淋病とクラミジアの違いは?症状や検査方法、治療法まで詳しく解説
この症状は淋病? それともクラミジア? 症状がないから自分には関係ないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、どちらに感染しても無症状である場合があるため、症状の有無だけで判断するのは危険です。
おもに感染者との性行為によって感染する性感染症として広く知られている淋病とクラミジアですが、この二つの感染症にはどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの症状や検査方法、治療法などを詳しくご説明します。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
淋病とクラミジアの違い:基本情報
おもに性交渉によって感染するとされている淋病とクラミジアですが、根本的にはどのような違いがあるのでしょうか。個人で見分けることは可能なのでしょうか。淋病とクラミジアのそれぞれの特徴と違いについてご説明します。
淋病とは
淋病とは性感染症の一つであり、「淋菌」という細菌に感染することを原因として発症します。一度の性交渉によって高確率(30~50%)で感染すると言われており、感染したまま放置すると重症化する可能性があります。
男性の場合はおもに尿道や肛門、女性の場合はおもに膣が感染部位であり、潜伏期間は2日〜一週間ほどです。
クラミジアとは
クラミジアはクラミジア・トラコマチスという細菌によって起こる日本で最も感染者の多い性感染症の一つです。
一度の性交渉によって高確率(30~50%)で感染すると言われており、精液や腟分泌液など、感染者の粘膜内にあるクラミジアが粘膜に接触することで感染します。最近ではオーラルセックスが一般的になっているので、性器だけでなく咽頭(のど)への感染も広がっています。
淋病とクラミジアの違い
淋病とクラミジアにはさまざまな症状があります。無症状から強い症状の出る人まで個人差があり、併発する人も多いことから、症状によって違いを見分けることは困難だとされています。
大きな違いとしては、感染の原因となる細菌の種類とその治療法です。淋病の原因となる細菌は淋菌で、クラミジアの原因となる細菌はクラミジア・トラコマチスです。どちらに感染しているかによって、治療法も異なります。淋病は点滴、または注射によって治療し、クラミジアは抗生剤を内服して治療します。併発している場合は両方の治療が必要となりますので、個人で判断することなく、しっかりと検査・治療をすることが大切です。
淋病とクラミジアの違い:感染経路と症状
淋病とクラミジアでは、感染者数に違いがあるのでしょうか。また、感染経路と症状にわかりやすい違いはあるのでしょうか。淋病とクラミジアそれぞれの感染経路を症状とともにご説明します。
淋病とクラミジアそれぞれの感染者数
厚生労働省が発表している淋病患者数は約1万人で、そのおよそ8割が男性、男女ともに20代、30代の感染が多くなっています。また、クラミジア患者数は約3万人で、患者数に男女差はなく、こちらも20代、30代の感染が多くなっています。(令和3年度)
淋病患者の多くは男性だとされていますが、女性が感染しにくいというわけではありません。女性は自覚症状がない場合も多く、検査数自体が少ないことも原因だと考えられているのです。誰でも感染する可能性はあるため、注意が必要です。
淋病の感染経路と症状
淋病は人から人へ感染する感染症であり、感染者との性行為(セックス、オーラルセックス、アナルセックス)などが感染経路だとされています。淋病の症状は性別によって異なり、男性の場合、尿道に違和感や痒み、激しい尿導痛(尿道炎)、性器から黄白色の膿が出るなどの症状があり、これらが進行すると、精巣上体炎を発症し、男性不妊に繋がる可能性も出てきます。
症状がはっきりしないことがあることと、症状が落ち着いても感染が続き、完治していないこともあるため、しっかりと検査をすることが重要です。女性の場合、初期症状はない場合があり、感染を放置し進行してしまった場合、子宮頸管炎や卵管炎、腹膜炎、肝周囲炎などを発症する可能性があり、不妊の原因に繋がったり、妊娠中の方であれば流産や早産などの原因に繋がったりすることがあります。
具体的な症状としては、おりものの違和感(色やにおいなど)が挙げられますが、自覚症状がないことも多いため、注意が必要です。また、男女ともに、肛門やのどに感染することもあります。のどに感染した場合ほとんどの方が無症状だと言われているため、定期的に検査をすることが大切です。
クラミジアの感染経路と症状
クラミジアも淋病と同じく、感染者との性行為(セックス、オーラルセックス、アナルセックス)などが感染経路だとされています。クラミジアの症状も性別によって異なり、男性の場合、無色透明もしくは乳白色のさらさらとした分泌物が尿道から出たり、排尿時に軽い痛みがあったりします。
