機能が50%落ちるまで無症状!? 糖尿病性腎症の「5つの進行度」と必須の2大検査

初期の糖尿病性腎症では、多くの場合、患者さんご自身が気づける明確な変化はほとんど現れません。腎臓が持つ高い代償能力によって、機能低下がかなり進行するまで自覚症状が出にくいという特徴があります。ここでは、なぜ初期段階で症状が出にくいのか、そして早期発見のためにはどのような検査が重要なのかについて詳しくご説明します。

監修医師:
井筒 琢磨(医師)
2014年 宮城県仙台市立病院 医局
2016年 宮城県仙台市立病院 循環器内科
2019年 社会福祉法人仁生社江戸川病院 糖尿病・代謝・腎臓内科
所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本不整脈心電図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心エコー学会
糖尿病性腎症の初期症状
糖尿病性腎症の初期段階では、自覚できる症状がほとんどないことが特徴です。このため、多くの方は腎機能の低下に気づかないまま過ごしてしまいます。
初期段階で症状が出にくい理由
腎臓は「腎予備能」と呼ばれる非常に高い代償能力を持っています。これは、一部の糸球体がダメージを受けても、残りの健康な糸球体が働きを強化して全体の機能を維持しようとするためです。このため、腎機能の指標であるGFR(糸球体ろ過量)が正常の50%程度まで低下するまで、自覚症状が現れないことがほとんどです。しかし、水面下では病変が着実に進行しています。高血糖により、糸球体の毛細血管の壁(基底膜)が厚くなったり、メサンギウム領域という部分が拡大したりすることで、フィルターの目が粗くなり、本来は体内に留まるべきアルブミンというタンパク質が漏れ出し始めます。この性質から、糖尿病性腎症は「沈黙の病気」と呼ばれ、定期的な検査の重要性が強調されるのです。
早期発見のための検査と病期分類
糖尿病性腎症の早期発見には、尿検査と血液検査が不可欠です。特に重要なのが「尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)」です。これは、尿中の微量なアルブミンを測定するもので、腎症の最も初期のサインを捉えることができます。血液検査では、「血清クレアチニン値」を基に「推算糸球体ろ過量(eGFR)」を算出します。eGFRは、腎臓が1分間にどれくらいの血液をろ過できるかを示す指標で、腎機能の全体像を把握するために用いられます。糖尿病性腎症は、これらACRとeGFRの値に基づいて病期分類(ステージ)が決定されます。
第1期(腎症前期):eGFRは正常で、アルブミン尿もみられない段階。
第2期(早期腎症期):微量アルブミン尿(30-299 mg/gCr)が出現する。この段階での介入が腎機能の維持に最も重要。
第3期(顕性腎症期):持続性のタンパク尿(300 mg/gCr以上)がみられ、eGFRが徐々に低下し始める。むくみなどの症状が出始めることがある。
第4期(腎不全期):eGFRが30 mL/min/1.73m²未満に低下。尿毒症の症状が現れ、透析の準備が必要になる。
第5期(末期腎不全):eGFRが15 mL/min/1.73m²未満。透析療法や腎移植が必要となる。
定期的にこれらの検査を受け、自身のステージを把握することが、適切な治療方針を立てる第一歩です。
まとめ
糖尿病性腎症は、早期には症状が現れにくい一方で、進行すると透析が必要になる深刻な合併症です。しかし、血糖値や血圧の適切な管理、定期的な検査、そして生活習慣の改善によって、発症を予防したり進行を遅らせたりすることは十分に可能です。症状が出てからではなく、糖尿病と診断された時点から腎臓を守る取り組みを始めることが大切です。気になる症状がある方や、長期間糖尿病と付き合っている方は、ぜひ一度専門医に相談してみてください。
参考文献