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糖尿病の血液検査 | 血液検査の項目や診断基準をご紹介

 公開日:2024/02/01
糖尿病の血液検査 | 血液検査の項目や診断基準をご紹介

糖尿病が疑われる場合に行われる検査の一つに血液検査があります。しかし血液検査ではどのような項目が検査され、どのように判断されるのかわからないという方は多いのではないでしょうか。

本記事では糖尿病の血液検査の項目・判断基準・検査費用などを解説します。糖尿病の合併症も紹介するため、糖尿病についてお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

久高 将太

監修医師
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)

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琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。

糖尿病の血液検査

糖尿病の血液検査
糖尿病は血液中の血糖値の濃度が高くなりすぎる病気であり、さまざまな合併症を引き起こす恐れがあります。血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度のことであり、通常ブドウ糖は血液により全身に運ばれ、インスリンの働きによって各細胞に分配されます。しかし、糖尿病では何らかの理由でインスリンが正常に機能せず、ブドウ糖が血液中から細胞に入りにくくなります。
血糖値が高い状態が続くと、血管が傷ついて動脈硬化を引き起こし、脳卒中や心筋梗塞などの命に関わる疾患を引き起こしかねません。
糖尿病の血液検査では、血液中の血糖値をはじめ、ブドウ糖と関連する数値を測定して診断します。
糖尿病は初期症状がほとんどなく、日常生活のなかで気づくのが難しい病気です。そのため、健康診断での血液検査で糖尿病の疑いがあることが判明するケースが多くあります。

糖尿病の血液検査の項目

糖尿病の血液検査の項目
糖尿病は血糖値のほかに、ブドウ糖やインスリンの働きに関連しているものの数値を測定して診断されるものです。
糖尿病の血液検査の項目を解説します。

空腹時血糖値

空腹時血糖値は空腹状態で測定した際の血糖値のことです。健康な場合、食後には一時的にブドウ糖の濃度が高くなりますが、インスリンが正常に働いていればすぐに元に戻ります。しかし、インスリンが十分に機能していないと、濃度が高い状態が続いてしまいます。
空腹状態でも血糖値が高くなるため、食事を取っていない状態で測定した空腹時血糖値が高いと、糖尿病の疑いがあるのです。
空腹時血糖値の正常値は食前であれば約70〜100mg/dlですが、126mg/dl以上であれば糖尿病の疑いがあります。

随時血糖値

「随時血糖値」は食事の時間とは関係なく測定した血糖値のことです。先述した空腹時血糖値は、食後8時間以上絶食した状態で測定されます。
一方、随時血糖値は食後の経過時間に関係なく測定され、随時血糖値が200mg/dl以上であれば、糖尿病の疑いがあると診断されます。
また、140〜199mg/dlの場合も糖尿病の疑いが否定できません。そのため、場合によっては75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を実施し、再度血糖値を測定する場合もあります。

75g経口ブドウ糖負荷試験

75g経口ブドウ糖負荷試験
75g経口ブドウ糖負荷試験はグルコース負荷試験ともいわれ、空腹時に75gのブドウ糖を含む溶液を飲んだ後に採血を行う検査です。
服用前と服用後にそれぞれ採血を行い、血糖値の数値を測定します。
測定前は10〜14時間の絶食を行う必要があり、空腹時血糖値測定の際とは絶食の時間が異なる点に注意しましょう。また、検査中に摂取できるのは水のみであり、喫煙も禁止されています。

ヘモグロビンA1c

ヘモグロビンA1cは糖化ヘモグロビンの一種であり、過去1〜2ヶ月分のおおよその血糖値を評価するために重要な指標です。
血液中に酸素を運搬するヘモグロビンは、同じく血液中を流れている血糖(グルコース)と非酵素的に結合します。血液中に糖が多ければ、その分結合したヘモグロビンA1cの割合も高くなるため、糖尿病や高血糖の可能性があります。
なお、健康診断や糖尿病の血液検査では「HbA1c」と表記されるのが一般的です。

グリコアルブミン

グリコアルブミンは、過去2週間のおおよその血糖値を評価するものです。血液中を流れているアルブミンは、タンパク質の一種であり、ヘモグロビンと同じく糖と結合する性質を持っています。
ヘモグロビンの生成から壊れるまでは約120日ですが、アルブミンは生成から約20日で壊れてしまうものです。そのため、ヘモグロビンA1cよりも短い期間での血糖値を計測できます。
基準値は11〜16%であり、これよりも高い場合は血糖値が高い可能性があります。

1,5AG

1,5AGはグルコースに似た構造を持った糖アルコールのことです。食物に含まれているため誰しも食べ物を通して摂取しており、尿として排泄しています。
通常は血液を通して腎臓に運ばれ、摂取した1,5AGのほとんどが血液中に再吸収されますが、血糖値が高い状態では吸収が阻害されてしまいます。それによって1,5AGの血中濃度の数値が低下することで、血糖値の変動を測定できるのです。
1,5AGの正常値は14.0μg/dl以上とされており、これを下回ると血糖値が高い可能性が考えられます。

