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「また目が覚めた…」夜中に2回以上起きる人が見逃している重大リスクとは

 公開日:2026/03/05
中途覚醒のメカニズムと対処法|受診のタイミングと効果的な治療法を紹介

夜中に何度も目が覚めてしまう中途覚醒は、睡眠障害の中でも特によく見られる症状です。睡眠サイクルの切り替わり時に覚醒が生じやすくなる生理学的なメカニズムに加え、加齢や身体的疾患、ストレスなどが関連している可能性があります。本記事では、中途覚醒が起こる仕組みと具体的な要因、生活習慣の改善方法、医療機関を受診すべきタイミング、そして専門的な治療法について詳しく解説します。

後平 泰信

監修医師
後平 泰信(医療法人徳洲会札幌もいわ徳洲会病院)

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2009年に旭川医科大学医学部を卒業。循環器内科のスペシャリストとして、長年、札幌東徳洲会病院を中心に救急医療や心疾患の治療に従事。2023年には睡眠・無呼吸・遠隔医療センター長を歴任し、最新技術を用いた診療体制の構築に尽力。2024年より病院長に就任し、2025年10月の「札幌もいわ徳洲会病院」への名称変更。日本循環器学会 認定循環器専門医。日本睡眠学会 総合専門医・指導医。日本スポーツ協会公認 スポーツドクター。日本内科学会 認定内科医。

中途覚醒のメカニズムと特徴

中途覚醒(夜中に何度も目が覚めてしまうこと)は、睡眠障害の中でも特によく見られる症状です。一晩に2回以上目が覚める、目が覚めた後になかなか再入眠できないといった状態が続くと、日中の疲労感や集中力の低下につながります。

中途覚醒が起こる生理学的メカニズム

通常、睡眠は浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)を約90分周期で繰り返します。このサイクルの切り替わり時には、一時的に覚醒しやすい状態になりますが、健康な方はそのまま次の睡眠サイクルに移行します。しかし、何らかの要因でこの覚醒が完全な目覚めにつながると、中途覚醒が生じます。
加齢に伴い、深い睡眠の割合が減少し、浅い睡眠が増えることが知られています。そのため、高齢の方ほど中途覚醒が起こりやすくなります。また、睡眠を維持するための神経伝達物質のバランスが崩れることも、中途覚醒の原因となります。
膀胱の容量減少や前立腺肥大などにより、夜間に尿意で目が覚める夜間頻尿も、中途覚醒の一般的な原因です。特に高齢男性に多く見られ、一晩に2回以上トイレに起きる状態が続く場合は、泌尿器科での診察が推奨されます。

中途覚醒を引き起こす具体的要因

睡眠時無呼吸症候群による呼吸の中断は、中途覚醒の頻度を大幅に増加させます。呼吸が止まると、脳が酸素不足を察知して覚醒反応を起こし、呼吸を再開させようとするためです。本人は覚醒していることに気づかない場合もありますが、睡眠の質は著しく低下します。
ストレスや不安も中途覚醒の大きな要因です。日中に解決できなかった問題や心配事が、夜間に頭に浮かんで覚醒を引き起こします。特に、一度目が覚めると「また眠れないのではないか」という不安が新たなストレスとなり、再入眠を妨げる悪循環に陥ることがあります。
アルコールの代謝も中途覚醒に関連します。就寝前の飲酒は入眠を助けるように感じられますが、アルコールが体内で分解される過程で覚醒作用が生じ、睡眠の後半に中途覚醒が増える傾向があります。また、カフェインの摂りすぎや、特定の薬剤(利尿剤、一部の抗うつ薬など)も中途覚醒を引き起こす可能性があるでしょう。

中途覚醒への対処法と生活上の工夫

中途覚醒を改善するには、その原因に応じた対策が必要です。生活習慣の見直しから専門的な治療まで、段階的なアプローチが効果的といえます。

睡眠環境と生活習慣の改善

まず取り組みたいのが、睡眠環境の適切な整備です。寝室を睡眠専用の空間として整え、仕事や娯楽に関連する物品は極力置かないようにします。これにより、寝室に入ると自然に眠りのモードに切り替わる条件付けができます。
就寝前のルーティンを確立することも有効です。毎日同じ時刻に、読書やストレッチ、軽い瞑想など、リラックスできる活動を行うことで、身体と心に「これから眠る時間」というシグナルを送ります。この習慣により、入眠がスムーズになり、中途覚醒後の再入眠も容易になることが期待できます。
中途覚醒した際の対処法も重要です。目が覚えてから15〜20分経っても眠れない場合は、無理に寝ようとせず、一度寝室を離れて薄暗い場所で静かな活動(読書など)をすることが推奨されます。眠気が戻ってきたら再び寝室に戻るという方法が、不眠への不安を軽減し、再入眠を促す効果があるといわれています。

