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ベジファーストはもう古い? 「HbA1c」を下げる“食べる順番”と運動法

 公開日:2026/01/20
HbA1cを下げる食事療法と運動方法|継続のコツも紹介

HbA1cを改善するには、食事療法と運動療法の組み合わせが効果的です。糖質の質と量の見直し、食べる順番の工夫、有酸素運動やレジスタンス運動の実践など、日常生活に取り入れやすい方法があります。この記事では、血糖コントロールに役立つ具体的な食事のポイントや運動の種類、無理なく続けるための工夫について解説します。生活習慣の改善は、着実な一歩から始められるでしょう。

谷本 哲也

監修医師
谷本 哲也(ナビタスクリニック川崎)

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【経歴】
1972年、石川県生まれ。鳥取県育ち。1997年、九州大学医学部卒業。医療法人社団鉄医会ナビタスクリニック理事長・社会福祉法人尚徳福祉会理事・NPO法人医療ガバナンス研究所研究員。診療業務のほか、『ニューイングランド・ジャーナル(NEJM)』や『ランセット』、『アメリカ医師会雑誌(JAMA)』などでの発表にも取り組む。
【資格】
日本内科学会認定総合内科専門医・日本血液学会認定血液専門医・指導医

HbA1cを下げるための食事療法

HbA1cを改善するうえで、食事療法は基本的かつ効果的な手段の一つです。血糖値の上昇を穏やかにし、適正体重を維持することで、インスリンの効きを良くする可能性があります。

糖質の質と量を見直す

食事によるHbA1c改善の中心は、糖質の質と量をコントロールすることです。白米、パン、麺類などの精製された糖質は血糖値を急激に上昇させやすい傾向があるため、玄米、全粒粉パン、蕎麦など食物繊維を多く含む未精製の糖質に置き換えることが推奨されます。

食物繊維は糖の吸収を緩やかにし、食後血糖値の急上昇を抑える働きがあるとされています。また、1回の食事で摂取する糖質の総量を減らすことも重要です。主食の量を通常の半分から2/3程度に減らし、その分を野菜やタンパク質でカバーすることで、満足感を保ちながら血糖値を改善できる可能性があります。

糖質を完全に制限する極端な方法は、長期的な継続が難しく、栄養バランスを崩すリスクもあるため、医師や管理栄養士の指導のもとで適切な量を設定することが大切です。間食についても、糖質の多い菓子類や清涼飲料水は避け、ナッツ類やチーズ、ヨーグルトなど血糖値への影響が少ない食品を選ぶようにしましょう。

食べる順番と食事のタイミング

食事内容だけでなく、食べる順番や食事のタイミングも血糖コントロールに影響を与える可能性があります。野菜や海藻、きのこ類などの食物繊維を多く含むおかずを先に食べ、次にタンパク質である肉や魚、その後に主食である炭水化物を摂る「ベジファースト」の食べ方は、食後血糖値の上昇を緩やかにする効果がある程度は期待できます。この方法は特別な食材を用意する必要がなく、日常的に実践しやすい点が利点です。また、よく噛んでゆっくり食べることで、満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防ぐ効果も期待できるでしょう。

食事のタイミングについては、1日3食を規則正しく摂ることが基本とされています。朝食を抜いたり、夕食が遅い時間になったりすると、血糖値の変動が大きくなりやすく、HbA1cの改善を妨げる要因となる可能性があります。夕食は就寝の3時間前までに済ませ、夜間の血糖値上昇を避けるようにしましょう。さらに、食事と食事の間隔が長い場合、次の食事で炭水化物を大量に短時間で摂ると血糖値が急上昇しやすくなるため、お腹が空いたからといってドカ食いしないことも重要です。なお、まだ研究段階ではありますが、カロリーの摂りすぎを防ぐため、あえて絶食の時間を長くとるファスティングも近年大きな注目を集めており、糖尿病のより適切な食事方法も今後新たな進展が期待されています。

食事療法における注意点と継続のコツ

食事療法は効果的ですが、誤った方法や極端な制限は逆効果になることがあります。長期的に継続するためには無理のない計画と工夫が必要です。

栄養バランスを崩さない工夫

HbA1cを下げることに意識が向くあまり、特定の栄養素を過度に制限したり、偏った食事になることは避けるべきです。糖質を控える際も、タンパク質やビタミン、ミネラルを十分に摂り、全体のバランスを保つことが重要です。特にタンパク質は筋肉量の維持に欠かせず、筋肉が減ると基礎代謝が低下し血糖コントロールが悪化する可能性があります。肉や魚、卵、大豆製品を毎食の中で適量取り入れ、野菜は1日350gを目標に、緑黄色野菜と淡色野菜をバランスよく摂取しましょう。

