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「切らずに治療できるがん」の特徴をご存じですか? 放射線治療の対象疾患とは【医師監修】

 公開日:2026/03/04
放射線治療で対応できるがんと適応条件―頭頸部から骨盤部まで

放射線治療は多くのがん種に対して有効な選択肢となっています。脳腫瘍や肺がん、乳がん、前立腺がんなど、発生部位や進行度に応じてさまざまな役割を果たします。本記事では、頭頸部・胸部・腹部・骨盤部のがんに対する放射線治療の適用例や、骨転移・脳転移などへの対応について解説します。また、治療中に避けるべき刺激物や硬い食品、推奨される柔らかく消化の良い食事についてもご紹介します。さらに、過去の照射歴や妊娠など、治療が難しい条件についても触れ、適応判断の過程を理解しましょう。

山本 佳奈

監修医師
山本 佳奈(ナビタスクリニック)

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滋賀医科大学医学部 卒業 / 南相馬市立総合病院や常磐病院(福島)を経て、ナビタスクリニック所属/ 専門は一般内科

放射線治療で対応できるがんの種類

放射線治療は多くのがん種に対して有効な治療法の一つです。がんの種類や進行度、発生部位によって、根治を目指す治療から症状緩和を目的とする治療まで、さまざまな役割を果たします。

頭頸部と胸部のがん

脳腫瘍に対しては放射線治療が重要な治療選択肢となります。手術が難しい部位の腫瘍や、術後の再発予防のために照射が行われます。定位放射線治療により、正常脳組織への影響を抑えながら腫瘍に高線量を集中させることが可能です。転移性脳腫瘍に対しても効果が期待できる場合があります。

頭頸部がん(喉頭がん、咽頭がん、口腔がん、舌がん、上顎洞がんなど)では、臓器機能を温存しながら治療できる点で放射線治療が選ばれることが多くあります。発声や嚥下といった重要な機能を保ちながら、がんを制御することを目指します。化学療法との併用により効果を高める治療戦略もとられます。

肺がんでは早期の非小細胞肺がんに対して定位放射線治療が行われ、良好な治療成績が報告されています。手術が困難な方や手術を希望されない方の選択肢となります。進行肺がんでは化学療法と組み合わせた放射線治療が標準的な治療法の一つとして位置づけられています。

食道がんのうち、主に扁平上皮がんの一部の進行例では、化学療法と放射線治療を同時に行う化学放射線療法が、手術と同等の治療成績を示す場合があると報告されています。患者さんの全身状態や希望に応じて、手術か化学放射線療法かを選択することになります。術後の再発予防目的でも照射が検討されることがあります。

腹部・骨盤部と血液のがん

乳がんでは乳房温存手術後の局所再発を予防するために術後照射が標準治療となっています。乳房全体に照射を行い、必要に応じて腫瘍があった部位に追加照射(ブースト照射)を行います。リンパ節転移がある場合にはリンパ節領域への照射も検討されます。

前立腺がんは放射線治療の良い適応となるがんの一つです。外部照射や密封小線源治療(組織内照射)により、手術と同等の治療効果が期待できる場合があります。高齢の方や合併症のある方でも比較的受けやすい治療とされています。性機能や排尿機能への影響は、個々の状況により異なります。

子宮頸がんでは進行度に応じて手術か放射線治療が選択されます。放射線治療では外部照射と腔内照射を組み合わせることで、腫瘍に高線量を集中させながら周囲の正常組織への影響を抑えます。化学療法との併用により効果を高める治療が標準的です。

直腸がんでは術前に放射線治療を行うことで腫瘍を縮小させ、手術での切除をしやすくする戦略がとられることがあります。術後の局所再発リスクが高い場合には術後照射も検討されます。肛門管がんでは化学放射線療法により肛門を温存できる可能性があります。

悪性リンパ腫では化学療法が主体となりますが、病変部位への放射線治療を併用することで治療効果を高めることができる場合があります。特に限局期のホジキンリンパ腫では化学療法と放射線治療の組み合わせが標準治療です。症状緩和目的でも有効に用いられることがあります。

転移や再発に対する放射線治療

放射線治療はがんの転移や再発に対しても重要な役割を果たします。根治を目指す場合もあれば、症状を和らげて生活の質を保つことを目的とする緩和照射もあり、患者さんの状況に応じた治療が選択されます。

