【症状解説】クラミジアかも?症状を確認して早めに治療しましょう
クラミジアは、男性、女性別にどのような症状があらわれるのか、どのように治療すればよいのか、不安を抱く方も多いのではないでしょうか。もしかすると、自覚症状がないままクラミジアになっているかもしれません。
本記事では、クラミジアの症状について、以下の点を中心にご紹介します。
・クラミジアとは
・クラミジアの男女別の症状
・クラミジアの治療法
クラミジアの症状について理解するためにも、ご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
クラミジアとは?
クラミジアは、性感染症(STD)の一つで、日本国内での性感染症のなかでも多い傾向にあります。
クラミジアは、クラミジア・トラコマチスという病原体によって引き起こされ、性行為を通じて粘膜に感染します。
感染部位は、男性の場合は尿道や肛門、女性の場合は膣、また男女共通として喉への感染もあります。
クラミジアの特徴は、症状がほとんどないため、感染に気づきにくい点です。
男性の場合、「クラミジア性尿道炎」を発症することがあり、排尿時の違和感や痛み、尿道の入り口から透明もしくは粘着性のある膿や分泌物の出現が見られます。
感染を放置すると炎症が広がり、「精巣上体炎」になることもあります。
女性では、初めは症状がほとんどないことが多いようですが、進行すると子宮頸管炎や、子宮内膜症、卵管炎、骨盤腹膜炎などの病気を引き起こします。
これらは不妊に繋がることもあります。
クラミジアの予防には、コンドームの使用や感染が疑われる相手との性的交渉を避けることが効果的とされています。
若年層における性の知識不足や、不特定多数の性行為により拡大していることが懸念されています。
また、妊婦がクラミジアに感染している場合は、出産時に産道で子どもに感染し、クラミジア性結膜炎などを引き起こすこともあります。
クラミジアは、男女間でお互いに感染させるいわゆる「ピンポン感染」があるため、パートナーとの同時治療が重要です。
症状が出ないことも少なくないため、気づかないうちにパートナーに感染させたり、不妊症になってしまったりすることもあります。
そのため、性行為をする際にはコンドームの正しい使用が推奨されます。
男性がクラミジアになった場合の症状
男性がクラミジアになると、どのような症状があらわれるのでしょうか。
以下で詳しく解説します。
初期症状
クラミジア感染症は性感染症の一つで、男性ではクラミジア尿道炎として発症します。
感染後約1~3週間で症状があらわれることが多いようですが、男性の場合症状はないか、軽いことが特徴です。
症状がある場合、サラッとした尿道分泌物(うみ)や、排尿時の軽い痛みがみられます。
この尿道分泌物は透明から乳白色で、粘り気が少ないことが特徴です。
初期のクラミジア感染では、尿道炎が起こり、排尿時に刺激症状があらわれることがあります。
これには、尿を出すときに痛みを感じる、しみる、排尿時灼熱感(熱い感じ)があるなどの症状が含まれます。
膿の量は、淋病に比べると少ないか、ほとんどないこともあります。
症状があらわれるまでの期間
男性がクラミジアに感染した場合、症状があらわれるまでの潜伏期間は、約1〜2週間とされています。
この期間は、感染してから症状が発現するまでの時間を指し、個人差があるため一概にはいえませんが、多くの場合、この期間内に症状があらわれます。
クラミジアの潜伏期間中、多くの男性は自覚症状がないか、軽い症状しか感じないといわれているため、感染に気づかずに他の方に感染を広げてしまうリスクがあります。また、感染しても症状が出ないことが多いため、性感染症の中でも特に注意が必要な病気です。
潜伏期間中にクラミジアに感染していると気が付くのは難しいですが、この時期は体内でクラミジアトラコマチス菌が増殖を続けていて、感染力は約30~50%といわれています。
女性がクラミジアになった場合の症状
女性がクラミジアになると、どのような症状があらわれるのでしょうか。
以下で詳しく解説します。
初期症状
女性がクラミジアになった場合、初期症状は軽微であるか、まったく自覚症状がないことが多いとされ、約60~80%以上の女性が無症状であるといわれています。
しかし、症状があらわれる場合、以下のような初期症状が見られることがあります。
- 異常な膣分泌物:クラミジア感染により、膣からの分泌物が通常と異なる場合があります。これは、感染が膣内の環境を変化させるためです
- 排尿時の痛み:尿道が感染すると、排尿時に痛みを感じることがあります
- 性交後や生理以外での膣からの出血:クラミジア感染は子宮頚管に影響を及ぼすことがあり、性交後や生理以外の時期に膣出血が起こることがあります
- 膣炎の症状:性器のかゆみ、汚れたようなオリモノ、性器の異臭など、膣炎に似た症状があらわれることがあります。これは、クラミジア感染によって膣内の抵抗力が低下し、ほかの病原菌が侵入しやすくなるためです
- 性交痛:膣粘膜に炎症が起こると、性行為時に痛みを感じることがあります
症状があらわれるまでの期間
女性がクラミジアに感染した場合、症状があらわれるまでの潜伏期間は、約1〜3週間とされています。この潜伏期間は、性感染症の中でも長い部類に入ります。
例えば、淋病の潜伏期間は2〜7日程度であり、これと比較するとクラミジアの潜伏期間は長めです。
潜伏期間の長さは、クラミジアの生物学的特性が影響を与えています。
クラミジアは、宿主の細胞を利用し、エネルギーや栄養を得る寄生性の細菌です。
この細菌には2つの形態があり、一つは感染を引き起こす「基本小体」と、もう一つは増殖する「網様体」です。