専門的介入が必要な場合の判断基準

生活習慣の改善を試みても中途覚醒が改善しない場合や、身体的疾患が疑われる場合は、専門医療機関への受診が必要です。特に、いびきが激しい、日中の強い眠気がある、起床時の頭痛が続くといった症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
夜間頻尿が中途覚醒の主な原因と考えられる場合は、泌尿器科での診察が推奨されます。前立腺の問題や膀胱の機能低下など、治療可能な疾患が見つかることもあるでしょう。また、不安や抑うつ症状が強い場合は、精神科や心療内科での相談が適切です。
認知行動療法(CBT-I:不眠症に対する認知行動療法)は、中途覚醒を含む不眠症に対して効果が報告されている治療法です。睡眠に対する誤った認識を修正し、適切な睡眠習慣を身につけることで、薬に頼らず症状を改善できる可能性があります。

医療機関を受診すべきタイミング

睡眠障害は誰にでも起こりうる症状ですが、その程度や持続期間によっては専門的な治療が必要です。適切なタイミングで受診することで、早期に症状を改善し、生活の質を取り戻すことができます。

受診を検討すべき具体的な症状

睡眠障害が週に3回以上、3ヶ月以上続いている場合は、慢性不眠症の診断基準を満たす可能性があります。このような状態では、生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られないことが多く、専門的な評価と治療が推奨されます。
日中の強い眠気により、仕事や日常生活に支障をきたしている場合も、早期受診が重要です。特に、運転中や重要な会議中に眠気を感じる、居眠り運転をしそうになったことがあるといった状況は、本人だけでなく周囲にも危険を及ぼす可能性があります。
起床時の頭痛、口の渇き、だるさが毎日のように続く場合は、睡眠の質に問題がある可能性が高いでしょう。また、家族やパートナーから「いびきがひどい」「呼吸が止まっているときがある」と指摘された場合は、睡眠時無呼吸症候群が疑われるため、速やかに医療機関を受診することが望ましいです。

受診先の選び方と準備すべき情報

睡眠障害の診療は、睡眠外来、精神科、心療内科、内科などで行われています。睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、呼吸器内科や耳鼻咽喉科でも対応可能です。初めて受診する場合は、総合的な評価が受けられる睡眠外来や内科が適しているでしょう。
受診前には、睡眠日誌をつけることが推奨されます。就寝時刻、起床時刻、中途覚醒の回数、日中の眠気の程度などを1〜2週間記録することで、医師が診断を行う助けとなります。また、服用中の薬、既往歴、生活習慣(カフェイン摂取量、飲酒習慣など)についても整理しておくとよいでしょう。
睡眠時無呼吸症候群の診断には、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)が必要になることがあります。この検査では、一晩病院に泊まり、脳波、呼吸、酸素飽和度などを測定します。簡易型の検査を自宅で行える場合もあるため、医師と相談してください。

受診後の診断プロセスと検査内容

医療機関では、問診と必要に応じた検査により、睡眠障害の原因を特定します。診断に基づいた治療計画が立てられることで、効果的な改善が期待できます。

初診時の問診と評価

初診時には、睡眠の状態について詳しく聞かれます。具体的には、入眠にかかる時間、中途覚醒の頻度と時間、総睡眠時間、日中の眠気や疲労感、いびきの有無などです。これらの情報から、睡眠障害のタイプ(入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、過眠)を判断します。
生活習慣や心理状態についても確認されます。ストレスの有無、仕事の内容、運動習慣、カフェインやアルコールの摂取状況、既往歴、家族歴などが診断の重要な手がかりとなります。また、うつ病や不安障害の症状がないかも評価されるでしょう。
エプワース眠気尺度(ESS)やピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)などの標準化された評価ツールが用いられることもあります。これらは数値化された指標により、睡眠障害の重症度を客観的に評価する手段です。

必要に応じた専門的検査

睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、睡眠ポリグラフ検査が実施されます。この検査では、睡眠中の脳波、眼球運動、筋電図、呼吸、心電図、酸素飽和度などを同時に測定し、睡眠の構造と呼吸状態を詳細に評価します。無呼吸の回数や低呼吸の程度により、重症度が判定されます。
むずむず脚症候群が疑われる場合は、血液検査で鉄分(フェリチン値)や腎機能を確認することがあります。鉄欠乏がある場合は、鉄剤の補充により症状が改善する可能性があります。
概日リズム睡眠障害が疑われる場合は、アクチグラフィという腕時計型の装置を用いて、数日〜数週間の活動と休息のパターンを記録します。この検査により、体内時計のズレの程度を客観的に評価できます。

