症状が出る10年前から脳内で「何」が始まっている?若年性アルツハイマーの原因と遺伝のリスク

若年性アルツハイマー型認知症は、脳内での特定のタンパク質の異常な蓄積が主な原因とされています。このタンパク質が神経細胞にダメージを与え、徐々に脳の機能が失われていきます。発症のメカニズムを理解することは、治療法や予防策を考えるうえで重要な手がかりとなります。ここでは病気の根本的な原因について解説します。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
若年性アルツハイマー型認知症の原因とメカニズム
発症には、脳内での特定のタンパク質の蓄積が関与しています。病気の根本的な原因と脳内で起こる変化について理解することが重要です。
アミロイドβとタウタンパク質の蓄積
アルツハイマー型認知症の主な原因は、脳内にアミロイドβというタンパク質が異常に蓄積することです。アミロイドβは通常も脳内で作られますが、健康な状態では適切に分解され排出されます。しかし、何らかの理由でこのバランスが崩れると、アミロイドβが蓄積し「老人斑」と呼ばれる塊を形成します。
老人斑が蓄積すると、神経細胞の働きが障害され、細胞同士の情報伝達が妨げられます。さらに、タウタンパク質という別のタンパク質も異常な形に変化し、神経細胞の内部に蓄積します。このタウタンパク質の蓄積は「神経原線維変化」と呼ばれ、神経細胞の死を引き起こします。
これらの病理学的変化は、症状が現れる10年以上前から始まっているといわれています。若年性の場合、アミロイドβの蓄積がより急速に進むケースがあり、病気の進行も早い傾向が見られます。脳の萎縮は特に記憶を司る海馬という部分から始まり、徐々にほかの領域へと広がっていきます。
遺伝的要因と環境要因の関与
若年性アルツハイマー型認知症には、遺伝的要因が関与するケースがあります。家族性アルツハイマー病と呼ばれる遺伝性の形態では、特定の遺伝子変異が原因となります。アミロイド前駆体タンパク質(APP)遺伝子、プレセニリン1(PSEN1)遺伝子、プレセニリン2(PSEN2)遺伝子の変異が知られており、これらの変異を持つ方は一般よりも高い確率で発症します。
ただし、若年性アルツハイマー型認知症全体の中で、明確な遺伝性を示すケースは約10%程度とされています。また上述の遺伝子があったら必ず認知症になるというわけではありません。残りの大部分は孤発性と呼ばれ、遺伝以外の複数の要因が複雑に関わっていると考えられています。
環境要因としては、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が危険因子として報告されています。これらの疾患は脳の血管にダメージを与え、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高める可能性があります。また、頭部外傷の既往、喫煙、過度の飲酒なども危険因子として指摘されています。
まとめ
若年性アルツハイマー型認知症は、65歳未満で発症する進行性の神経変性疾患です。初期症状には記憶障害、見当識障害、判断力の低下などがあり、日常生活や仕事に支障をきたします。原因は脳内でのアミロイドβとタウタンパク質の蓄積であり、遺伝的要因や生活習慣病が危険因子となります。
診断には認知機能検査と画像検査を組み合わせた総合的評価が必要で、治療は薬物療法と非薬物療法を併用します。薬物療法では、コリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬により症状の進行を遅らせることが期待されます。非薬物療法では、認知リハビリテーションや運動療法、環境調整などにより生活の質の維持を目指します。
早期発見と適切な治療、社会資源の活用により、本人と家族の生活の質を維持することが可能です。介護保険サービス、障害者手帳、障害年金などの制度を活用し、若年性認知症支援コーディネーターや地域包括支援センターなどの相談窓口を利用することで、必要な支援を受けられます。気になる症状がある場合は、早めに専門の医療機関を受診することが大切です。