「暖房による乾燥」は身体にどんな影響を与える?対策についても解説!【医師監修】

暖房使用時の乾燥は、皮膚や粘膜のバリア機能を低下させ、感染症のリスクを高めるなど、健康面での影響が広範囲に及びます。目や喉、鼻といった部位に現れる具体的な症状を理解することで、適切な対策を講じることができます。本記事では、乾燥が引き起こす部位別の影響と、暖房病を予防するための基本的な対策について解説します。適切な室温設定や湿度管理、こまめな水分補給や換気の徹底といった生活習慣の工夫を取り入れることで、症状の発生を抑えることが期待できます。快適な冬を過ごすためのヒントをお届けします。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
暖房による乾燥が身体に与える影響
暖房使用時の乾燥は、暖房病の中でも多くの方が実感する症状です。乾燥は単に不快感をもたらすだけでなく、皮膚や粘膜のバリア機能を低下させ、感染症のリスクを高めるなど、健康面での影響が広範囲に及びます。
皮膚の乾燥とバリア機能の低下
暖房により室内の湿度が低下すると、皮膚の水分が失われやすくなります。健康な皮膚は、角質層に適度な水分を保持することで、外部からの刺激や病原体の侵入を防ぐバリア機能を維持しています。しかし、乾燥が進むと角質層の水分が減少し、皮膚表面にひび割れや粉吹きが生じます。
この状態ではバリア機能が低下し、刺激物質やアレルゲンが侵入しやすくなるため、かゆみや炎症が起こりやすくなります。もともと乾燥肌の方やアトピー性皮膚炎を持つ方は、暖房環境下で症状が悪化しやすい傾向があります。また、高齢の方は皮脂分泌が少ないため、乾燥の影響を受けやすいとされています。適切な保湿ケアと湿度管理により、これらの症状は軽減することが期待できます。
粘膜の乾燥と感染症リスクの増加
鼻やのどの粘膜は、外部から侵入する病原体を捕捉し、排除する役割を担っています。粘膜表面は常に適度な湿り気を保つことで、この防御機能を維持しています。しかし、暖房による乾燥で湿度が低下すると、粘膜の水分が失われ、線毛運動が低下します。
線毛は、粘膜表面に付着した異物や病原体を体外へ排出する働きを持っていますが、乾燥により機能が鈍ると、ウイルスや細菌が体内に侵入しやすくなります。冬季に風邪やインフルエンザが流行しやすい背景には、暖房による室内乾燥が一因として指摘されています。適切な湿度管理により、粘膜のバリア機能を保つことが感染症予防につながります。ただし、過度な加湿は別の健康リスクを招く可能性があるため、適切な範囲での管理が重要です。
乾燥が引き起こす具体的な症状と部位別の影響
暖房による乾燥は、身体のさまざまな部位に影響を及ぼし、多様な症状を引き起こします。目、のど、鼻、唇、皮膚といった外気に直接触れる部位は、乾燥の影響を受けやすい傾向があります。それぞれの部位で生じる症状を理解することで、適切な対策を講じることができます。
目の乾燥とドライアイ症状
暖房環境下では、目の表面を覆う涙液が蒸発しやすくなり、ドライアイ症状が現れることがあります。涙液は、角膜を保護し、酸素や栄養を供給する重要な役割を担っています。乾燥により涙液が不足すると、目の表面に傷がつきやすくなり、異物感や痛み、充血といった症状が生じます。
また、視界がかすんだり、まばたきの回数が増えたりすることもあります。パソコンやスマートフォンの使用中は、まばたきの回数が減少するため、涙液の分泌が追いつかず、ドライアイが悪化しやすくなります。暖房使用時には、定期的に目を休める、加湿器を使用する、人工涙液を点眼するといった対策が有効です。ただし、症状が持続する場合や悪化する場合には、眼科への相談をおすすめします。
のどや鼻の乾燥と呼吸器への影響
暖房による乾燥は、のどや鼻の粘膜にも大きな影響を与えます。のどの粘膜が乾燥すると、イガイガ感や痛み、違和感が生じ、咳が出やすくなります。また、鼻の粘膜が乾燥すると、鼻づまりや鼻血が起こりやすくなります。
粘膜の乾燥が長期化すると、炎症が慢性化し、副鼻腔炎や咽頭炎といった疾患につながることもあります。さらに、乾燥により粘膜のバリア機能が低下すると、ウイルスや細菌が気道に侵入しやすくなり、気管支炎や肺炎のリスクも高まります。呼吸器疾患を持つ方や喫煙習慣のある方は、暖房による乾燥の影響を受けやすいため、注意が必要です。適切な湿度管理と水分補給により、これらの症状は改善が期待できます。
暖房病を予防するための基本的な対策
