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1日のアルコール摂取量が何g以上になると「食道がん」の発症リスクが上がる?

 公開日:2026/01/22
お酒と食道がんの関係とは?飲酒習慣がもたらすリスクと予防策

お酒を飲む習慣がある方にとって、アルコールと食道がんの関係は気になるテーマではないでしょうか。アルコールは食道の粘膜に直接ダメージを与え、発がんリスクを高めることが知られています。本記事では、飲酒量と食道がんの関係や、お酒に弱い体質の方が注意すべきポイント、さらにたばことの組み合わせによる相乗効果について解説します。適切な飲酒習慣と禁煙への取り組みが、将来の健康を守る第一歩となるでしょう。

齋藤 宏章

監修医師
齋藤 宏章(医師)

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相馬中央病院 内科、内視鏡センター 医師
福島県立医科大学放射線健康管理学講座 博士研究員
【専門・資格】
消化器内科、内視鏡
消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓内科専門医、カプセル内視鏡認定医

お酒の飲用と食道がん発症の関連性

お酒の摂取は、食道がんの発症リスクを高める重要な要因の一つです。アルコールがどのように食道に影響を与えるのか、そのメカニズムを理解することが予防につながります。飲酒習慣がある方は、リスクと飲酒量の関係について正しい知識を持つことが大切です。

アルコールが食道粘膜に与えるダメージ

アルコールは食道の粘膜に直接的なダメージを与えます。飲酒すると、アルコールは口から食道を通って胃へと流れていきますが、その過程で食道の粘膜に接触します。
アルコールは粘膜を刺激し、炎症を引き起こします。とくに高濃度のアルコールは刺激が強く、粘膜の細胞にダメージを与えやすくなります。繰り返しの刺激により、粘膜の細胞が傷つき、修復される過程でDNAの変異が起こりやすくなるといわれています。このDNAの変異が積み重なることで、がん細胞が生まれる可能性が高まります。
また、アルコールは体内で分解される際にアセトアルデヒドという物質に変わります。このアセトアルデヒドは、発がん性を持つ物質として知られており、食道の細胞に対して毒性を示します。アセトアルデヒドが食道の粘膜に長く留まると、細胞のDNAを傷つけ、がんの発生リスクを高めるのです。
日本人を含むアジア系の人々の一部には、アセトアルデヒドを分解する酵素の働きが弱い体質の方がいます。このような体質の方は、お酒を飲むと顔が赤くなりやすく、少量のアルコールでも体内にアセトアルデヒドが蓄積しやすいため、食道がんのリスクが高まることが報告されています。

飲酒量と食道がんリスクの関係

研究によれば、1日当たりの純アルコール摂取量が20g(日本酒約1合)以上になると、食道がんのリスクは顕著に上昇するといわれています。特に、アルコール分解能力が低い体質の方が飲酒を続けると、リスクは飲まない方と比べて数十倍に達するという報告もあります。
飲酒の期間も重要な要素です。若い頃から長期間にわたって飲酒を続けてきた方は、累積的なダメージが蓄積しているため、リスクが高くなります。反対に、飲酒をやめることでリスクは徐々に低下していくことも示されています。禁酒後、数年から十数年かけてリスクは減少していくため、生活習慣を見直すことには大きな意味があるといえるでしょう。
また、飲酒の種類によってもリスクに違いがあります。とくに度数の高い蒸留酒(焼酎やウイスキーなど)を頻繁に飲む場合、食道への刺激が強くなるため、リスクが高まる傾向があります。一方で、ビールやワインといった醸造酒であっても、大量に飲めば同様のリスクが生じます。

飲酒習慣の見直しと実践的な対策

食道がんのリスクを減らすためには、飲酒習慣を見直し、適切な対策を講じることが重要です。適量飲酒の目安を理解し、自分の体質に合った飲酒スタイルを見つけることが、予防の第一歩となります。