骨転移と脳転移への対応

骨転移による痛みは放射線治療で改善が期待できる症状の一つです。照射により腫瘍の活動が抑えられ、痛みの軽減が期待されます。骨折リスクの低下が期待できる場合もありますが、状況により整形外科的治療が必要となることもあります。多くの場合、数回から10回程度の外来照射で効果が得られます。痛みが完全になくなる方もいれば、痛み止めの使用量が減る方もいます。

脊椎転移では腫瘍が脊髄を圧迫して麻痺が生じるリスクがあります。緊急的に放射線治療を行うことで神経症状の進行を防いだり、改善させたりすることができる場合があります。早期の対応が重要なので、下肢のしびれや脱力、排尿障害などの症状が現れた際には速やかに受診する必要があります。

脳転移に対しては全脳照射や定位放射線治療が選択されます。転移巣が少数で小さい場合には定位放射線治療により、認知機能への影響を抑えながら高い局所制御が期待できることがあります。転移巣が多数ある場合や、髄膜播種がある場合には全脳照射が検討されます。

これらの転移に対する治療は症状の緩和だけでなく、生存期間の延長にも寄与することが報告されています。薬物療法と組み合わせることで相乗効果が得られる場合もあります。ただし効果には個人差があり、腫瘍の種類や全身状態によって結果が異なることがあります。

局所再発への治療戦略

がんの治療後に元の部位やその近くで再発が見つかった場合、放射線治療が選択肢となることがあります。以前に同じ部位に照射を受けていない場合には、初回治療と同様の線量を照射できる可能性があります。手術や薬物療法と組み合わせることもあります。

過去に放射線治療を受けた部位に再び照射する再照射は、正常組織がすでに一定の線量を受けているため慎重な判断が必要です。それでも技術の進歩により、高精度な照射方法を用いることで再照射が可能となるケースが増えています。期待される効果と副作用のリスクを十分に検討したうえで決定されます。

局所再発の治療では根治を目指せる場合と、症状のコントロールを主目的とする場合があります。腫瘍の大きさや広がり、患者さんの全身状態、ほかの治療選択肢との比較などを総合的に評価して治療方針が決められます。

再発がんに対する放射線治療では、より精密な照射技術が用いられることが多くあります。強度変調放射線治療(IMRT)や画像誘導放射線治療(IGRT)により、腫瘍の形状に合わせて線量を集中させ、周囲の正常組織への影響を最小限に抑える工夫がなされています。

放射線治療中に避けるべき食品

放射線治療中の食事は、副作用を軽減し栄養状態を維持するために重要です。照射部位によって注意すべき食品は異なりますが、一般的に刺激の強い食品や消化に負担のかかる食品は控えることが推奨されます。

刺激物と硬い食品

頭頸部への照射を受けている方は口腔内や咽頭の粘膜が敏感になっているため、刺激の強い食品を避ける必要があります。唐辛子や胡椒などの香辛料、酸味の強い柑橘類や酢の物、塩分の濃い漬物や梅干しなどは粘膜に痛みを引き起こすことがあります。

アルコール飲料は粘膜への刺激が強く、副作用を悪化させる可能性があるため、治療期間中は控えることが勧められています。治療期間中は飲酒を控えることが望ましいとされています。カフェインを多く含むコーヒーや濃い緑茶も、胃腸への刺激となる場合がありますので摂取量に注意します。

硬い食品や噛みにくい食品も避けたほうがよいでしょう。せんべいやナッツ類、硬いパンの耳、生野菜のスティックなどは口腔粘膜を傷つける可能性があります。繊維質の多い肉類やイカ、タコなども噛みにくく飲み込みにくいため、細かく刻んだり軟らかく調理したりする工夫が必要です。

極端に熱い食べ物や飲み物も粘膜への刺激となります。適度に冷ましてから摂取することを心がけましょう。逆に冷たすぎるものも知覚過敏のある方には不快感を与えることがありますので、室温程度のものが適している場合もあります。

脂肪分と食物繊維

腹部や骨盤部への照射を受けている方は、消化管への影響により下痢や腹痛が生じやすくなります。脂肪分の多い食品は消化に時間がかかり、症状を悪化させる可能性があるため控えめにします。揚げ物や脂身の多い肉、生クリームを使った料理などは避けたほうがよいでしょう。

不溶性食物繊維を多く含む食品も腸への刺激となり、下痢を悪化させることがあります。ごぼうやレンコンなどの根菜類、きのこ類、海藻類、玄米などは消化管の負担となる場合があります。一方で水溶性食物繊維は便の状態を整える働きがあるため、適度に摂取してもよいとされます。

