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ハラスメントの「労災認定基準」をご存知ですか? 認定指針の要点【専門家解説】

 公開日:2026/03/20
精神疾患による労災認定の基準と要件

ハラスメントによって精神疾患を発症した場合、労働災害として認定される可能性があります。労災認定には「心理的負荷による精神障害の認定基準」に基づく判断が行われ、業務による心理的負荷の強度が重要な評価項目となります。ここでは、労災認定の具体的な判断基準や手続きの流れ、認定事例について詳しく説明します。適切な手続きを理解することが、補償を受けるための第一歩です。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

精神疾患による労災認定の基準と要件

ハラスメントによって精神疾患を発症した場合、労働災害として認定される可能性があります。このセクションでは、労災認定の基準と手続きについて説明します。

労災認定の判断基準

精神疾患の労災認定は、「心理的負荷による精神障害の認定基準」に基づいて判断されます。この基準では、対象となる精神疾患(うつ病、適応障害、PTSDなど)を発症していること、発症前おおむね6ヶ月の間に業務による強い心理的負荷が認められること、業務以外の心理的負荷や個体側要因により発症したとは認められないこと、という3つの要件を満たす必要があります。
心理的負荷の強度は、「業務による心理的負荷評価表」を用いて評価されます。ハラスメントに関する具体的な出来事(上司等から身体的攻撃、精神的攻撃を受けた、セクシュアルハラスメントを受けたなど)の内容、頻度、継続状況などを総合的に判断し、「強」「中」「弱」のいずれかに評価されます。「強」と評価される場合には、労災認定の可能性が高くなります。なお、厚生労働省の認定基準は近年改正され、心理的負荷評価表の見直し(カスタマーハラスメントに関する出来事の追加、パワハラ6類型の具体例の明記など)が行われています。

具体的な認定事例と留意点

厚生労働省の統計によれば、精神障害による労災認定件数は増加傾向にあり、そのうちハラスメントを原因とするケースも多数報告されています。上司からの継続的な暴言や人格否定、業務上の過度な叱責、無視や仲間外れ、セクシュアルハラスメントなどが認定された事例として挙げられます。認定には、ハラスメントの事実を証明する証拠(メールやメモ、同僚の証言など)が重要な役割を果たします。
労災申請は、被害者自身または遺族が労働基準監督署に対して行います。診断書や発症に至る経緯を記した書面、証拠資料などを提出し、労働基準監督署が調査を実施します。調査には数ヶ月から1年以上かかることもあります。不支給決定に対しては、審査請求や再審査請求といった不服申立ての手続きが可能です。専門家(社会保険労務士、弁護士など)のサポートを受けることも検討する価値があります。

まとめ

ハラスメントは単なる人間関係のトラブルではなく、心身の健康に深刻な影響を及ぼし、さまざまな病気を引き起こす可能性があります。不安や抑うつ、睡眠障害、消化器症状といった初期症状を放置すると、うつ病や適応障害、PTSDといった精神疾患に進展し、長期的には慢性疾患のリスクも高まります。労災認定の基準も整備されており、適切な証拠と手続きによって補償を受けることが可能です。早期の記録作成、相談窓口の活用、医療機関での受診が回復への第一歩となります。症状が続く場合には、ためらわず専門機関に相談し、適切な支援を受けることをおすすめします。

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