「引きこもり」にはどんな「精神疾患」が隠れている可能性がある?【医師監修】

引きこもり状態の背景には、精神疾患が潜んでいる場合があります。適切な治療を受けるためには、どのような疾患が関係しているかを理解することが重要です。うつ病や気分障害、不安症群など、引きこもりと関わりの深い代表的な精神疾患について、それぞれの特徴とともに解説します。

監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
目次 -INDEX-
引きこもりと関連する代表的な精神疾患
引きこもり状態の背景には、さまざまな精神疾患が潜んでいる可能性があります。適切な診断と治療を受けるために、代表的な疾患について理解しておくことが重要です。
うつ病と気分障害
うつ病は引きこもりと密接に関連する精神疾患です。持続的な抑うつ気分、興味や喜びの喪失、意欲の低下といった症状が2週間以上続く場合、うつ病の診断基準を満たす可能性があります。思考力や集中力の低下、自己否定的な思考、希死念慮なども特徴的な症状です。また、不眠や過眠、食欲不振や過食、強い倦怠感といった身体症状が前面に出ることも少なくありません。
双極性障害(躁うつ病)も引きこもりの要因となり得ます。抑うつエピソードの際は外出できなくなり、躁状態やその後の疲弊により社会生活が破綻することがあるでしょう。気分の波が大きく、エネルギーレベルの変動が激しい場合は、この疾患の可能性を考慮する必要があります。
気分変調症のように、軽度から中等度の抑うつ状態が長期間続く場合もあります。「完全に元気」とはいえない状態が慢性化し、いつの間にか社会参加が困難になっているケースも少なくありません。こうした慢性的な気分障害も、専門的な治療により改善が期待できます。
不安症群と社交不安症
社交不安症(社交恐怖症)は、他者からの注目や評価を過度に恐れる疾患です。人前で話す、初対面の人と会う、視線を浴びるといった状況で強い不安や恐怖を感じ、そうした場面を避けるようになります。この回避行動が拡大すると、外出そのものが困難になり、引きこもりに至る場合があるでしょう。
パニック症では、突然の強い不安発作(動悸、息苦しさ、めまいなど)が繰り返し起こります。「また発作が起きるのではないか」という予期不安から、外出を避けるようになることがあります。特に人混みや公共交通機関を恐れるようになると、行動範囲が著しく制限されるでしょう。
全般性不安症では、日常のさまざまなことに過剰な心配や不安を感じます。常に緊張状態にあり、心身ともに疲弊することで、社会活動への参加が困難になります。強迫症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)なども、引きこもり状態の背景にある場合があります。
まとめ
引きこもりは、本人の意志の弱さや怠惰が原因ではありません。心理的・社会的な要因が複雑に絡み合った状態であり、適切な理解と支援があれば回復は可能です。症状や背景を正しく理解し、専門機関の力も借りながら、焦らず段階的に進めていくことが大切でしょう。一人で抱え込まず、まずは身近な相談窓口に連絡してみることをおすすめします。家族も本人も、支援を受けながら少しずつ前に進んでいくことで、新たな生活への道が開けていきます。