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「薬用アルコール」が使用されていた「循環器疾患」はご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2026/01/17
薬用アルコールが使用されていた具体的な疾患と治療法

医療の発展途上では、アルコールは循環器疾患や消化器症状など、幅広い症状の治療に用いられていました。当時の医学的背景や治療目的を振り返ることで、なぜアルコールが選択されていたのか、そして現在使われなくなった理由が見えてきます。

沖 一匡

監修医師
沖 一匡(医師)

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【略歴】
2007年3月 琉球大学医学部医学科 卒業
2007年4月 沖縄県立北部病院 初期研修医
2009年4月 湘南鎌倉外科グループ所属 外科レジデント
2010年8月 相澤病院 外科
2013年4月 高山赤十字病院 救急・麻酔科・外科
2014年4月〜9月 北部ウガンダ医療支援事業 参加 アンボロソリ記念病院
2016年4月 千葉徳洲会病院 外科
2017年4月 北総白井病院 救急・麻酔科
西山救急クリニック 総合診療
あまが台ファミリークリニック 総合診療
(※ あまが台ファミリークリニックは2020年から)
2020年11月 やちよ総合診療クリニック(千葉県八千代市) 院長

【専門・資格・所属】
主な診療科 総合診療科、救急科、麻酔科、外科

日本外科学会 外科専門医
日本救急医学会 救急専門医
麻酔科標榜医
日本外傷診療研究機構 JATEC インストラクター
日本医師会 認定産業医
認知症予防学会 認知症予防専門医
認知症サポート医
健康スポーツ医

薬用アルコールが使用されていた具体的な疾患と治療法

かつての医療現場では、アルコールがさまざまな疾患の治療に用いられていました。その使用方法と当時の医学的背景を知ることは、医療の進歩を理解するうえで有益な手がかりとなります。

循環器系疾患への応用とその背景

20世紀前半まで、心不全や狭心症などの循環器疾患に対して、アルコールが処方されることがありました。アルコールには末梢血管を拡張させる作用があり、一時的に血流を改善する効果が認められたためです。心臓の負担を軽減する目的で、少量の蒸留酒やアルコール製剤が医師から処方されるケースも見られました。当時は、現在のような多様な循環器治療薬が存在しなかったため、このような方法が選択されていたのです。

しかし、この効果は一時的なものであり、継続的な使用は心筋への悪影響や依存症のリスクを伴います。アルコールによる血管拡張は体温低下を招き、特に寒冷環境下では心臓にさらなる負担をかける可能性があり(心筋梗塞や不整脈のリスクを増大させる要因となり得る)、危険な状態を引き起こす可能性も指摘されています。現代では、循環器疾患に対してはより安全で効果的な医薬品が開発されており、治療目的でのアルコール使用は行われていません。

消化器症状や栄養補給としての役割

食欲不振や消化不良に対して、食前にアルコール飲料を少量摂取する習慣が医療的に推奨されていた時期もありました。アルコールには胃液分泌を促進する作用があり、食欲を増進させる効果が期待されていたのです。また、高カロリーであることから、栄養不良の患者さんへのエネルギー補給手段としても用いられました。特に、戦時中や食糧不足の時代には、このような使用法が広まっていた背景があります。

しかし、アルコールは胃粘膜を刺激し、慢性的な摂取は胃炎や胃潰瘍のリスクを高めることが明らかになっています。栄養補給としても、アルコールのカロリーは、エネルギーはあっても体に必須の栄養素(ビタミンやミネラルなど)を含まないことから、空のカロリーと呼ばれ、栄養学的に推奨される方法ではありません。現代の医療では、消化器症状に対しては適切な薬物療法や栄養指導が行われ、アルコールを治療手段として用いることはほとんどありません。

栄養不良に対しても、栄養バランスの取れた食事や栄養補助食品、必要に応じて経静脈栄養などの方法が選択されます。医療の進歩により、患者さんの状態に応じた個別化された治療が可能になっているのです。

まとめ

医療用アルコールは、消毒・殺菌という重要な役割を担う一方で、適切な使用と管理が求められる物質です。歴史的には薬として用いられた時期もありましたが、現代医療では主に外用として活用されています。迅速な殺菌効果と使用の簡便性は大きなメリットですが、皮膚への影響や引火性などのデメリットも存在します。医療現場では、これらの特性を理解し、標準化された手順に従って安全に使用されています。患者さん自身も、アルコール使用の意義とリスクを理解し、皮膚トラブルやアレルギーがある場合には医療スタッフに相談することが重要です。適切な知識と対応により、安全で効果的な医療を受けることができます。

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