基本小体は、宿主の細胞に付着し、細胞内に侵入して網様体へと成長します。
網様体は、宿主細胞から栄養を摂取し、多数の基本小体を生成します。
これらの基本小体が宿主細胞から放出されると、新たな細胞への感染が始まります。
この増殖プロセスは複雑で時間がかかるため、クラミジアはほかの細菌に比べて増殖速度が遅い傾向にあり、それが潜伏期間の長さにつながっています。
また、クラミジアは免疫システムを回避する能力も持っており、これが潜伏期間をさらに延長させる要因となっています。
クラミジアを放置してしまうと起こる症状
クラミジアを治療せず放置してしまった場合、どのような症状があらわれるのでしょうか。
以下で、男性と女性に分けてそれぞれ解説します。
男性
クラミジアを放置すると、男性の場合、尿道炎から進行して精巣上体炎を引き起こすことがあります。
中年以下の男性がかかる精巣上体炎は、クラミジアが原因の場合が多いとされています。
この症状には、発熱や精巣の腫れが含まれますが、通常は軽度であるといわれています。
クラミジアが喉に感染した場合、咽頭炎を引き起こします。
感染から1~3週間で、喉の痛み、腫れ、咳、発熱など風邪に似た症状があらわれます。
また、クラミジアに感染している方の精液や体液が目に入ると、結膜炎を起こすことがあります。めやに、まぶたの腫れ、充血などが主な症状です。
医師の許可が出るまではコンタクトレンズの使用を避けるべきです。
さらに、クラミジアに感染している方とのアナルセックスや、感染した膣分泌液が肛門部に触れることにより、直腸に感染することがあります。
排便時の出血、肛門痛、粘血便(血液が混じったベタベタした便)などが特徴的な症状です。
女性
クラミジアを放置すると、女性の場合、膣から子宮や卵管へと感染が拡大し、さまざまな症状を引き起こす可能性があります。
初期症状としては、感染から1~3週間後に「子宮頸管炎」を発症することがあります。
子宮頸管炎を放置すると、炎症は子宮や卵管、腹膜へと拡がります。
子宮では子宮内膜炎が起こり、おりものの異常や不正出血、下腹部痛、発熱などの症状があらわれることがあります。
さらに症状が進行すると、卵管炎が発生し、下腹部痛が強くなることがあります。
また、膣から細菌やクラミジアなどが入り込んで「卵管炎」になる可能性もあります。卵管炎は、病原体が子宮経管から卵管に感染して炎症が起こる病気です。卵管に癒着が起きて詰まり、不妊症の原因になりかねません。
卵管は子宮と卵巣をつなぐ管であり、受精の場所でもあるため、詰まると受精ができなくなります。
また、炎症が腹膜に及ぶと腹膜炎を引き起こし、発熱や下腹部痛、吐き気、嘔吐などの症状があらわれることがあります。
これらの症状は、不妊症や異所性妊娠の原因になることがあります。
クラミジアの治療方法
クラミジアは、主に抗生物質を用いて治療されます。
治療には、主に抗生物質が使用されます。
抗生物質は、クラミジア・トラコマチスという細菌の増殖を抑制し、感染を排除する効果があるとされています。
治療の具体的な方法としては、以下のようなプロセスがあります。
- 検査
- 抗生物質の処方
- 治療後のフォローアップ
治療前には、尿検査や分泌物の検査をし、クラミジア感染の有無を確認します。
クラミジアの検査には主に「抗体検査」と「抗原検査」の2種類があります。
抗体検査は過去に感染したかどうかを調べるためのもので、血液を用いて行われます。
一方、抗原検査は現在の感染状況を把握するために用いられ、性器クラミジアの場合は女性は腟からの分泌物、男性は尿が検体として使われます。咽頭クラミジアの検査では、うがい液が使用されます。
感染の程度や患者さんの状態に応じて、抗生物質が処方されます。
通常、1週間程度の服用で済む場合が多いようですが、場合によっては2~4週間程度の服用が必要なこともあります。
抗生物質を服用した後、病状がおさまったかどうかを確認するための検査をします。治療後、4週間以上経過してからの検査が推奨されています。これは、治療直後に検査すると死んだ菌が検出されてしまい、誤った陽性反応が出る可能性があるためです。
クラミジアは、適切な抗生物質の服用により、簡単に治療できるといわれています。
しかし、自覚症状がないことが多いため、定期的な検査や予防策の徹底が重要です。
また、治療を受けた後も、症状の有無を確認するためのフォローアップ検査が必要です。
クラミジアは自然治癒するのか
クラミジアは、自然治癒することはなく、治療には抗菌薬の内服が必要です。
抗菌薬は、クラミジア・トラコマチス細菌の増殖を抑制し、感染を排除する効果があるとされています。
治療期間は7日間程度で、重症の場合は点滴治療をすることもあります。
また治療効果の判定は、治療開始から約2週間後に核酸増幅法などを用いて実施します。
また、クラミジア感染症は性感染症であるため、パートナーの治療も必要です。
パートナーが無症状であっても、無症候感染の可能性があるため、検査と治療が推奨されます。
まとめ
ここまで、クラミジアの症状についてお伝えしてきました。
クラミジアの症状の要点をまとめると、以下の通りです。
・クラミジアとは、クラミジア・トラコマチスという病原体によって引き起こされ、性行為を通じて粘膜に感染する性感染症である
・クラミジアに感染すると、男性では排尿時の違和感や痛みや尿道からの膿や分泌物の出現、女性では異常な膣分泌物や排尿時の痛みなどの症状があらわれる
・クラミジアは、主に抗生物質を用いて治療される
これらの情報が、少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。