睡眠障害の治療法

睡眠障害の治療は、原因や症状のタイプに応じて選択されます。非薬物療法と薬物療法を組み合わせることで、症状の改善が期待できます。

非薬物療法:認知行動療法と生活指導

不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、睡眠に関する誤った認識を修正し、適切な睡眠習慣を身につける治療法です。例えば、「8時間眠らなければならない」という考えを柔軟にし、個人に必要な睡眠時間を見つけることを目指します。
睡眠制限法は、CBT-Iの重要な要素の一つです。あえて就床時間を制限することで睡眠効率を高め、深い眠りを得やすくする方法です。初期は多少の睡眠不足を感じることがありますが、徐々に睡眠の質が向上し、中途覚醒が減少することが期待されます。
刺激制御法も効果的な技法です。寝室を睡眠以外の活動(テレビ視聴、仕事など)に使わないことで、寝室と睡眠を強く結びつけます。また、眠くないときにはベッドに入らない、15分経っても眠れなければ一度起きるといったルールを守ることで、不眠への不安を軽減します。

薬物療法の種類と注意点

睡眠薬は、症状の重症度や原因に応じて処方されます。現在主流となっているのは、ベンゾジアゼピン受容体作動薬とメラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬です。それぞれ作用機序が異なり、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒など、症状に応じて使い分けられます。
現在は依存性の少ない新しいタイプの薬(オレキシン受容体拮抗薬など)が第一選択として使われることが増えています。依存性を過度に怖がらず、医師と相談することが大切です。
メラトニン受容体作動薬は、体内時計を調整する作用があり、概日リズムの乱れによる不眠に適しています。依存性が低く、安全性が高いとされていますが、効果が現れるまでに時間がかかることがあります。
オレキシン受容体拮抗薬は、覚醒を維持する物質の働きを抑えることで眠りを促します。中途覚醒を減らす効果が期待でき、依存性も低いとされています。ただし、翌朝への眠気の持ち越しに注意が必要な場合があるでしょう。

睡眠障害の特定原因に対する専門治療

睡眠障害の中には、特定の疾患が原因となっているものがあり、それぞれに適した治療法が確立されています。原因疾患を治療することで、睡眠の質が大きく改善される可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群の治療

睡眠時無呼吸症候群の第一選択治療は、CPAP(持続陽圧呼吸療法)です。就寝時に鼻マスクを装着し、一定の圧力をかけた空気を送り込むことで、気道の閉塞を防ぎます。使用開始後、日中の眠気の改善を実感する方も少なくありません。
CPAPは保険適用の治療であり、月々の負担は数千円程度です。ただし、マスクの違和感や鼻の乾燥などの副作用が生じることがあるため、医師や臨床工学技士と相談しながら、マスクの種類や圧力設定を調整することが大切です。
軽症の場合や、CPAPが使用できない場合には、口腔内装置(マウスピース)が選択されることもあります。下顎を前方に固定することで気道を広げる装置で、歯科医師が製作します。また、肥満が原因の場合は、減量により症状が改善することもあるでしょう。

むずむず脚症候群とほかの睡眠関連疾患の治療

むずむず脚症候群の治療は、まず鉄欠乏の有無を確認し、必要に応じて鉄剤を補充します。鉄分が正常範囲でも症状が続く場合は、ドパミン作動薬などの薬物療法が検討されます。これらの薬は脳内のドパミン系に働きかけ、不快感を軽減します。
周期性四肢運動障害は、睡眠中に手足が無意識に動く疾患で、本人は自覚がないことも多いですが、睡眠の質を大きく低下させます。治療法はむずむず脚症候群と類似しており、薬物療法が中心となります。
ナルコレプシーは、日中に突然強い眠気に襲われ、居眠りをしてしまう疾患です。情動脱力発作(笑ったり驚いたりしたときに全身の力が抜ける)を伴うこともあります。治療には、覚醒を促す薬や夜間の睡眠の質を改善する薬が用いられます。規則正しい生活リズムと計画的な仮眠も重要な管理方法です。

まとめ

睡眠障害は多様な原因により引き起こされ、日常生活に深刻な影響を及ぼします。しかし、診断と治療により、症状の改善が期待できます。症状が続く場合や生活への支障が大きい場合は、自己判断せず専門医療機関を受診することが重要です。
質の高い睡眠を取り戻すことで、健康で充実した生活を送ることができるでしょう。まずは睡眠日誌をつけて自分の睡眠パターンを把握し、必要に応じて医師に相談してください。睡眠は健康の基盤であり、適切なケアにより改善の可能性があります。

この記事の監修医師