糖尿病の診断基準

糖尿病の診断基準
糖尿病は主に以下の診断基準で判断されます。

  • 空腹時血糖値:126mg/dl以上
  • 随時血糖値:200mg/dl以上
  • HbA1c:6.5%以上

上記にすべて当てはまる場合は、糖尿病として診断されます。また血糖値のみ糖尿病型の数値だった場合でも、糖尿病の典型的な症状が見られることや糖尿病の三大合併症の一つである網膜症を確実に発症していれば糖尿病と診断されます。
糖尿病の症状や合併症が見られない場合や、HbA1cのみ基準値を超えている状態であれば再検査の実施が必要です。再検査は1ヶ月以内に実施され、HbA1cのみが糖尿病型だった場合は血糖検査を必須で行います。
再検査でも診断がつかない場合は、3〜6ヶ月以内に再度血糖値とHbA1cの検査を行います。

糖尿病の検査にかかる費用はどのくらい?

糖尿病の検査にかかる費用はどのくらい?
糖尿病の検査にかかる費用は病院によって異なりますが、保険適用されるため自己負担額は3割です。たとえば外来で受診した場合、検査と外来受診の総額が6,600円だった場合、患者側の負担額は1,980円です。
糖尿病の疑いがあり検査入院を行う場合は、入院期間や検査項目によって変動し、自己負担額は約5万〜10万円以上になるケースもあります。
このほかにも、糖尿病以外の持病があったり、女性であれば妊娠中だったりする場合にも費用は変動するため、検査費用は受診する病院に確認しましょう。

糖尿病の合併症にはどのようなものがある?

糖尿病の合併症にはどのようなものがある?
糖尿病は合併症を引き起こす可能性が高く、また合併症の種類も多い病気です。続いて、代表的な糖尿病の合併症を紹介します。

網膜症

網膜症
糖尿病の三大合併症の一つが糖尿病網膜症です。網膜は目から得ている視覚情報を脳に送る役割を担っている組織であり、視力に関係しています。網膜が正常に機能するためには、網膜に広がっている毛細血管に十分な栄養や酸素が運ばれていなければなりません。
しかし、糖尿病になり血液中の血糖コントロールが悪い状態が続くと、網膜の血管に十分な栄養や酸素が行き届かず網膜そのものの機能も損なります。
初期症状はほとんどなく、視力の低下などの自覚症状があらわれるようになった段階では、すでに重症になっているケースも少なくありません。
症状が進行すると網膜出血網膜剥離を引き起こし、最悪の場合は失明に至ってしまいます。網膜症を防ぐためには、年に1度は網膜症の検査を受けましょう。

腎症

腎症は糖尿病腎症とも呼ばれ、網膜症と同じく三大合併症の一つです。糖尿病によって高血糖な状態が続くことで、腎臓の機能が低下する病気であり、一度低下した腎機能を元に戻すことはできません。そのため、早期発見・早期治療が必要とされる病気です。
腎臓は尿をつくる働きのほか、体の水分量や血圧の調整、血液を生産するためのホルモンの分泌などさまざまな役割を担っています。腎機能が低下すればこれらの機能は十分にはたらきません。それによってさまざまな症状や合併症が引き起こされます。病状が進行し末期腎不全になれば透析療法が必要です。
糖尿病の場合、腎症の症状の有無に関係なく実施されます。尿検査と血液検査によって関連する数値を計測し、血糖コントロールや食事療法などの治療を行います。

神経障害

神経障害も三大合併症の一つであり、糖尿病によって感覚神経や運動神経などの神経に障害を引き起こす病気です。
ものを触った時にその感覚を脳に伝える感覚神経・体を動かすための信号を出す運動神経・消化器官や血圧の調整など体の内部の機能を司る自律神経といった、各神経が正常に機能することで日々を不自由なく健康に過ごせます。
しかし糖尿病によって血管に不純物がたまったり傷ついたりすると、神経に十分な栄養が行き渡りません。その結果神経の働きにも障害があらわれるようになります。
たとえば感覚が鈍くなったことでガラスを踏んで怪我をしていても気づかず傷を放置してしまったり、胃腸の機能が低下して食欲低下や消化不良などが起こったりします。
糖尿病で手足のしびれや体の不調などが見られる場合は、早めに医師に相談し適切な治療を受けましょう。

歯周病

糖尿病では、合併症として歯周病を引き起こすこともあります。歯周病は磨き残しや喫煙などさまざまな要因で歯や歯茎の健康が損なわれ、歯肉炎や歯周炎が起こることです。
特に2型糖尿病との関連性が指摘されており、高血糖によって脱水傾向が続き口腔内が乾燥しやすくなることが、歯周病を引き起こす原因の一つとして考えられます。脱水傾向が続くと唾液の分泌が少なくなり、唾液による自浄作用が低下するため、歯肉の炎症が起きやすくなるのです。
また、高血糖は白血球の働きも阻害するため、歯周病菌に対する抵抗力の低下にも関係します。糖尿病の合併症として歯周病を発症している場合、糖尿病治療により改善できる可能性があります。また、歯周病の治療は血糖コントロールにも有効です。そのため、糖尿病患者への歯周病治療は推奨されています。