乳製品は下痢症状がある時には控えることが推奨されます。乳糖を分解する酵素の働きが低下している場合、牛乳やヨーグルトが下痢を悪化させることがあります。症状が落ち着いてから少量ずつ試してみるとよいでしょう。

刺激性のある香辛料や炭酸飲料も腹部症状を悪化させる可能性があります。カレーやキムチ、炭酸飲料、炭酸水などは治療中は避けることが無難です。ガスを発生させやすい豆類やイモ類も腹部膨満感の原因となることがありますので、摂取量に注意が必要です。

放射線治療中に推奨される食事

放射線治療中は副作用による食欲低下や食事摂取量の減少が起こりやすいため、食べられるものを無理なく摂取することが基本となります。栄養バランスと消化の良さを考慮した食事選びが重要です。

柔らかく消化の良い食品

口腔内や咽頭への照射を受けている方には、柔らかく飲み込みやすい食品が適しています。お粥や柔らかく炊いたご飯、うどん、そうめんなどの麺類は食べやすく、エネルギー源として重要です。パンはトーストせず、牛乳やスープに浸して軟らかくすると食べやすくなります。

タンパク質源としては、豆腐や茹でた白身魚、ひき肉、卵豆腐、プリン、ヨーグルト(症状が許せば)などが適しています。これらは軟らかく、粘膜への刺激も少なめです。肉類は挽肉を使った料理やミートボール、つみれなどにすると食べやすくなります。

野菜は柔らかく煮込んだものやマッシュしたものが適しています。カボチャやジャガイモのポタージュ、よく煮た大根や人参、ホウレン草のおひたしなどは栄養価が高く消化も良好です。果物はバナナや缶詰の桃、りんごのすりおろしなどが食べやすいでしょう。

調理方法としては蒸す、煮る、茹でるといった方法が適しています。焼く場合も軟らかく仕上げることを心がけます。だしや薄味のスープでうま味を加えると、塩分を控えめにしながらも美味しく食べられます。

栄養補助食品の活用

食事量が十分に確保できない場合には、栄養補助食品を利用することも一つの方法です。市販されている栄養補助飲料や栄養ゼリーは、少量で高カロリー・高タンパク質を摂取できるよう設計されています。さまざまな味があり、食事の合間や食事量が少ない時の補助として活用できます。

プロテインパウダーをスープや飲み物に混ぜることで、タンパク質摂取量を増やすことができます。味や香りが気になる場合には、調理に工夫を加えることで摂取しやすくなります。管理栄養士に相談すると、個別の状況に合わせた提案を受けられます。

エネルギー補給には、消化吸収の良い糖質を含む食品が役立ちます。蜂蜜やジャム、カステラ、ゼリーなどは軟らかく食べやすいうえ、エネルギー源として効率的です。食事量が少ない時でも少量で必要なカロリーを補えます。

水分補給も忘れずに行いましょう。脱水は全身状態の悪化につながります。お茶やスープ、果汁ジュースなど、飲みやすいものを選んでこまめに摂取します。口腔内の乾燥がある場合には、水分を含んだゼリーやシャーベットも水分補給に役立ちます。

放射線治療を受けられない条件

放射線治療は多くの患者さんに適用できる治療法ですが、いくつかの条件により治療が困難または推奨されない場合があります。

過去の照射歴と全身状態

同じ部位に過去に放射線治療を受けている場合、再照射には慎重な判断が必要です。正常組織が耐えられる放射線量には限界があり、同じ場所に繰り返し照射すると重篤な副作用が生じるリスクが高まります。ただし技術進歩により、条件によっては再照射が可能となるケースもあります。

全身状態が著しく不良な場合には、放射線治療の適応が制限されることがあります。治療を受けるために通院できる体力や、治療期間中の副作用に耐えられる体力が必要です。寝たきりの状態や意識レベルの低下がある場合、治療体位を保持することが難しいため実施が困難になります。

重篤な合併症がある場合にも治療が制限されることがあります。コントロール不良な心不全や呼吸不全、活動性の感染症などがある場合には、まずこれらの状態を改善させることが優先されます。治療による身体的ストレスが合併症を悪化させるリスクがあるためです。

膠原病の一部、特に強皮症や皮膚筋炎などでは、放射線に対する正常組織の感受性が高まっており、通常よりも強い副作用が現れる可能性があります。このような疾患がある場合には、リスクとベネフィットを慎重に評価して治療方針が決定されます。