脂質も適度な量は必要で、オリーブオイルや魚の不飽和脂肪酸は動脈硬化予防に役立つとされています。カロリー制限を行う場合でも、極端に減らすと栄養不足や低血糖のリスクが高まるため、医師や管理栄養士と相談しながら適切なエネルギー量を設定することが望ましいです。また、高齢の方や制限の多い食事を続けている場合は、ビタミンB群やビタミンD、葉酸、鉄分、亜鉛、カルシウムが不足しやすくなります。血液検査で栄養状態を確認し、必要に応じてサプリメントの使用について医師と相談するといいでしょう。

継続可能な食習慣の確立

食事療法を長く続けるには、生活スタイルに合った無理のない方法を選ぶことが大切です。完璧を目指して強いストレスを感じるよりも、できることから少しずつ改善していく方が継続につながります。外食の多い人は、丼物や麺類の単品ではなく、野菜やタンパク質が含まれる定食を選ぶなど、日常の中で工夫を取り入れましょう。

家族の協力も心強い支えになります。同じ食事を共有することで負担感が減り、健康的な習慣を続けやすくなります。食事記録をつけることも有効で、食べたものと体調や血糖値の変化を記録することで、自分に合う食パターンが把握できます。スマートフォンのアプリを使えば、無理なく続けられるでしょう。近年では、24時間リアルタイムで血糖値を測定する持続血糖測定器を活用することも可能になっています。

定期的に管理栄養士の指導を受けると、生活に合わせた助言が得られ、モチベーションの維持にも役立ちます。また、特別な日や外食では過度に制限せず楽しむ柔軟さも必要です。その前後で調整すれば大きな影響は避けられます。完璧を求めすぎず、7割程度の達成を目指す姿勢が、無理なく長く続けるための大きなポイントです。

HbA1cを下げる飲み物の選び方

日常的に摂取する飲み物も、HbA1cに影響を与える重要な要素です。適切な飲み物を選ぶことで血糖コントロールをサポートできる可能性があります。

避けるべき飲み物と理由

清涼飲料水やスポーツドリンク、果汁100%ジュースは糖質が多く、血糖値を急激に上げやすい飲み物です。果汁100%ジュースは果糖が多いため、摂りすぎると血糖値を押し上げてしまいます。商品にもよりますが500mlのペットボトル1本には角砂糖10個分以上の糖質が含まれることもあり、液体の糖質は吸収が早いため、日常的な摂取は控える必要があります。
カフェオレやミルクティーなどの加糖飲料も注意が必要です。コーヒーショップで提供される甘い飲み物には、想像以上の糖質が含まれている場合があります。出来ればブラックコーヒーなど無糖のものを中心に選ぶとよいでしょう。
アルコールでは、ビールや日本酒、甘いカクテルが糖質を多く含みます。アルコールは肝臓の働きに影響して低血糖を招くこともあるため、飲む場合は適量を守り、必ず食事と一緒に摂ることが大切です。飲酒は多くても、純アルコール20g/日(ビール500mL程度;女性・高齢者は10g/日目安)までに抑え​、できるだけ飲まないようにするのが基本です。エナジードリンクや栄養ドリンクにも糖質が多いものがあるため成分表示を確認しましょう。ゼロカロリー飲料も過度に頼らずたまに飲む程度にとどめ、できる範囲で自然な飲み物に切り替えていく姿勢が望ましいといえます。

推奨される飲み物と効果

HbA1c改善に役立つ飲み物は、糖質を含まず血糖値に影響しにくいものです。水や無糖のお茶類が基本で、緑茶に含まれるカテキンは糖の吸収を穏やかにし、食後血糖値の上昇を抑える可能性があります。ウーロン茶、麦茶、ほうじ茶なども適しています。無糖のコーヒーも適度な摂取は糖尿病リスクを減らす可能性が示されています。ただし、カフェインの過剰摂取は睡眠や血圧に影響するため、1日2〜3杯程度が目安で、出来れば午前中に飲み、夕方以降は控えるのがおすすめです。
炭酸水も糖質を含まず満腹感が得られるため、間食の抑制に利用できます。牛乳や豆乳は栄養価が高いものの糖質やカロリーを含むため、量に気をつけて摂りましょう。特に調製豆乳には砂糖が加えられていることがあるため、無調整タイプが安心です。ハーブティーも糖質を含まず香りによるリラックス効果が期待できます。ただし、フレーバーティーには糖分が含まれる場合があるため、成分表示を確認することが大切です。飲み物も食事と同様に、1日の総摂取カロリーを意識して選ぶようにしましょう。