動脈硬化

動脈硬化は動脈の血管が硬く弾力性が失われた状態になり、詰まりやすくなる状態のことです。通常血管は弾力性がありしなやかなものですが、糖尿病になるとブドウ糖が血管を破壊する可能性が高まります。
特に脳・心臓・腎臓など特に重要な機能を担っている臓器の血管で起こりやすく、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な病気にもつながりかねません。
動脈硬化は糖尿病だけではなく高血圧・肥満・運動不足などの不摂生な生活習慣によって発症するケースが多く、改善するには健康的な食事や適度な運動など、生活習慣の見直しが必要です。

合併症を調べるために行われる検査

合併症を調べるために行われる検査
糖尿病の合併症を調べる検査は、複数の合併症を検査するものや特定の合併症を調べるために検査するものなどさまざまです。続いて糖尿病の合併症を調べるために行われる検査を解説します。

尿検査

尿検査は複数の合併症の検査で実施されます。尿検査によってわかる代表的な合併症は腎症です。腎機能が低下していると、腎臓で血液の濾過が正常に行われず、尿のなかに体に必要な栄養が通常より多く含まれてしまいます。
尿中のアルブミンやタンパク質などを検査し、これらの数値によって腎機能を測定するのです。

眼底検査

眼底検査は主に網膜症の検査のために行われます。網膜症では、病状が進行すると網膜のなかに斑状の出血や白斑が見られるようになります。これらは視力には影響しないもので、自覚症状も特にありません。
白斑が増えてもそのまま放置すれば網膜剥離などにつながってしまうため、眼底検査によって網膜の状態を正確に把握し、血糖コントロールを行うことが糖尿病網膜症の治療では大切です。
また、眼底検査では網膜の黄斑にできるむくみも観察できます。糖尿病によって黄斑にむくみができている場合は糖尿病黄斑浮腫といい、視力低下の原因となるため、網膜症とあわせて診断されるケースもあります。

歯周病検査

歯周病検査
歯周病検査では、糖尿病による歯周病に関する検査を行います。歯周病の検査では主に以下の検査が行われます。

プロービング検査は主に歯周ポケットの深さを測る検査であり、歯と歯肉の距離が長いほど歯周病が進行しているといえます。
エックス線検査は、レントゲンを撮り歯槽骨の高さを調べる検査です。歯周病になると歯槽骨が吸収されて短くなり、重症になると溶けてなくなります。歯槽骨は歯茎のなかに埋まっているもののため、レントゲン撮影によって正確に把握することが必要です。
プラーク付着率は染色液で口腔内を染め、赤く染まる部分を記録する方法です。赤く染まる部分はプラークが付着している場所であり、特に磨き残しのある場所が赤くなります。ブラッシング指導の際に活用されることもある検査です。
出血指数検査では歯肉からの出血の程度、動揺度検査では歯の揺れや安定性を調べます。

頸動脈エコー・CT・MRIなど

頸動脈エコー・CT・MRIなどは主に血管や臓器に関する合併症を調べるために行われます。
頸動脈エコーは首の動脈の様子を可視化する検査です。首の動脈は脳に血液を送る重要な役割を担う血管です。頸動脈エコーによって血管の厚さを計測し、動脈硬化が起こっていないかを検査します。
また糖尿病になると、肝臓癌や膵臓癌など、がんへの罹患リスクが高まります。がんが疑われる場合に行われるのがCT検査やMRI検査です。どちらも臓器の状態を撮影する検査であり、CTはエックス線を使用しMRIでは磁石と電波による磁場を発生させることで撮影します。

振動覚検査・アキレス腱反射など

振動覚検査・アキレス腱反射などは、神経障害を調べるために行われる検査です。
振動覚検査はかかとの内側に音の振動を伝え、振動を感じるか振動を何秒間感じられるかを確認します。
アキレス腱反射は専用のハンマーでアキレス腱を叩き、その反応を確認する検査です。通常、足のつま先を甲向きに曲げた状態でアキレス腱を叩くと、つま先が下向きになります。この反射が正常に出るかどうかによって、運動神経や感覚神経に障害が出ていないかを検査します。
このほかにも、モノフィラメント検査や神経伝導検査などによっても神経障害の検査が可能です。

編集部まとめ

まとめ
糖尿病はさまざまな合併症を引き起こす可能性があり、早期発見・早期治療が求められる病気です。

早期発見のためには血液検査が欠かせません。血液検査によって血糖値やヘモグロビンA1cなどの数値を明らかにし、病気の状態や進行度を明らかにしましょう。

また、糖尿病が引き起こす合併症は、QOLや命にも関わるものも数多くあります。合併症が疑われる場合は医師に相談し、関連の検査や適切な治療を受けましょう

この記事の監修医師