喉の渇き・体重減少は末期?「HbA1c」10%超えで始まる「血管ボロボロ」の恐怖

HbA1cが9〜10%以上という高値は、早急な医療介入が必要な状態です。急性合併症や慢性合併症のリスクが大きく高まり、生活の質に深刻な影響を及ぼす可能性があります。この記事では、HbA1c高値による具体的なリスク、薬物療法や入院治療など必要な医療的対応について解説します。適切なタイミングで治療を受けることが、今後の健康を守る重要な選択となるでしょう。

監修医師:
谷本 哲也(ナビタスクリニック川崎)
1972年、石川県生まれ。鳥取県育ち。1997年、九州大学医学部卒業。医療法人社団鉄医会ナビタスクリニック理事長・社会福祉法人尚徳福祉会理事・NPO法人医療ガバナンス研究所研究員。診療業務のほか、『ニューイングランド・ジャーナル(NEJM)』や『ランセット』、『アメリカ医師会雑誌(JAMA)』などでの発表にも取り組む。
【資格】
日本内科学会認定総合内科専門医・日本血液学会認定血液専門医・指導医
目次 -INDEX-
HbA1cが9〜10以上など高値の場合の深刻性
HbA1cが9〜10%以上という高値は、血糖コントロールが慢性的に著しく不良であることを示し、早急な医療介入が必要な状態です。この数値は合併症のリスクが非常に高まっている可能性があります。
急性合併症のリスク
HbA1cが高い状態で、血糖がさらに上昇する状態に陥ると、糖尿病ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群といった急性合併症のリスクが高まります。ケトアシドーシスはインスリン不足により脂肪分解が進み、ケトン体が過剰に蓄積して血液が酸性に傾く状態で、悪心、嘔吐、腹痛、意識障害などが現れます。放置すると昏睡に至ることもあります。
高浸透圧高血糖症候群は高度の高血糖により重度の脱水が起こり、意識障害を引き起こす疾患で、高齢者に多いとされています。強い喉の渇き、頻尿、急激な体重減少、強い倦怠感、意識がぼんやりする、といった症状がある場合は早急な受診が必要です。
また、HbA1cが高い状態が続くと血液中の糖が多い影響で白血球(体を守る細胞)の働きや血流が弱まり、傷が治りにくくなって、感染症にかかりやすくなります。足の傷が悪化し壊疽に至ることもあり、日々の観察が重要です。歯周病や尿路感染症なども重症化しやすいため、異変に気づいたら早めの受診を行い適切な治療を受けましょう。
慢性合併症の進行速度
HbA1cが高い状態が続くと、慢性合併症が急速に進行する可能性があります。糖尿病性網膜症、腎症、神経障害などの細小血管障害は、血糖値が高いほど発症しやすく、進行も早まる傾向があります。網膜症では視力低下や失明のリスクが高まり、腎症では腎機能が低下して人工透析が必要になることもあります。
神経障害は手足のしびれや痛みだけでなく、自律神経の働きにも影響し、消化器症状や起立性低血圧、勃起障害を招くことがあります。また、大血管障害である心筋梗塞や脳梗塞のリスクも大きく上昇します。血糖が高い状態が続くと血管壁が傷つき、動脈硬化が進みやすくなるためです。
これらの合併症は元に戻すことが難しく、生活の質を大きく損なう可能性があります。しかし、適切な治療で血糖コントロールを改善すれば、進行を遅らせることは可能です。HbA1cの高値が続く方は速やかに専門医を受診し、治療を強化することが重要です。すでに合併症がある場合でも、血糖値の改善によってさらなる悪化を防げる可能性が高いため、諦めずに治療を続けることが大切です。
なお、糖尿病のある人は、肥満や慢性炎症、インスリン抵抗性(高インスリン血症)などを背景に、統計的にはいくつかのがん(例:肝・膵・大腸など)の発症リスクがやや高いことが知られています。血糖だけでなく体重管理・運動・禁煙・節酒を含む総合的な管理と、年齢に応じたがん検診を継続することが大切です。
HbA1c9〜10以上など高値の場合に必要な医療的対応
HbA1cが高値を示す場合、生活習慣の改善だけでは不十分であり、医療機関での専門的な治療が必要です。具体的な治療方法について説明します。
薬物療法の開始と調整
HbA1cの高値が続く場合、多くは経口血糖降下薬やインスリン注射による薬物療法が必要になります。経口薬には、インスリン分泌を促す薬や効きを高める薬、糖の吸収をゆるやかにする薬、尿中へ糖を排泄させる薬などがあり、患者さんの状態や合併症、生活スタイルに合わせて選択されます。複数の薬を併用し、血糖値の推移を見ながら種類や量が調整されることも一般的です。さらに最近ではGLP-1薬が注目されています。GLP-1は食事のあとに体から出てインスリンを出しやすくして血糖を下げ、胃の動きをゆっくりにして満腹感を続かせることで、血糖と体重の管理を助けるホルモンです。GLP-1薬は血糖だけでなく、体重を大幅に減少させる効果があることから、肥満治療薬として急速に普及している重要な薬となっています。
インスリン療法は、膵臓からの分泌が不足している場合や経口薬の効果が不十分な場合に導入されます。超速効型から持効型まで種類があり、食事や血糖パターンに合わせて使い分けられます。注射に抵抗を感じる方もいますが、現在は針が非常に細く痛みも軽減されています。適切に行えば血糖コントロールが大きく改善し、合併症の進行を抑えることが期待できます。
薬物療法開始後も、通院や検査で効果を確認し、必要に応じて治療内容を見直します。副作用や低血糖のリスクについても医師から説明を受け、対処法を理解しておくことが重要です。また、薬物療法は生活習慣の改善と併せて行うことで効果が高まるため、食事や運動療法を継続することが推奨されます。
入院治療が必要な場合
HbA1cが9〜10以上など高値で急性合併症が疑われる場合や、血糖値が300mg/dLを大きく超えるような高度高血糖では、入院下での集中的な治療が必要になることがあります。入院では血糖値を持続的にチェックしながら、インスリンの静脈投与などで速やかに血糖を安定させます。脱水や電解質異常があるときは輸液で補正を行い、体調の回復を図ります。
治療は医師や看護師だけでなく、管理栄養士や薬剤師を含む多職種チームで進められます。入院中には、食事療法や運動療法のポイント、薬の使い方、血糖自己測定の方法、低血糖時の対応など、退院後に必要な自己管理の知識と技術を身につけることができます。入院期間は1〜2週間程度が目安ですが、合併症の有無や血糖の改善状況などによって個人ごとで変わります。
入院治療は短期間で血糖を整え、合併症の進行を抑えるうえで非常に有効です。生活習慣を見直し、糖尿病と向き合うきっかけにもなります。退院後は外来通院を続け、入院中に学んだ管理法を実践し続けることが大切です。入院をためらう方もいますが、適切なタイミングで治療を受けることは今後の健康を守る重要な選択肢であり、医師から勧められた場合は前向きに検討しましょう。
まとめ
HbA1cは糖尿病管理の中心となる指標であり、基準値を把握し対策を進めることで合併症のリスクを減らすことが期待できます。食事では糖質の質と量を整え、飲み物も糖質の少ないものを選ぶことが基本です。運動は有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせ、無理なく続けることが重要です。
HbA1cが9〜10以上など高値の場合は、早めに専門医を受診し、薬物療法も含めた治療を速やかに始める必要があります。自覚症状が乏しくても放置せず、定期的な検査と医師の指導に沿った治療を続けることが、健康と生活の質を守る鍵となります。数値や体調に不安があるときは、早めの受診を検討してください。