暖房病を予防するには、室内環境の管理と生活習慣の見直しが重要です。適切な室温設定、湿度管理、換気の徹底といった基本的な対策を日常的に実践することで、症状の発生を大幅に抑えることが期待できます。
適切な室温設定と温度管理
暖房病を予防する第一歩は、適切な室温設定です。一般的に、快適とされる室温は18度から22度程度とされています。室温が高すぎると身体が過度に温まり、血管拡張や発汗が過剰になるため、倦怠感や頭痛が生じやすくなります。
また、室内外の温度差が大きくなると、自律神経への負担が増します。室内外の温度差が大きすぎると自律神経に負担がかかります。外出時は厚着で調節し、室内では20度前後を目安に、体が急激な変化を感じない工夫が重要です。暖房器具のサーモスタット機能を活用し、一定の温度を保つように設定することで、過度な温度上昇を防げます。また、部屋全体を均一に温めるよう、暖房器具の配置やサーキュレーターの使用を工夫することも有効です。就寝時には、室温を少し低めに設定し、布団や毛布で調整することで、快適な睡眠環境を整えられます。ただし、快適と感じる温度には個人差があるため、体調に合わせて調整することが大切です。
湿度管理と加湿の重要性
暖房使用時の湿度管理は、乾燥による症状を防ぐための重要な対策です。適切な室内湿度は40パーセントから60パーセントとされており、この範囲を保つことで、皮膚や粘膜のバリア機能を維持できます。加湿器を使用する場合は、スチーム式、気化式、超音波式など、さまざまなタイプがありますが、部屋の広さや用途に応じて選ぶことが大切です。
加湿器がない場合でも、濡れたタオルを室内に干す、観葉植物を置く、洗濯物を室内干しするといった方法で、ある程度の加湿効果が得られます。ただし、過度な加湿はカビやダニの発生を招くため、湿度計を使用して管理することが推奨されます。就寝中は加湿器を稼働させることで、のどや鼻の乾燥を防ぎ、快適な睡眠が得られます。ただし、加湿器の清潔な管理も重要であり、定期的な清掃を心がけることが必要です。
暖房病対策のための生活習慣の改善
室内環境の管理に加えて、日常の生活習慣を見直すことも、暖房病予防には欠かせません。水分補給、適度な運動、休憩の取り方といった基本的な習慣を意識することで、暖房による身体への負担を軽減できます。
こまめな水分補給と食事の工夫
暖房環境下では、気づかないうちに水分が失われているため、こまめな水分補給が重要です。水や白湯、カフェインの少ないお茶などが適しています。カフェインやアルコールは利尿作用があるため、過度な摂取は避けた方がよいでしょう。
また、食事からも水分を補給できます。みそ汁やスープ、鍋料理といった汁物を取り入れることで、効率的に水分を摂取できます。さらに、果物や野菜など、水分を多く含む食材を積極的に摂ることも有効です。冬が旬の大根や白菜、みかんなどは、水分補給と栄養補給の両方に役立ちます。ただし、水分摂取量は個人の体調や基礎疾患によって調整する必要があるため、気になる場合は医師に相談することをおすすめします。
換気の徹底と空気の入れ替え
暖房使用時の換気は、室内空気質を保つために必須です。1時間に1回、5分から10分程度の換気を行うことで、酸素濃度を回復し、二酸化炭素や有害物質を排出できます。換気の際は、対角線上にある窓を開けることで、効率的に空気を入れ替えられます。
窓を全開にする必要はなく、10センチから15センチ程度開けるだけでも十分な効果が得られます。寒さが気になる場合は、暖房を一時的に強めに設定しておくことで、換気後も室温の低下を最小限に抑えられます。また、換気扇や24時間換気システムを活用することも有効です。燃焼型の暖房器具を使用する場合は、定期的な換気が安全面からも不可欠です。ただし、換気の方法や頻度は、住環境や気象条件によって調整する必要があります。
まとめ
暖房病は、冬季の暖房使用に伴って生じる健康障害の総称であり、頭痛や倦怠感、乾燥といったさまざまな症状を引き起こします。その原因は、室内外の温度差、湿度の低下、換気不足、水分摂取不足など、複数の要因が複合的に作用することにあります。適切な室温設定、湿度管理、こまめな換気、十分な水分補給といった基本的な対策を日常的に実践することで、暖房病の多くは予防することが期待できます。症状が持続する場合や、日常生活に支障をきたす場合には、内科や耳鼻咽喉科、皮膚科などの専門医療機関への相談をおすすめします。快適な冬を過ごすために、暖房との適切な付き合い方を見直してみてはいかがでしょうか。