喉に症状が出る咽頭クラミジアとは?検査方法や治療法についても解説
「クラミジア」と聞くと、性器などデリケートゾーンに症状が出る病気を思い出す方が多いかもしれません。しかしクラミジアは、粘膜であればデリケートゾーン以外にも感染する可能性があり、喉に感染することがあるのをご存じでしょうか。この記事では、喉に症状が出る咽頭クラミジアに関して、その特徴や検査・治療方法などを解説します。ぜひ最後までご覧ください。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
喉に症状が出る咽頭クラミジア
喉に症状が出る咽頭クラミジアは、正しくは「咽頭クラミジア感染症」といいます。その名前からもわかる通り、病原菌の感染によって起こる感染症です。性器クラミジア感染症は一度の性行為で約半数が感染するともいわれており、性器クラミジア感染症にかかった場合には、そのうちの1割から3割の人は咽頭クラミジア感染症にも感染しているというデータも出ています。20代の若者に多い感染症となっており、中でも女性の罹患数は男性の倍以上となっています。
咽頭クラミジアの原因菌と感染経路
咽頭クラミジアの病原菌は、「クラミジア・トラコマティス」と呼ばれる細菌です。この細菌が、主に性行為により粘膜レベルでの接触が行われることで、人から人へと感染します。性器クラミジア感染症の場合、男性は尿道、女性は膣や子宮頚管に感染することで症状が現れます。咽頭クラミジアの場合には、主にオーラルセックスにより性器から喉へと病原菌がうつり感染すると考えられています。
また、すでに咽頭クラミジアに感染している場合には、ディープキスなどを行った場合にも感染する可能性があります。歯科治療中の場合や、口の中に傷がある場合には、感染リスクはさらに高くなります。粘膜の接触を伴わない軽いキスの場合は、接触する病原菌の数が少ないため感染する可能性は低いですが、それでもリスクがゼロになるわけではありません。
咽頭クラミジアの潜伏期間
潜伏期間とは、病原菌が体内に侵入してから、症状が現れるまでの期間のことです。明確なデータが出ているわけではありませんが、クラミジアの潜伏期間は1~3週間と考えられています。
咽頭クラミジアの症状
咽頭クラミジアの症状としては、喉の痛みや腫れ、せき、発熱、耳閉感、難聴、鼻詰まりなどが挙げられます。風邪の症状とよく似ているため、症状が出ても咽頭クラミジアだとは気づかず、さらに感染を拡大させてしまうという恐れがあります。
また、風邪だと勘違いしてしまうことで、市販薬などを飲むだけで適切な治療を行わず、その結果症状が悪化して咽頭炎や扁桃腺炎を併発させてしまうこともあります。このような症状が出ない場合も少なくないですが、放置していても自然に治ることはないので注意が必要です。
咽頭クラミジアの検査
ここまで説明してきたことからもわかるように、咽頭クラミジアは無症状の場合や風邪と間違う場合も多く、治療のためには適切な検査を受けることが欠かせません。では、どのような検査で咽頭クラミジアの感染を確認することができるのでしょうか。ここからは、医療機関で行う検査や自宅でできる検査について解説します。
病院でする咽頭クラミジア検査
医療機関で行う咽頭クラミジア検査には、うがい液で検査を行う方法と、喉の粘膜を採取して検査を行う方法の2種類があります。主に対応しているのは、性感染症を専門とする内科や、泌尿器科、婦人科、耳鼻咽喉科などです。
ただし、性感染症を専門とする内科以外の場合は、咽頭クラミジア検査に対応していない場合も多くあります。事前に問い合わせを行ってから受診することをおすすめします。咽頭クラミジア感染症は淋病やマイコプラズマ・ウレアプラズマと症状が似ていることが多く、また同時に感染していることも多いため、これらの検査と同時に検査を行う場合も多くあります。
うがいで検査する方法
うがいで検査をする方法は、生理食塩水で10~20秒ほどうがいを行い、その液を調べることでクラミジアの感染を調べる方法です。感染から24時間以上が経過していないと正しい結果が出ない可能性が高くなるため、ある程度の時間をおいて検査をする必要があります。また、食事の直後や歯磨きの直後も、正しい結果が出ない可能性があります。
喉の粘膜を摂る方法
喉の粘膜を採取して行う検査は、喉の粘膜を綿棒で拭うことによって行います。こちらもうがい液での検査と同様に、感染後24時間以上たってからの検査が望ましいとされています。食事や歯磨き直後の検査も控えましょう。ガムやあめなども、検査前には控えておく必要があります。
自宅でできるクラミジア検査キット
性感染症の検査をするために医療機関に行くことに、抵抗感がある方もいるかと思います。そのような場合におすすめなのが、自宅で検査できるキットを使うことです。これは、各種検査業者などが販売している検査キットを用いて自宅で検体を採取し、郵送で検体を送ることで、検査結果を確認する方法です。
