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ある日突然、肺がパンクする?「肺気胸」の正体と原因を医師が解説

 公開日:2026/04/27
肺気胸基本的な仕組みと種類

肺気胸は、肺に穴が開いて空気が漏れ出し、肺がしぼんでしまう呼吸器の病気です。なぜそのような状態が起こるのか、どのような方に多いのかを理解しておくことは、いざというときに冷静に対処するための第一歩となります。ここでは、肺気胸が発症するメカニズムや、原因による種類の違いについて、わかりやすく整理してお伝えします。

松本 学

監修医師
松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)

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兵庫医科大学医学部卒業 。専門は呼吸器外科・内科・呼吸器リハビリテーション科。現在は「きだ呼吸器・リハビリクリニック」院長。日本外科学会専門医。日本医師会認定産業医。

肺気胸とはどのような病気か

肺気胸という病気を正しく理解するためには、まず私たちの呼吸を支える肺の構造と、それが収まっている空間について知ることが大切です。肺は「胸腔(きょうくう)」と呼ばれる、肋骨や横隔膜に囲まれた空間に左右一つずつ収まっています。正常な状態では、肺の表面を覆う「臓側胸膜(ぞうそくきょうまく)」と、胸壁の内側を覆う「壁側胸膜(へきそくきょうまく)」という2枚の薄い膜が、ごく少量の胸水を介してぴったりと密着しています。この密着状態が、呼吸による肺の伸縮をスムーズにしています。肺気胸は、この絶妙なバランスが何らかの理由で崩れてしまうことで発症する病気なのです。

肺気胸の基本的な仕組み

肺気胸とは、何らかの原因で肺の表面に穴が開き、そこから空気が漏れ出して胸腔内に溜まってしまった状態を指します。正常な胸腔内は、外の気圧よりもわずかに低い「陰圧」に保たれています。この陰圧のおかげで、肺は風船のように膨らんだ状態を維持し、私たちはスムーズに呼吸ができます。しかし、肺に穴が開くと、呼吸のたびにその穴から空気が胸腔内へと「シュー」と漏れ出してしまいます。胸腔内に空気が溜まると、保たれていた陰圧が失われ、外側から肺を圧迫する力が生じます。その結果、肺は本来の大きさを保てなくなり、まるで穴の開いた風船がしぼむように小さく虚脱してしまうのです。肺がしぼむと、ガス交換(酸素の取り込みと二酸化炭素の排出)を行う面積が減少し、呼吸機能が著しく低下します。これが、肺気胸で胸痛や息苦しさといった特徴的な症状が現れる根本的な原因です。

肺気胸の種類と原因

肺気胸は、その原因によっていくつかの種類に分類されます。最も代表的なのが「自然気胸」で、これは明らかな外傷などがないにもかかわらず、突発的に発症するものです。自然気胸の多くは、肺の表面にできた「ブレブ」や「ブラ」と呼ばれる、風船のような薄い膜状の空気の袋が破裂することで起こります。特に、10代後半から30代までの、背が高く痩せ型の若い男性に多く見られる傾向があります。次に「続発性気胸」は、肺気腫や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎、肺がん、肺結核といった、何らかの基礎的な肺疾患が原因で肺がもろくなり、穴が開きやすくなることで発症します。こちらは高齢者に多く、もともと肺機能が低下しているため、軽度の気胸でも重篤な呼吸不全に陥りやすいという危険性があります。その他、交通事故による肋骨骨折や、医療行為(中心静脈カテーテルの挿入など)に伴って肺を傷つけてしまうことで起こる「外傷性気胸」や、月経周期に関連して発症する稀な「月経随伴性気胸」などもあります。原因によって好発年齢や重症化リスクが異なるため、自分の背景を理解することが重要です。

まとめ

肺気胸は、その名の通り「肺のパンク」とも言える状態で、突然の胸痛や息苦しさを引き起こす、決して稀ではない呼吸器疾患です。特に、痩せ型の若い男性に多いという特徴がありますが、肺に基礎疾患を持つ高齢者にも発症し、その場合は重症化しやすい傾向があります。初期症状が筋肉痛などと似ているため、見過ごされやすい側面も持っています。しかし、本記事で解説したように、片側だけの鋭い胸痛、深呼吸で増す痛み、安静にしても続く息苦しさなどは、肺気胸を強く疑うべき重要なサインです。これらの症状に気づいたときは、「少し様子を見よう」と自己判断せず、速やかに呼吸器内科や救急外来を受診してください。正しい知識を身につけ、迅速に行動することが、重症化を防ぎ、より早期の回復へとつながる最も確実な道です。

この記事の監修医師