水圧を受けているため、少ない運動量でも高い効果が得られます。
また、水泳は上下左右に3次元的な動きをするので、空間認識をつかさどる脳の機能に働きかけることができ、認知症予防やバランス感覚の向上など様々なメリットがあります。
ただし、水泳はウォーキングなどと比べて転倒のリスクは低いですが、溺れるなど水難事故にあう可能性はあります。
プール脇にインストラクターや監視員がいる、安全に泳げる場所でやってみましょう。

バランスの良い食事で認知症を予防

バランスの良い食事で認知症を予防

認知症を予防するために脳の健康維持は大切です。
食事も認知症予防に欠かせないポイントです。
バランスの良い食生活を心がけながら、認知症予防について考えていきましょう。

なぜバランスの良い食事が認知症予防に効果的か

偏った食生活は脳の健康だけでなく、からだの様々な病気に関連してきます。
炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルといった5大栄養素をバランスよく摂取することが大切です。
特に認知症予防に効果があるのは、魚に多く含まれるDHAやEPAなどのオメガ3系脂肪酸、ビタミンや葉酸、ミネラルをしっかり取り入れることであると言われています。
また栄養の摂取という側面だけでなく、バランスの良い食事を自分で考えて、自分で調理すること自体も認知症予防にとてもおすすめです。
調理の時は立っているので、身体機能の維持になりますし、調理の手順を考えることで脳が活性化します。
食生活から脳の健康を支えてみることも大事かもしれませんね。

また、バランスの良い食事を意識すると生活習慣病の予防にも繋がります。
意識するポイントは、主食、副菜、主菜を上手に取り入れて、朝昼夜の3食を食べることです。
塩分を摂りすぎや、カロリーの摂りすぎに気をつけるようにしましょう。
高血圧や肥満の予防、さらには糖尿病の予防にも繋がるので、バランスの良い食事はとても大切です。

認知症の予防におすすめの食事

認知症予防のためにおすすめの食事や材料をまとめてみました。

・オメガ3脂肪酸を含む食事

オメガ3系脂肪酸は生活習慣病や認知症予防に効果があるといわれています。
その理由は、血管の脂肪蓄積を改善させる作用があるといわれています。
オメガ3系脂肪酸は、体内で合成することはできないので食事から適切に摂取することが大切です。
特に下記の食品に多く含まれています。

・サバやイワシ、サンマなどの青魚
・アマニ油やえごま油
・イクラやタラコなどの魚卵

オメガ3系脂肪酸は熱や光などで酸化しやすいため、加熱せず生のまま食べる方が効果的だと言われています。

・抗酸化物質を含む食事

呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部が活性化して活性酸素になると、脳や血管へのダメージを与えて老化を加速させてしまいます。
この活性酸素を抑える役割を持つのが抗酸化物質です。
野菜や果物をはじめとした様々な食材が、抗酸化作用が期待できると言われています。
中でも、下記の栄養素が含まれる食材例を参考にバランスよく取り入れてみましょう。

・ビタミンA
ニンジンやモロヘイヤ、カボチャなど緑黄色野菜
・ビタミンC
赤ピーマンやブロッコリー、ゆずやレモンなどの野菜や果物
・ビタミンE
卵やアーモンド、オリーブオイル、大豆、うなぎなど
・ポリフェノール
ブルーベリーに含まれるアントシアニン、大豆に含まれる大豆サポニン、緑茶に含まれるカテキンなど
・カロテノイド
緑黄色野菜、マンゴー、パパイヤ、あんずなどの果物、わかめやひじきなどの海藻類、エビやカニなどの甲殻類

・ビタミンB群を含む食事

ビタミンB群とは、ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンの8種類をいいます。
このうちビタミンB6とビタミンB12の欠乏は認知症に繋がると言われています。
ビタミンB6は、マグロのような赤身の魚やヒレ肉やささみなど脂が少ない肉類に多く含まれています。
ビタミンB12は肉や魚に多く含まれていますが、特にしじみやあさりなどの貝類に多く含まれています。
ビタミンB群は野菜だけでなく卵や肉、魚などさまざまな食材からバランスよく摂取するのが良いでしょう。

認知症予防のために生活習慣を改善

認知症予防のために生活習慣を改善

これまで認知症予防のための習慣として「運動」と「食事」を紹介してきましたが、認知症予防には生活を取り巻く環境自体も大きく関わっています。
脳の健康を保つために、運動や食事以外の生活習慣も見直していきましょう。

認知症予防に役立つ生活習慣

認知症の予防に役立つ具体的な生活習慣として、以下のような習慣が挙げられます。

・規則正しい生活リズムを心がける

認知症が悪化する原因として、日中の活動時間が少なくなり昼夜逆転するケースがあります。
日中の活動量が減る原因には、からだの不調や自発的にからだを動かす意識の低下があります。
日中にしっかり動き、疲れて夜寝ることが生活リズムを整えるうえで重要です。
できるだけ日の光が浴びられるようにカーテンを開けて過ごしたり、散歩や運動をしに出かけるように心がけましょう。