このような症状があればわかりやすいのですが、無症状の場合もあるため注意が必要です。女性の場合、おりものが増えたり不正出血、下腹部痛、性交痛などがあります。女性の場合も無症状なことが多く、感染したことに気付かず放置し、長期間放置してしまうと子宮頸管炎や骨盤内炎症疾患を発症、その後不妊に繋がるため危険です。
男女ともにのどにも感染する危険性があり、のどに感染した場合は、ほとんどの方が無症状とされているため、症状の有無だけでは自己判断できないと言えるでしょう。
淋病とクラミジアの違い:検査方法
淋病とクラミジアの違いとして、検査方法にも何か違いがあるのでしょうか。淋病とクラミジアそれぞれの検査方法をご説明するとともに、自宅でできる検査キットについてもご説明します。
淋病の検査方法
淋病の検査では、医師による問診や視診によって淋病の疑いがある場合、尿検査を実施します。
のどの淋菌の疑いがある場合には、のどの検体を採取する、またはうがい液を検体として、検査をします。淋菌のほかの性感染症を併発している可能性がある場合には、追加で検査が必要です。
クラミジアの検査方法
クラミジアの検査方法は、性別、部位によって異なります。男性の場合は尿検査をします。女性の場合は膣の分泌物を綿棒で採取して検査しますが、その際、生理中は検査ができないため注意しましょう。
咽頭(のど)のクラミジアの検査としては、のどの検体を採取する、またはうがい液を検体として、検査をします。肛門クラミジアの検査は、肛門の分泌物を採取して検査します。
自宅でできる検査キット
検査をしたくても、人に知られたくない、恥ずかしいと感じる方も多いようです。必ず病院にて検査を受けなくても、自宅でできる検査キットも販売されています。
また、淋病とクラミジア検査を一緒にできる検査キットや、部位ごとの検査キットもあるため、状況に応じて必要な検査キットを選ぶことができます。検査をして陽性だった場合は速やかに病院を受診しましょう。
淋病とクラミジアの違い:治療方法
淋病とクラミジアの治療方法は異なります。では、淋病とクラミジアは、それぞれどのような治療をするのでしょうか。気になる治療法とともに、治療中の注意事項についてもご説明します。
淋病の治療方法
淋病の治療はおもに点滴、または注射にて行われます。適切な治療を行えば、完治する病気です。抗体ができるような病気ではないため、何度も感染する可能性があります。治療が終わっても、予防に努めるようにしましょう。
クラミジアの治療方法
クラミジアの治療は、薬(抗生剤)の内服で行われます。一般的には一回の内服で、クラミジアの90%近くは消滅するとされています。
もしも一回の内服で効果が見られなかったとしても、ほとんどの場合は第二、第三で選ばれた薬で完治すると言われているため、処方された薬はしっかりと飲み、完治するまで通うことを心掛けましょう。
治療中の注意事項
淋病は、処方された抗生剤を服用したとしても、耐性菌(抗生剤の効果が出ない菌)の場合もあります。症状が和らいだからと言って途中で病院に通うことをやめずに、完治したかどうかを必ず病院で診てもらうようにしましょう。
クラミジアは、市販の薬で治る病気ではありません。症状がある場合や、検査キットで陽性反応が出た場合は必ず病院を受診し、処方された薬をきちんと飲みきりましょう。
淋病とクラミジアの予防
淋病とクラミジアに感染しないためには、どのような予防法があるのでしょうか。性交渉時の予防策や定期的な検査の重要性、パートナーとのコミュニケーションについてご案内します。
性交渉時の予防策
淋病はおもに性行為によって感染します。目やのど、腟、尿道、肛門などの粘膜を介して感染するのです。予防策としては、性行為時にコンドームを正しく使用することが挙げられます。直接的に粘膜に触れないことで、感染のリスクを大幅に減らすことに繋がるのです。
また、感染するリスクを考えると、不特定多数との性行為は避けたほうがよいと言えます。
定期的な検査の重要性
淋病、クラミジアともに無症状の場合もあり、自分でも気付かないうちに感染していることがあります。治療を受けずに放置するとさまざまな病気を引き起こすだけでなく、感染を広げてしまう恐れもあるのです。
症状がない場合でも、定期的に検査を受けるようにしましょう。
パートナーとのコミュニケーション
淋病、クラミジアに感染したことが判明した場合、パートナーも感染している可能性があります。言いづらいところはあるかもしれませんが、速やかにパートナーに伝えてパートナーにも検査を受けてもらうようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか。淋病とクラミジアは症状が似ており、無症状の方や併発している方も少なくないことから、個人での判断は困難です。もしも淋病、クラミジアに感染してしまっても、病院を受診ししっかりと治療を受ければ治すことができます。放置してほかの病気を併発しないため、また、大切なパートナーへの感染を防ぐためにも、症状の有無に関係なく、定期的に検査を受けるようにしましょう。
参考文献