健診結果の「HbA1c」の基準値は? 自覚症状なしで進む“糖尿病”リスクとは

HbA1cは過去1〜2ヶ月の血糖状態を反映する重要な指標です。日本糖尿病学会では4.6〜6.2%を正常値としていますが、6.0〜6.4%は「境界型」として注意が必要な範囲とされています。この記事では、HbA1cの基準値や糖尿病診断の基準、年齢や健康状態による目標値の違いについて詳しく解説します。適切な数値を理解することが、健康管理の第一歩となるでしょう。

監修医師:
谷本 哲也(ナビタスクリニック川崎)
1972年、石川県生まれ。鳥取県育ち。1997年、九州大学医学部卒業。医療法人社団鉄医会ナビタスクリニック理事長・社会福祉法人尚徳福祉会理事・NPO法人医療ガバナンス研究所研究員。診療業務のほか、『ニューイングランド・ジャーナル(NEJM)』や『ランセット』、『アメリカ医師会雑誌(JAMA)』などでの発表にも取り組む。
【資格】
日本内科学会認定総合内科専門医・日本血液学会認定血液専門医・指導医
HbA1cの基準値とは何か
HbA1cは血液中のヘモグロビンに糖が結合した割合を示す値であり、通常は過去1〜2ヶ月間の平均的な血糖状態を反映します。基準値を正しく理解することは、適切な健康管理の第一歩となります。早期の糖尿病は自覚症状がほとんどないため、定期的な検査によって早期に把握することが重要で、中でもHbA1cの数値が特に重要視されています。HbA1cは空腹時血糖値とは異なり、食事の影響を受けにくく、採血のタイミングを選ばない利点があります。そのため、日常的な血糖管理の実態をより正確に反映する指標として、医療現場で広く活用されています。
正常値と糖尿病診断の基準
日本糖尿病学会の基準では、HbA1cの正常値は4.6〜6.2%としています。この範囲であれば、過去1〜2ヶ月間の血糖状態が概ね良好であると判断されます。ただし、特定健診では5.6%が指導対象の目安となり、正常範囲でも以前より上昇傾向の場合は要注意です。一方、6.5%以上になると糖尿病型と判定される所見の一つとなり、ほかの検査結果や症状と合わせて糖尿病の診断が行われることがあります。
6.0〜6.4%の範囲は「正常高値」または「境界型」と呼ばれ、糖尿病予備群として注意が必要な状態です。この範囲は将来糖尿病に進展するリスクが高く、早めの生活改善が推奨され、場合によっては追加検査も実施されます。
なお、通常は%はNGSPという基準が使われます。また、貧血など持病の種類によっては注意を要する場合もあるので、ご自分の数値の解釈については担当医と相談していただくのがよいでしょう。
年齢や状態による目標値の違い
HbA1cの目標値は、年齢や合併症の有無、治療方針によって個別に設定されます。若年で合併症のない糖尿病患者さんの場合、7.0%未満を目標とすることが一般的です。高齢の方や重篤な合併症をお持ちの方、低血糖のリスクが高い方では、8.0%未満など緩やかな目標が設定されることもあります。すなわち、正常化を目指す場合は6.0%未満、合併症予防としては7.0%未満、コントロール強化が難しい場合は8.0%未満といった、個々人の年齢や持病、生活様式などの状態に応じた細かい個別の調整が肝要になります。
これは厳格な血糖管理が低血糖による転倒や意識障害を招くリスクを高める可能性があるためです。妊娠中の女性では、胎児への影響を考慮するため、より厳格な管理が求められ、目標値は6.0〜6.5%程度に設定されることがあります。また、糖尿病の発症予防を目指す方では、5.6%未満を維持することが理想とされています。
HbA1c基準値を超えた場合のリスク
HbA1cが基準値を超えた状態が続くと、全身の血管や神経に悪影響が及び、さまざまな合併症のリスクが高まる可能性があります。ここでは具体的なリスクとその進行メカニズムについて説明します。
細小血管障害と大血管障害
HbA1cが高い状態が続くと、細小血管障害と大血管障害という2つのタイプの血管合併症が進行する可能性があります。細小血管障害は、毛細血管など細い血管が障害される状態で、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害の3大合併症を引き起こすといわれています。
網膜症は視力低下や失明の原因となる可能性があり、腎症は進行すると人工透析が必要になることがあります。神経障害は手足のしびれや痛み、感覚の鈍化をもたらし、足の潰瘍や壊疽につながるケースも報告されています。大血管障害は、心臓や脳、下肢の太い血管が動脈硬化によって狭窄したり閉塞したりする状態です。心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの重篤な疾患を引き起こし、生命に直結するリスクとなります。
自覚症状の乏しさと進行の危険性
HbA1cが高くても、初期には自覚症状がほとんど現れないことが大きな問題です。喉の渇きや多尿、体重減少といった典型的な症状が出るのは血糖値がかなり上昇してからで、その段階ではすでに合併症が進んでいる可能性があります。症状が乏しいため健診の異常を軽視し、受診を遅らせてしまうケースも少なくありませんが、初期の血管や神経の障害は自覚がないまま進行します。
特に糖尿病性腎症は初期には自覚症状がなく、尿検査で微量タンパクが検出される程度で進行するため、発見が遅れると慢性腎不全が進行した状態となり、最終的に人工透析が必要になることもあります。神経障害による足の感覚低下では、小さな傷に気づかず蜂窩織炎といった感染症や壊疽を起こし足の切断に至るなどの危険が高まります。無症状の期間こそ管理が重要であり、定期的な検査と医師の指導に基づく治療の継続が、将来的な生活の質を守る鍵となります。
まとめ
HbA1cは糖尿病管理の中心となる指標であり、基準値を把握し対策を進めることで合併症のリスクを減らすことが期待できます。食事では糖質の質と量を整え、飲み物も糖質の少ないものを選ぶことが基本です。運動は有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせ、無理なく続けることが重要です。
HbA1cが9〜10以上など高値の場合は、早めに専門医を受診し、薬物療法も含めた治療を速やかに始める必要があります。自覚症状が乏しくても放置せず、定期的な検査と医師の指導に沿った治療を続けることが、健康と生活の質を守る鍵となります。数値や体調に不安があるときは、早めの受診を検討してください。