妊娠と特殊な状況

妊娠中の放射線治療は原則として避けられます。放射線は胎児に影響を及ぼす可能性があり、特に妊娠初期は器官形成期であるため注意が必要です。母体のがん治療が緊急に必要な場合でも、可能であれば出産まで待つか、放射線以外の治療法を選択することが検討されます。

どうしても治療が必要な場合には、照射部位が子宮から離れており、適切な遮蔽を行うことで胎児への被ばくを最小限に抑えられる条件であれば、慎重に実施されることもあります。産婦人科の専門医や放射線腫瘍医、患者さんやご家族を含めた十分な話し合いのもとで決定されます。

身体内に金属製の医療機器が埋め込まれている場合にも注意が必要です。ペースメーカーや除細動器などの電子機器は、放射線により誤作動を起こす可能性があります。照射野から十分に離れていれば問題ないことが多いですが、循環器内科の専門医との連携のもと、機器の設定変更や監視体制を整えて治療が行われます。

人工関節や固定用の金属プレートなどは放射線を遮蔽したり散乱させたりする可能性がありますが、多くの場合は治療計画で考慮することで対応できます。歯科金属も影響を及ぼすことがありますが、頭頸部の治療では事前に歯科での処置が検討される場合があります。

放射線治療の適応を判断する過程

放射線治療が適切かどうかは、多くの要因を総合的に評価して判断されます。患者さん一人ひとりの状況に応じた個別化された治療計画が立てられます。

診断と治療方針の決定

放射線治療の適応を判断するためには、まず正確な診断が必要です。CT、MRI、PETなどの画像検査により腫瘍の位置、大きさ、周囲組織への広がりを詳細に評価します。病理検査で腫瘍の種類や悪性度を確認することも重要です。これらの情報をもとに治療の目標が設定されます。

治療方針は一人の医師だけでなく、複数のスペシャリストによるカンファレンスで検討されることが一般的です。外科医、内科の専門医、放射線腫瘍医、病理医、放射線診断医などが集まり、それぞれの専門的見地から意見を出し合います。患者さんにとって適切と考えられる治療法が提案されます。

年齢や全身状態、合併症の有無、社会的背景なども治療方針の決定に影響します。高齢であっても全身状態が良好であれば積極的な治療が可能ですし、若くても重篤な合併症があれば治療内容の調整が必要になります。患者さんの希望や価値観も尊重されます。

放射線治療単独で行うか、手術や薬物療法と組み合わせるかも重要な判断ポイントです。術前照射で腫瘍を縮小させてから手術を行う方法、術後に再発予防のために照射する方法、化学療法と同時に行う方法など、さまざまな治療戦略があります。

治療計画と患者さんへの説明

放射線治療が決定すると、治療計画の作成が行われます。CTシミュレーションで正確な照射位置を決定し、腫瘍に十分な線量を届けながら周囲の正常組織への線量を最小限に抑える計画が立てられます。この過程には放射線治療専門の医師、医学物理士、診療放射線技師がチームとして関わります。

治療開始前には担当医から詳しい説明が行われます。治療の目的、方法、期待される効果、起こり得る副作用、治療期間、費用などについて十分な情報提供がなされます。疑問や不安があれば遠慮なく質問することが大切です。納得したうえで同意書に署名し、治療が開始されます。

治療中は定期的に診察が行われ、副作用の程度や全身状態が評価されます。必要に応じて対症療法が追加されたり、治療計画が調整されたりします。看護師や放射線技師とのコミュニケーションも重要で、日々の体調変化を伝えることで適切なケアを受けられます。

治療終了後も定期的な経過観察が続きます。治療効果の評価や晩期副作用の確認、再発の有無をチェックするため、画像検査や血液検査が行われます。経過観察の間隔は時間とともに徐々に長くなっていきますが、長期的なフォローアップは重要です。

まとめ

放射線治療は現代のがん治療において欠かせない選択肢の一つです。副作用への適切な対処、公的制度の活用による費用負担の軽減、食事の工夫などにより、治療を受けやすい環境が整えられています。治療の適応や方法については個別の状況により異なりますので、担当医とよく相談し、納得したうえで治療に臨むことが大切です。気になる症状がある場合や治療について詳しく知りたい場合には、専門の医療機関を受診されることをおすすめします。

この記事の監修医師

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