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覚醒剤依存は慢性的な“脳疾患” 数年単位で取り戻す社会復帰の方法とは

 公開日:2025/12/25
覚醒剤依存症の治療法—専門的な医療介入とリハビリテーション

覚醒剤依存症は慢性的な脳の疾患として捉えられており、回復には専門的な医療機関での治療と長期的なリハビリテーションが必要です。薬物療法や心理社会的治療を組み合わせた包括的なアプローチによって、脳の興奮状態を鎮め、本来の感受性を取り戻すことを目指します。ここでは医療機関での治療内容とリハビリテーション施設での支援について解説します。

杉山 太一

監修医師
杉山 太一(医師)

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【経歴】
東京大学整形外科学教室
社会保険中央総合病院 整形外科
立正校正病院 整形外科
東京大学医学部附属病院 精神科
国立精神神経センターレジデント
東京大学医学部 精神科教室助手
葛飾橋病院精神科
ゆうメンタルクリニック 池袋院院長
葛飾橋病院(東京都葛飾区) 副院長
ワシン坂病院精神科(神奈川県横浜市) 勤務

【専門・資格・所属】
精神科・整形外科

精神保健指定医
日本精神神経学会 精神科専門医

覚醒剤依存症の治療法—専門的な医療介入とリハビリテーション

覚醒剤依存症の治療には、医療機関での専門的な介入と、長期的なリハビリテーションプログラムが必要です。依存症は慢性的な脳の疾患として捉えられており、継続的な治療とサポートが重要となります。

医療機関における専門的な治療アプローチ

覚醒剤依存症の治療は、精神科や依存症専門の医療機関で行われます。まず、身体的・精神的な状態の詳細な評価が実施され、合併する精神疾患や身体疾患の有無が確認されます。治療の初期段階では、離脱症状への対応と精神症状の安定化が優先されます。
薬物療法としては、抑うつ症状や不安症状、精神病症状に対して、必要に応じてセロトニンを増やすタイプの抗うつ薬やドーパミンをコントロールするタイプの抗精神病薬が使用される場合があります。ただし、覚醒剤依存症の治療は覚醒剤によりドーパミンに乗っ取られやすくなっている興奮しやすい脳をリセットして元の脳の状態に戻す長期間にわたる治療です。脳の過剰な興奮を抑えて交感神経優位な状態から副交感神経優位な脳に戻すため様々な手法が用いられます。脳の休息、徹底した覚醒剤の断薬、心理社会的治療、薬物によるドーパミンのコントロールなどの治療法が駆使されます。そのような治療の中で脳の可塑性を発動し脳回路を依存症の脳から、もとの本来の感受性へと回路のリセットをニューロンレベルで行うことが治療の中心となります。認知行動療法は依存症治療において有効性が確認されている治療法であり、薬物使用に至る思考パターンや行動パターンを変容させることを目指します。マインドフルネスは依存症にある覚醒剤への渇望を瞑想の力で減弱する治療法です。

リハビリテーション施設でのプログラムと社会復帰支援

多くの場合、依存症からの回復には入院治療やリハビリテーション施設でのプログラム参加が推奨されます。施設では、構造化されたプログラムの中で、生活リズムの再構築や対人関係スキルの訓練が行われます。集団療法やグループミーティングを通じて、同じ問題を抱えるほかの方々との交流が持てることも、回復過程において重要な要素となります。同じ意思のベクトルが強く流れている状態でないと個人の意思の力は弱く、簡単にドーパミンの要求に抗えないからです。
社会復帰支援としては、就労支援や住居支援、家族関係の再構築支援などが提供されます。地域の支援機関と連携し、退院後も継続的なフォローアップを受けることで、再使用のリスクを低減できる可能性があります。回復には脳の休息とニューロンの回復には数ヶ月から数年という長期間を要することが一般的であり、焦らず着実に取り組む姿勢が求められます。回復の速度や程度には個人差があり、本人の意欲や周囲のサポート体制などが大きく影響すると考えられています。

まとめ

覚醒剤は心身に深刻な影響を及ぼす違法薬物であり、使用によって取り返しのつかない結果を招く危険性があります。しかし、依存症は適切な治療と支援によって回復可能な状態です。本記事で解説した覚醒剤の作用、身体的・精神的影響、依存性のメカニズムを正しく理解し、問題に直面した際には速やかに専門機関へ相談することが大切です。

この記事の監修医師

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