適度な飲酒の目安と守り方

適度な飲酒とは、健康への悪影響を最小限に抑えながら楽しめる飲酒量のことです。厚生労働省が示す指針では、1日当たりの純アルコール摂取量を20g程度までとすることが推奨されています。これは、ビールなら中瓶1本(500ml)、日本酒なら1合(180ml)、ワインならグラス2杯弱に相当します。お酒を飲むと赤ら顔になる方、女性や高齢の方は、少ない量が適切とされています。
適量を守るためには、まず自分の飲酒量を正確に把握することが第一歩です。つい飲み過ぎてしまう方は、あらかじめその日に飲む量を決めておく、小さめのグラスを使う、ゆっくりと時間をかけて飲むといった工夫が役立ちます。また、週に2日程度は休肝日を設け、肝臓や身体を休ませることも大切です。
外食や飲み会では、周囲のペースに流されて飲み過ぎてしまうこともあります。そのような場合には、ノンアルコール飲料を選択肢に入れる、水やお茶を合間に飲むといった対策が有効でしょう。

アルコール体質と個別のリスク評価

アルコールの代謝能力には個人差があり、体質によって食道がんのリスクが大きく異なります。とくに、アセトアルデヒドを分解する酵素(ALDH2)の働きが弱い体質の方は、注意が必要です。
日本人の約40パーセントは、アルコール分解酵素(ALDH2)の働きが生まれつき弱い、または欠損しているタイプに該当し、食道がんリスクが高いことがわかっています。お酒を飲むとすぐに顔が赤くなる、少量でも気分が悪くなる、動悸がするといった症状が現れる方は、このタイプの可能性が高いでしょう。こうした方は、アセトアルデヒドが体内に蓄積しやすいため、飲酒による食道がんのリスクが高くなります。
自分の体質を知るためには、遺伝子検査を受けることも可能です。医療機関や検査キットを利用して、ALDH2の遺伝子型を調べることができます。体質がわかれば、自分に合った飲酒量や頻度を判断しやすくなるでしょう。
体質的にお酒に弱い方は、無理に飲酒を続けることは避けるべきです。社交の場であっても、自分の健康を守るために適切に断る勇気が必要です。近年では、ノンアルコール飲料の種類も豊富になっており、お酒を飲まなくても楽しめる選択肢が増えています。

たばことの組み合わせがもたらす相乗効果

たばこと飲酒を両方続けている場合、食道がんのリスクはさらに大きく跳ね上がります。それぞれが単独でリスクを高めるだけでなく、組み合わさることで相乗的に影響が強まるのです。喫煙と飲酒の両方を続けることの危険性を理解し、予防に取り組むことが重要になります。

喫煙による発がん性物質の影響

たばこには多くの発がん性物質が含まれており、これらが食道の粘膜に深刻なダメージを与えます。たばこの煙には、ニコチンやタール、ベンゾピレンなど、70種類以上の発がん性物質が含まれているといわれています。
喫煙すると、これらの物質が口から喉、食道を経由して体内に取り込まれます。煙が食道を通過する際、粘膜に直接触れ、細胞のDNAを傷つけます。このダメージが繰り返されることで、細胞が異常な増殖を始め、やがてがん化していきます。
また、たばこに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血流を悪化させます。血流が悪くなると、食道の粘膜に十分な酸素や栄養が届かなくなり、細胞の修復機能が低下します。その結果、傷ついた細胞が正常に修復されず、がんが発生しやすい環境が整ってしまうのです。
喫煙は食道がんだけでなく、肺がんや喉頭がん、膀胱がんなど、多くのがんのリスクを高めることが知られています。食道がんに関しても、喫煙者は非喫煙者と比べて数倍のリスクを抱えているとされています。