日常生活で取り入れやすい飲料習慣

飲み物の選び方を変えるだけでも、血糖コントロールに良い影響を与える可能性があります。日常生活の中で無理なく実践できる飲料習慣について具体的な工夫を紹介します。

水分補給の基本と工夫

1日に必要な水分量は体格や活動量で異なりますが、一般的には1.5〜2リットルが目安です。水分不足は血液の粘度を高め、血栓リスクを上げる可能性があるため、起床時や食事の前後、入浴前後などの決まったタイミングでこまめに水分をとる習慣をつけましょう。
水が飲みにくい場合は、レモンやライムを加えたり、ハーブティーで風味を変えると続けやすくなります。冷たい飲み物ばかりでなく常温や温かい飲み物も取り入れると胃腸への負担を軽減できます。外出時は水筒やペットボトルを持ち歩くことで、甘い飲料の購入を減らせ節約にもなります。
また自宅や職場には手の届く場所に水分を置いておくと、自然に摂取量を増やせます。運動時は発汗で水分とミネラルが失われるため、薄めたスポーツドリンクやミネラルウォーターに少量の塩分を加えたものが適しています。ただし、腎疾患や心疾患がある場合は摂取量が制限されることがあるため、主治医の指示を優先しましょう。季節や気温でも必要量は変わるため、体調に合わせて柔軟に調整することが大切です。

嗜好品としての楽しみ方

甘い飲み物を完全に我慢することがストレスになる場合は、無理なく楽しむ工夫も大切です。人工甘味料入りのゼロカロリー飲料は血糖値への影響が少なく、時々の楽しみとして取り入れることができます。ただし、長期的な影響については研究が続いているため、依存しすぎず自然な甘みに慣れるための一時的な摂取にとどめるという意識を持つといいでしょう。
紅茶やハーブティーは香りが強く、砂糖を加えなくても満足感が得られます。シナモンやバニラなどの香辛料を加えると甘みを使わずに風味を豊かにできます。また、特別な日には少量の甘い飲み物を楽しむこと自体が心の健康につながります。その場合は前後の食事で糖質を控えるなど、全体のバランスを調整しましょう。血糖管理は長期的に取り組むものなので、柔軟に続けられる方法が重要です。無理な制限は反動を招きやすいため、自分に合った工夫で飲料習慣を整えることが、長く続けるためのポイントです。飲み物の温度や器を変えるなどの小さな工夫も、新しい習慣づくりに役立ちます。

HbA1cを下げる効果的な運動方法

運動は食事療法と並んで、HbA1c改善の柱となる治療法の一つです。筋肉が糖を取り込む能力を高め、インスリンの効きを良くすることで、血糖コントロールが改善される可能性があります。糖尿病にかぎらず、認知症やがんの予防にも運動療法は非常に重要であり、高齢になっても心肺機能を高めるトレーニングは怪我にきをつけながら無理のない範囲で実施するとよいでしょう。

有酸素運動の効果と実践方法

有酸素運動は酸素を使って糖や脂肪をエネルギーに変える運動で、ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳などが代表的です。これらの運動は血糖値を下げる効果があり、運動後しばらくの間、血糖値の低下が持続するとされています。できれば週150分以上、毎日30分ほど行えるといいでしょう。ただし、調査ではこの目標を達成できている人は世界的にも少ないことが分かっています。まずは週30分だけでもやらないよりは効果が出るという研究もあるので、日常的に無理のない運動から習慣付けることが非常に重要です。

なかでもウォーキングは始めやすく、特別な道具も必要ありません。歩く速度は軽く息が弾み、会話できる程度のペースが目安です。階段を使う、通勤で一駅歩くなど、日常の中で活動量を増やす工夫も効果的です。また、日本で開発された日本式ウォーキングも有効です。息がきれるくらいの早歩きを3分、ゆっくり歩き3分を交互に繰り返す方法で、ご高齢の方でも無理なく続けられる方法として世界的に人気になっています。
水泳や水中ウォーキングは関節への負担が少なく、体重のある方や関節痛がある方にも適しています。運動を始める際は急に強度を上げず、軽めの運動から慣らしていくことが大切です。運動を始める前後には準備運動と整理運動を行いましょう。また、天候に左右されず続けるには、室内での運動も役立ちます。踏み台昇降やエアロビクス、オンラインのフィットネスプログラムなどが活用できます。さらに日本で開発されたHIIT(高強度間欠的トレーニング)も世界的に評価が高い方法です。20秒のきつめの筋肉トレーニング、10秒の休憩を交互に4分間繰り返し、1分休む5分を1セット、これを4セット反復する方法で、医学的にも高い有効性が証明されています。