例えばうがい液で検査をする場合は、検査キットを申し込むと検査申込書、検査の手順書、うがい液用のカップ、スポイト、スピッツ(検査容器)、検体提出用のレターパックなどが自宅に送られてきます。それらを使い、水道水でうがいをし、専用容器に入れたうがい液を送り返すことで、到着後数日でクラミジア感染症にかかっているかどうかをインターネット上などで確認することができます。
感染が確認された場合の治療は医療機関で受けることにはなりますが、プライバシーに配慮した検査を希望する方にとっては適している方法だといえるでしょう。
検査結果の解釈について
クラミジア感染症への感染が確認された場合、パートナーも同時に感染している可能性が高いといえます。そのため、自身に感染が確認された場合はもちろん、感染の可能性がある場合も一緒に検査を受け、症状の悪化やさらなる感染拡大を防ぐようにしましょう。検査結果は、4つの判定に分かれます。
・IgA(-)、IgG(-)
初期のクラミジア感染の可能性が少なからず残っていますが、クラミジアに感染していません。
・IgA(+)、IgG(-)
現在、クラミジアに感染している可能性を示しています。
・IgA(-)、IgG(+)
過去にクラミジアに感染していた可能性があります。
・IgA(+)、IgG(+)
過去も現在もクラミジアに感染していることを表しています。
咽頭クラミジアの検査費用
咽頭クラミジアの検査は、症状がある場合は保険適用で行うことができます。しかし、性感染症を専門とする内科など、咽頭クラミジアの検査に対応しているクリニックの多くは、これらの検査を自由診療で行っています。そのため、検査費用は医療機関によって異なる場合が多いことを覚えておきましょう。
そのうえで咽頭クラミジア感染症の費用相場を説明すると、医療機関で検査を行った場合の費用相場は3000円から5000円ほどです。淋病やマイコプラズマ・ウレアプラズマの検査も同時に行った場合は、これに費用が追加されます。
また、医療機関の場合は、検査後に再度受診して検査結果を確認したり、必要に応じて治療を受けたりする必要があることも頭に入れておきましょう。自宅でできる市販の検査キットも、検査業者によって価格は異なりますが、5000円ほどを目安として考えておくといいかと思います。
咽頭クラミジアの治療方法
ではここからは、咽頭クラミジア検査で陽性が確認された場合に行う治療について解説します。
抗生物質の内服薬
咽頭クラミジア感染症の治療の基本は、抗生剤の内服薬です。マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系などの抗生物質を用いて、病原菌を身体の中から排出します。抗生剤の種類によって服用期間は異なりますが、ほとんどの場合は1週間程度の服用が必要となります。また服用後は、1カ月程度の時間を空けてから再度検査を行い、菌が身体からいなくなったのかを確認する必要があります。
症状が激しい場合は点滴投与
喉の痛みや発熱といった症状が重く、日常生活にも支障をきたしているような場合は、点滴の投与を行う場合もあります。
咽頭クラミジアを放置するリスク
最後に、咽頭クラミジアを治療せずに放置するリスクについて説明します。ここまで何度か触れているように、咽頭クラミジアは無症状や軽症の場合も多い感染症ですが、放置することにはリスクが伴いますので、ちょっとした違和感でも医療機関で検査を受けたり、パートナーがいる場合には定期的に検査を受けるようにしたりして、早期発見できるようにしましょう。
そもそも自力では治らない
咽頭クラミジアを放置するリスクとして第一に挙げられるのは、放置していても自然治癒することはないということです。風邪と間違って市販薬で対処をしたり、何もせずに様子を見たりすることもあるかもしれませんが、風邪のように自然によくなることはありません。それどころか、咽頭炎や扁桃腺炎といった病気を発症するリスクを高めてしまうので、できるだけ早めに適切な治療を受けることが重要です。
咽頭炎や扁桃腺炎は、どちらも激しい喉の痛みが症状として現れる病気であり、高熱や倦怠感、関節痛といった全身症状を伴うこともめずらしくない病気です。
感染を広げてしまう
感染を広げてしまうことも、咽頭クラミジアを放置するリスクです。クラミジアは性感染症の中でも特に罹患数が多い感染症となっており、感染していることに気づかずに性行為を行い、さらに感染を広げてしまうという特徴があります。前述した咽頭炎や扁桃腺炎でパートナーを苦しめないためにも、気づいた段階で早めに検査・治療を受けましょう。
まとめ
喉に症状が出る「咽頭クラミジア感染症」について、症状や検査方法、治療方法などをまとめましたが参考になったでしょうか。無症状の場合が多いものの、放置すると感染拡大や合併症のリスクがあることがおわかりいただけたかと思います。咽頭クラミジアは、医療機関での検査や市販の検査キットを使って、感染を確かめることができます。最近では、オンライン診療で検査・治療を行っている医療機関も増えてきているため、気になる症状がある場合はぜひ試してみてください。