飲酒と喫煙が重なるとリスクが何倍にもなる仕組み

飲酒と喫煙を同時に行うと、それぞれが単独で引き起こすリスクを足し合わせた以上の影響が生じます。これを相乗効果と呼びます。
アルコールは、たばこに含まれる発がん性物質の吸収を促進する作用があります。飲酒により食道の粘膜が刺激されて傷つくと、粘膜のバリア機能が低下します。その状態でたばこを吸うと、発がん性物質がより深く粘膜に浸透しやすくなるのです。
また、アルコールとたばこの両方が体内で代謝される過程で、有害物質が生成され、これがさらに細胞にダメージを与えます。アセトアルデヒドとたばこの発がん性物質が同時に作用することで、DNAの損傷が増幅され、がん化のリスクが飛躍的に高まります。
実際の研究データでは、飲酒も喫煙もしない方を基準とすると、飲酒だけを続けている方は数倍、喫煙だけを続けている方も数倍のリスクを持つとされています。しかし、両方を続けている方のリスクは、それぞれを単純に足し合わせたものよりもはるかに高く、数十倍に達することもあると報告されています。このことからも、飲酒と喫煙を同時に続けることの危険性は明らかです。

たばこをやめることの効果と方法

喫煙は食道がんの強力なリスク因子ですが、禁煙することで確実にリスクを減らすことができます。禁煙は何歳から始めても遅すぎることはなく、開始した時点から身体に良い変化が現れます。

禁煙後のリスク低下の時間経過

禁煙を始めると、身体は徐々に回復していきます。食道がんのリスクも、時間とともに低下していくことがわかっています。
禁煙してから数年が経過すると、食道の粘膜が修復され、細胞のダメージが軽減されていきます。研究によれば、禁煙後5年から10年でリスクは大幅に低下し、さらに長期間禁煙を続けることで、喫煙したことがない方に近いレベルまでリスクが減少するといわれています。
ただし、長年にわたって喫煙を続けてきた方の場合、蓄積されたダメージが残っているため、リスクが完全にゼロになるわけではありません。それでも、禁煙を続けることで確実にリスクは下がっていくため、何歳であっても禁煙を始める意義は大きいといえます。
また、禁煙は食道がん以外の健康面にも多くの恩恵をもたらします。肺機能の改善、心血管疾患のリスク低下、肌や歯の状態の改善など、全身にわたって良い影響が現れます。禁煙は、今からでも始められる効果的な健康対策の一つなのです。

禁煙を成功させるためのサポート

禁煙は意志の力だけで達成するのが難しいこともあります。医療機関や禁煙補助製品を活用することで、成功率を高めることができます。
禁煙外来では、医師や看護師の指導のもと、計画的に禁煙を進めることができます。ニコチン依存症の程度を評価し、個々の状況に合わせた治療計画が立てられます。ニコチンパッチやニコチンガムといった禁煙補助薬を使用することで、離脱症状を和らげながら無理なく禁煙を進められます。
また、飲み薬による治療も選択肢の一つです。バレニクリンという薬は、ニコチン受容体に作用し、たばこを吸いたいという欲求を抑える効果があります。医師の処方が必要ですが、高い禁煙成功率が報告されています。
禁煙外来での治療は、一定の条件を満たせば保険適用となり、たばこを買い続ける費用と比べても経済的です。医師に相談して、禁煙を成功させるためのサポートを受けましょう。自己負担額は数千円から2万円程度で、たばこを買い続ける費用と比べても経済的といえるでしょう。医療機関でのサポートを受けることは、禁煙を成功させるための有力な選択肢です。

まとめ

食道がんは初期症状が乏しく、飲み込みにくさや胸の痛み、声のかすれが出る頃には進行していることがあります。そのため、気になる症状があれば早めの受診が重要です。

お酒とたばこは食道がんの強力なリスク因子であり、とくに両方を続けている場合は発症リスクを大きく高めます。禁酒・禁煙に加え、バランスの良い食事や適度な運動、適正体重の維持などの生活習慣改善は予防に役立ちます。

リスクの高い方は、定期的な内視鏡検査で早期発見に努めることが大切です。正しい知識を持ち、日々の生活の中で実践できる予防策に取り組むことで、食道がんから身を守りましょう。

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