・ストレスがたまらないように管理する

ストレスは認知症にどのような影響があるのでしょうか。
ストレスがかかると血流が悪くなり、脳に必要な酸素や血液、栄養が十分に届かなくなります。
その結果、脳の萎縮を早めてしまい認知症のリスクが高まります。
ストレスを溜め込まないために、外で散歩したり、話を他人に聞いてもらうだけでも効果が見込めます。

・十分な睡眠をとる

歳を重ねるにつれて睡眠も変化します。
健康な高齢者でも睡眠は浅くなり、寝ている途中で目が覚めたり、早朝に目が覚めたりします。
高齢者に多い睡眠障害には様々な原因があります。
退職や死別、独居などの心理的なストレスや、昼夜逆転するようなメリハリのない生活、狭心症や心筋梗塞による夜間の息苦しさ、頻尿などあげるとキリがありません。
睡眠の妨げとなる原因をひとつでも少なくするために、下記のポイントを見直してみましょう。

・温度や照明の寝室の環境を整える
・午前中に日光を浴びて体内時計を整える
・寝る時間、起きる時間を規則正しく整える
・同じ時間に食事を食べるようにする
・なるべく昼寝は避けるようにする

社会活動に参加すると認知症が予防できる?

社会活動に参加すると認知症が予防できる?

仕事をしていれば、自然に社会活動に参加できます。
しかし、定年後に自宅にいる時間が増えると友人や知人が減ってしまい、社会活動参加の機会やチャンスを逃してしまいます。
社会活動に参加することは新しいことを学べて、楽しみを見つけるきっかけにもなります。
また、社会活動を通じて様々な人とコミュニケーションを取ることで脳が活性化し、認知症の予防に繋がると言われています。
ここでは社会活動の参加と認知症予防の関係性を考えていきましょう。

なぜ社会活動への参加で認知症が予防できるか

社会活動参加の目的は「他人と交流する」ことです。
他人とコミュニケーションを取ることで神経細胞が活性化し、喜怒哀楽の感情も豊かになるため認知症予防にとても有効です。
家族との会話はもちろん、ご近所付き合いや自治会との交流を持ち続けることがとても大切です。

また、人や社会との繋がりは認知症予防にとても大切です。
人との良好なコミュニケーションはストレスの軽減に繋がり、活動量が増えるほど生活習慣病になるリスクが低くなります。
ただし、むやみに繋がりの数を増やせば良いというわけでもありません。
場合によっては人間関係が大きなストレスになることもあるため、自分が楽しめるものや環境を見つけることでストレスを軽減していきましょう。

認知症予防におすすめの社会活動

それでは、これから認知症予防におすすめの社会活動を紹介していきます。

まずはボランティア活動です。
高齢者がボランティア活動を通じて積極的に社会参加することで介護予防や認知症予防に繋がります。
自治体によっては参加したボランティア活動に応じてポイントが付き、金券と交換できる制度があります。
ボランティア活動の例としては、介護施設での利用者の補助や地域の子育て支援、海や公園の清掃活動があります。
ボランティアをすることで生きがいを感じられ、健康づくりに役立ちます。メリットがたくさんあるのでぜひボランティア活動を検討してみてください。

また、趣味を通じて地域のサークルで活動するのも良いかもしれません。
一般的な趣味は頭や体を使うことが多いため認知症予防に効果的です。
趣味の例としては、囲碁や将棋、麻雀(まーじゃん)、カラオケ、英会話のような頭を使う趣味と、テニスや卓球、旅行など体を動かす趣味もあります。
お住まいの地域に自分の趣味に合ったサークルがあれば、勇気を出して参加することを検討してみても良いでしょう。

もし若い頃から勉強を続けていることがあれば、継続学習に取り組んでみてはどうでしょうか。
新たに資格取得を目指して学習を始めるのも素敵なことです。
学習内容の例としては、健康や医療についての学習や資産管理、語学やパソコン技術などがおすすめです。
特にスマートフォン操作は、病院の受診の予約や役所の窓口予約などで使う機会が増えてきています。
年齢を積み重ねても学習機会を持ち続けることで認知症予防になります。

まとめ

まとめ

認知症は早期発見し、適切に治療をすれば、症状が軽減できたり、悪化をある程度防ぐことができます。患者さんご本人の意思を尊重しながら準備や対応、医療や介護サービスの利用が行えることも早期発見の大きなメリットです。
しかし、実際は認知症と診断された時点で症状が進行していることも多いようです。
認知症の症状を改善する治療薬の開発も進んでいるので、もしかしたら近い将来、認知症の症状が改善したり完治させることもできるようになるかもしれません。
それまでは、今まで通り元気に楽しく日常生活を過ごすためにも、普段から認知症予防に取り組むことが大切だと言えるでしょう。

この記事の監修医師