「HIV感染症」の母子感染リスクを”1%未満”に抑える条件とは?日常生活での感染ルートも解説!

HIVの感染リスクは行為の種類や状況によって大きく異なり、適切な知識を持つことで効果的な予防が可能です。特に母子感染については医療の進歩により大幅にリスクを低減できるようになっています。一方で、日常生活における通常の接触では感染しないことも科学的に明らかになっており、正しい理解が差別や偏見の解消につながります。ここでは、母子感染の発生時期と対策、日常生活における感染の可能性について解説します。

監修医師:
吉野 友祐(医師)
HIV感染症の感染リスクと予防の重要性
HIVの感染リスクは行為の種類や状況によって大きく異なり、適切な予防策を講じることで感染を防ぐことができます。母子感染のリスクと日常生活における感染の有無について正しく理解することが大切です。
母子感染の発生時期と対策
HIV陽性の母親から子どもへの感染は、母子感染と呼ばれます。感染が起こりうる時期は、妊娠中(胎内感染)、分娩時(産道感染)、授乳時(母乳感染)の3つに分けられます。適切な対策が行われない場合、母子感染が起こる確率は15%〜45%程度と報告されていますが、現在では医療の進歩により、適切な管理を行うことでそのリスクを1%未満にまで低減できることがわかっています。
母子感染を防ぐためには、妊娠初期から抗HIV薬による治療を行い、妊娠後期(おおむね妊娠36週まで)に母体のHIV RNA量を検出感度未満に抑えることが重要です。また分娩方法は、これまで帝王切開が選択されることが多くありましたが、近年では治療の進歩により、一定の条件を満たす場合には経腟分娩を選択できるケースもあります。具体的には、ウイルス量が十分に抑制されていることや、産科的に経腟分娩が可能であること、本人およびパートナーが十分に理解したうえで強い希望を持っていることなどが考慮されます。
さらに、授乳による感染リスクを避けるため、日本では人工乳による育児が選択されることも一般的です。現在の日本では、妊婦健診の一環としてHIV検査が推奨されており、感染が判明した場合には、専門医療機関で産科と感染症科が連携しながら、母子感染を防ぐための包括的な管理が行われます。
日常生活における感染の可能性
日常生活における通常の接触では、HIVは感染しません。握手、ハグ、キス、同じ食器やタオルの使用、トイレや浴室の共用、プールでの遊泳、咳やくしゃみなどでは感染しないことが明らかになっています。HIVは空気中や水中では生存できず、感染力が弱いウイルスです。
また、蚊などの昆虫を介した感染も起こりません。HIVは感染した方の特定の体液(血液、精子、腟分泌液、母乳)に含まれ、それらが粘膜や傷口から体内に入ることで初めて感染が成立します。正しい知識を持つことで、感染している方への不当な差別や偏見をなくし、共に生活していくことができます。
まとめ
HIV感染症は、早期発見と適切な治療により、通常の生活を送ることが可能な疾患です。感染経路を理解し、コンドームの使用や定期的な検査といった予防策を講じることで、感染リスクを大きく低減できます。感染の可能性がある場合には、早期に検査を受け、必要に応じて速やかに治療を開始することが重要です。
現在の医療では、継続的な服薬によりウイルスを抑制し、免疫機能を維持することができます。正しい知識を持ち、不安がある場合には医療機関や保健所に相談することで、健康を守る第一歩を踏み出しましょう。HIV感染症に関する理解を深め、偏見や差別のない社会づくりに貢献していくことも大切です。