【若年性アルツハイマー型認知症】薬の服用を続けると「何」が期待できるのか医師が解説

治療は薬物療法と非薬物療法を組み合わせて行います。近年では病気の進行そのものに働きかける新しい薬も登場しており、早期段階での治療選択肢が広がっています。現在利用できる治療法とその効果、生活支援の方法について包括的に解説します。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
若年性アルツハイマー型認知症の治療法
治療は、薬物療法と非薬物療法を組み合わせて行います。現時点では根本的な治癒は困難ですが、症状の進行を遅らせ生活の質を維持することを目指します。
薬物療法の種類と期待できる効果
アルツハイマー型認知症の薬物療法には、大きく分けて症状を和らげる薬(対症療法薬)と、病気の進行そのものに作用する薬(疾患修飾薬)があります。患者さんの病期や状態に応じて、これらを単独または組み合わせて使用します。
対症療法薬(認知機能を支える薬)
従来から用いられている治療薬には、コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬があります。
コリンエステラーゼ阻害薬には、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンの3種類があります。これらは、脳内で記憶や学習に関わる神経伝達物質であるアセチルコリンの分解を抑えることで、神経細胞同士の情報伝達を保ち、認知機能や日常生活動作の低下を緩やかにします。
・ドネペジル:1日1回内服。軽度から高度まで幅広い病期で使用されます。
・ガランタミン:1日2回内服。軽度から中等度の段階で用いられます。
・リバスチグミン:貼付薬(パッチ)で、飲み込みが難しい方にも使用できます。
NMDA受容体拮抗薬であるメマンチンは、神経細胞に過剰な刺激を与えるグルタミン酸の作用を調整し、神経細胞を保護します。主に中等度から高度の認知症で使用され、必要に応じてコリンエステラーゼ阻害薬と併用されることもあります。
これらの対症療法薬は、認知症を根本的に治すものではありませんが、治療を行わなかった場合と比べて、現在の認知機能や生活能力をより長く保つことが期待できます。
「一定期間しか効かない」という意味ではなく、服用を続けることで進行のスピードを緩やかにする治療である点が重要です。
疾患修飾薬(病気の進行に働きかける薬)
近年、アルツハイマー病治療に大きな転換点となったのが、抗アミロイドβ抗体薬(疾患修飾薬)の登場です。
レカネマブなどの薬剤は、アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβを脳内から除去することで、病気の進行そのものを抑えることを目的としています。
これらの薬は、軽度認知障害(MCI)や軽度アルツハイマー型認知症の早期段階で、かつアミロイドβの蓄積が確認された方が対象となります。2023年以降、日本でも承認・保険適用されており、若年性アルツハイマー型認知症の方が適応となる可能性もあります。
疾患修飾薬は、症状を一時的に改善する薬ではありませんが、将来の認知機能低下を遅らせ、より長く自立した生活を維持する可能性を広げる治療と位置づけられています。ただし、副作用や治療条件もあるため、専門医による慎重な評価が不可欠です。
副作用と治療の進め方
対症療法薬では、吐き気・下痢・食欲低下・徐脈などの副作用がみられることがあります。そのため、通常は少量から開始し、体調を確認しながら徐々に増量します。副作用が強い場合には、無理に増量せず、少量で継続することもあります。
いずれの治療においても、「薬だけで全てを解決する」のではなく、早期診断、適切な薬物療法、生活環境の調整、家族や社会的支援を組み合わせることが、長期的な生活の質を保つうえで重要です。
非薬物療法と生活支援
非薬物療法は、認知機能の維持や生活の質の向上に重要な役割を果たします。認知リハビリテーションでは、記憶訓練や問題解決訓練などを通じて、残存している認知機能を活用する方法を学びます。回想法では、過去の思い出を語り合うことで、記憶の活性化や精神的安定を図ります。
音楽療法や芸術療法は、言語に頼らない表現活動を通じて、感情の安定や自己表現の機会を提供します。運動療法では、適度な身体活動により全身状態を維持し、転倒予防や生活リズムの確立を目指します。
日常生活の支援も治療の重要な要素です。環境を整えることで、混乱を減らし自立を支援できます。たとえば、部屋の配置をシンプルにする、目印やラベルをつける、日課を視覚的に示すなどの工夫が有効です。
家族への支援も欠かせません。介護負担を軽減するため、デイサービスやショートステイなどの介護保険サービスを活用します。家族会や認知症カフェに参加することで、情報交換や心理的サポートを得られます。若年性の場合、経済的問題や就労の問題もあるため、社会福祉制度(障害年金、介護保険、障害者手帳など)の活用について相談することも重要です。
まとめ
若年性アルツハイマー型認知症は、65歳未満で発症する進行性の神経変性疾患です。初期症状には記憶障害、見当識障害、判断力の低下などがあり、日常生活や仕事に支障をきたします。原因は脳内でのアミロイドβとタウタンパク質の蓄積であり、遺伝的要因や生活習慣病が危険因子となります。
診断には認知機能検査と画像検査を組み合わせた総合的評価が必要で、治療は薬物療法と非薬物療法を併用します。薬物療法では、コリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬により症状の進行を遅らせることが期待されます。非薬物療法では、認知リハビリテーションや運動療法、環境調整などにより生活の質の維持を目指します。
早期発見と適切な治療、社会資源の活用により、本人と家族の生活の質を維持することが可能です。介護保険サービス、障害者手帳、障害年金などの制度を活用し、若年性認知症支援コーディネーターや地域包括支援センターなどの相談窓口を利用することで、必要な支援を受けられます。気になる症状がある場合は、早めに専門の医療機関を受診することが大切です。