レジスタンス運動と筋力維持

レジスタンス運動は、筋肉に負荷をかけて筋力を高める運動で、ダンベルやチューブを使った筋力トレーニング、スクワット、腕立て伏せなどが含まれます。筋肉量が増えると基礎代謝が上がり、安静時にも糖を消費しやすい身体になります。また、筋肉自体が糖を取り込む能力が高まるため、インスリン抵抗性の改善につながる可能性があります。

週に2〜3回、主要な筋肉群(脚、腰、胸、背中、腕)を鍛える運動を行うことが推奨されます。自宅で行う場合は、自重トレーニングから始めるといいでしょう。スクワットは大きな筋肉である太ももやお尻の筋肉を鍛えられ、効率的に代謝を高められます。これも上記のHIITという方法で行うとさらに効率的なトレーニング効果が期待できます。

腕立て伏せが難しい場合は、壁や机に手をついて行う方法もあります。負荷は、10〜15回繰り返せる程度が適切で、無理なく続けられる範囲で行います。高齢の方や体力に自信のない方は、理学療法士や運動指導士の指導を受けることで、適切かつ効果的に運動を行えます。

有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせることで、相乗効果が期待できます。例えば、週に3日は有酸素運動、2日はレジスタンス運動を行うなど、バランスよく取り入れましょう。

運動療法を継続に続けるための注意点

運動はHbA1c改善に有効ですが、誤った方法や過度な運動は逆効果やケガの原因となります。運動を継続し、効果を引き出すための注意点を説明します。

低血糖への対策

糖尿病治療薬を使用している場合、運動によって血糖値が下がり過ぎる低血糖のリスクがあります。特にインスリンやSU薬(スルホニル尿素薬)などの血糖降下薬を使っている方は注意が必要です。運動前に血糖値を測定し、70mg/dL未満であれば軽い糖質を摂ってから始めましょう。
運動中や運動後に冷や汗、手の震え、動悸、強い空腹感、脱力感などが現れたら低血糖の可能性があります。このような症状を感じた場合はすぐに運動を中止し、ブドウ糖や糖分を含む飲料を摂取しましょう。運動時には糖分を必ず携帯し、いつでも補給できるようにしておくことが大切です。

運動のタイミングも重要で、食後1〜2時間は血糖値が比較的高いため、この時間帯に運動すると安全かつ効果的です。空腹時や就寝前の運動は低血糖になりやすいので避けましょう。薬の種類や量に応じて適切な運動量や時間帯は異なるため、主治医に相談しながら調整することが必要です。また、血糖自己測定器で運動前後の血糖値を記録すると、自分の身体の反応が把握しやすくなります。運動を始めたばかりの時期や、薬の変更時には特に注意して変動を観察しましょう。

合併症がある場合の運動制限

糖尿病の合併症がある場合は、運動の種類や強度に注意が必要です。糖尿病性網膜症が進行している方では、激しい運動や強い負荷が眼底出血のリスクを高める可能性があるため、軽めの運動にとどめることが重要です。腎症がある場合も、過度な運動は腎機能を悪化させることがあるため、医師の指導のもとで適切な強度を設定しましょう。
神経障害のある方は足の感覚が鈍く、傷に気づきにくいため、運動前後の足の確認と靴選びが欠かせません。心臓や血管に病気がある場合は、運動負荷試験で安全な運動強度を把握してから開始することが推奨されます。整形外科的な問題がある方も、関節や筋肉に負担の少ない運動を選ぶ必要があります。運動を始める前には必ず主治医に相談し、無理をせず、自分の身体の変化に注意しながら継続できる運動習慣を築くことが、長期的な健康維持につながります。

まとめ

HbA1cは糖尿病管理の中心となる指標であり、基準値を把握し対策を進めることで合併症のリスクを減らすことが期待できます。食事では糖質の質と量を整え、飲み物も糖質の少ないものを選ぶことが基本です。運動は有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせ、無理なく続けることが重要です。

HbA1cが9〜10以上など高値の場合は、早めに専門医を受診し、薬物療法も含めた治療を速やかに始める必要があります。自覚症状が乏しくても放置せず、定期的な検査と医師の指導に沿った治療を続けることが、健康と生活の質を守る鍵となります。数値や体調に不安があるときは、早めの受診を検討してください。

この記事の監修医師