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河瀬 勇 千葉静脈瘤クリニック 院長 ドクターインタビュー

 更新日:2023/03/27

心臓外科手術から足の静脈手術へ心機一転 職人技の恩恵を、より身近で困っている患者さんにも届けたい

下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)という誰にでも起こり得る症状へ、あえて、心臓外科で培ったメスの腕をふるう医師がいる。医療現場では得てして、緊急性の少ない症状ほど、治療の優先順が後回しにされてしまうもの。「患者選び」とまではいえないものの、それに近い行為が行われているとしたら。「高度な技術は、必ずしも特別な患者さんのためだけに存在しているのではありません」。そう話す河瀬院長に、「目の前にある不具合」へスポットを当てた転身の経緯を伺った。



 

河瀬 勇 Isamu Kawase

平成元年防衛医科大学校卒業。海上自衛隊幹部候補生学校修了。一般総合病院の心臓血管外科研修医・心臓血管外科医長などを歴任後、アメリカでも同分野での臨床経験を積む。現職へは平成27年から。日本国内とアメリカで心臓血管外科の医師として重ねた経験を、今度は、静脈瘤の専門治療へ生かそうとしている。また、東邦大学医学部の客員教授として、後発の育成にも力を注ぐ。

【経歴】
2000年7月 亀田総合病院心臓血管外科医長
2002年7月 米国クリーブランドクリニック小児先天性心臓外科クリニカルフェロー
2003年7月 米国ミシガン小児病院心臓血管外科シニアフェロー
2015年8月 千葉静脈瘤クリニック開設

【所属等】
日本外科学会 外科専門医
日本脈管学会 脈管専門医
下肢静脈瘤血管内焼灼術 実施医・指導医
弾性ストッキング・コンダクター
米国ECFMG
医学博士・東邦大学客員教授

「心臓血管外科医に二流は要らない」、そう言われ続けてきた環境で、自信と技術の平衡感覚を磨く

医師の道をめざされたきっかけはありますか?

もともとは、工学部を志望していました。医学のきっかけといえるのは、たまたま受験日が早くて受験料のかからない防衛医大に合格したことでしょうか。後に心臓血管外科を専門としたのも、工学と循環器の仕組みに共通点があったからでした。私にとって、心臓を中心としたダイナミックな「動き」は、とても親しみやすい対象だったのです。動きの見えにくい神経や脳となると、どういう構造をしているのか、あまりイメージが湧きませんでした。

心臓から一転して足の血管へ、どのような経緯があったのでしょう?

大学卒業後は、当時、心臓血管外科の分野で日本をリードしていた亀田総合病院の外山雅章先生に師事し、医師としての在り方や技術を学びました。心臓血管外科は生死の責任が伴いますから、常に一流であることを求められます。ところが、50歳を過ぎたころ、いつまで最前線でいられるのか不安に感じてきたのです。これからも確実な何かを世の中へ還元したい。そう痛感したとき、下肢静脈瘤の治療という新たな目標が見えてきました。

外科医は、ある意味で職人です。少なくとも、「施術に対する自信」より「実際の技術」のほうが上回ってなくてはいけません。過度な自信が技術より上回ると、医療事故を起こしかねないのです。これからの私にとって、患者さんへご迷惑をおかけしない範囲でできる「一流の」血管手術が、下肢静脈瘤の治療でした。当院を開院したきっかけでもあります。


手術が主体、通院治療をベースとしない医院だからこそ求められる、継続性とコミュニケーション

改めて、下肢静脈瘤という症状について教えてください。

静脈の中には逆流防止の弁が付いています。その機能が低下することで、血液のたまるこぶを生じさせたり、二次的な湿疹や潰瘍を伴ったりする疾患です。潜在患者数は国内で約1000万人。にもかかわらず、せっかく受診をしても「しばらく様子を見ましょう」と後回しにされる場面が散見されます。重篤なケースがほとんどないせいでしょうか。患者さんからしたら、「どこに行けば治療をしてもらえるの」という状態。治す方法がきちんとあるのに、適切な治療を受けられないのです。

下肢静脈瘤独特の難しさや課題はありますか?

技術的な内容ではなく、継続性が課題だと考えています。下肢静脈瘤は基本的に、手術を受ければ改善されます。「かかりつけ医」に通い続けるという性格のものではありません。通院患者さんのいる医院と異なり、常に新しい患者さんを診るわけですから、継続することの難しさを実感しているところです。

継続性と関連して、患者さんと過ごせる時間が圧倒的に少ないのも当院の特徴です。まさに一期一会。例え小手術であっても、人様の体に触れるのは、十分なコミュニケーションを取ってから。そう、肝に銘じているところです。また、医師の場合、新しい技術を身につけようとか、自分なりの研究をしてみようなど、アカデミックなやりがいを持ちやすいんですね。一方、スタッフに同じことを求めるのは、少し違うのかなと思っています。それぞれにご家庭や生活があるわけですし、仕事第一とは限らない。個性や個人の事情を大事にしつつモチベーションを保つことが、好ましい接患姿勢に現れていくと考えています。


アメリカ元大統領ケネディいわく「相手が何をしてくれるかではなく、自分に何ができるのかを問いたまえ」

これからの医療はどうあるべきでしょう?

治療と平行して、カウンセリングのような対話に重きが置かれていくのではないでしょうか。病院は、病気を治すというより、病人を平素な状態へ戻す場所。治療や薬の処方だけをやっていてもダメだという感覚は、医療人なら常識として持っていると思います。当院でも、「まずは話だけを聞きたい」という方が多くなってきました。そして4分の1くらいの患者さんは、生活に支障がない症状であるとわかり、安心して帰っていかれます。もちろん、早期発見によって、病気を治せるうちに治すことも大切です。高齢化社会と言われるなか、いろいろな病気が重なると、日々の暮らしに影響をもたらすでしょう。何か気になるところがあったら、「年のせい」「どうしようかな」ではなくて、早めの対話をお願いします。

最後に、今後の展望を伺わせてください。

静脈疾患の治療範囲を、全身へ広げていきたいですね。静脈は血の塊ができやすく、やがて肺や心臓などにある重要な血管を詰まらせかねないのです。そういえば、大学のころから好きな言葉に「ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country」というセリフがあります。元アメリカ大統領ケネディが、就任演説で口にした一節です。単一疾患しか扱っていない医療機関は少ないですから、「自分に何ができるのか」を自問しつつ、患者さんのニーズに応えていきたいと考えています。


千葉静脈瘤クリニック

URL:http://www.chiba-varix.com/

【千葉静脈瘤クリニック】
〒260-0031 千葉県千葉市中央区新千葉1-4-2 「ウェストリオ2」 701
最寄駅:「JR千葉駅西口から徒歩1分」※駅直結のビル「ウェストリオ2」の7階に当院はあります