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「覚醒剤」で失うのは健康だけじゃない。信頼や仕事、帰り場所を失う依存症の残酷な真実

 公開日:2025/12/24
依存症の進行段階と社会的影響

覚醒剤依存症は初回使用から徐々に進行し、やがて生活のすべてを支配するようになります。仕事や学業、家庭といった本来大切にすべきものが後回しになり、薬物の入手と使用が最優先となっていきます。この過程で本人だけでなく家族や社会にも深刻な影響が広がるため、依存症の進行段階を理解し早期に発見することが重要です。

杉山 太一

監修医師
杉山 太一(医師)

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【経歴】
東京大学整形外科学教室
社会保険中央総合病院 整形外科
立正校正病院 整形外科
東京大学医学部附属病院 精神科
国立精神神経センターレジデント
東京大学医学部 精神科教室助手
葛飾橋病院精神科
ゆうメンタルクリニック 池袋院院長
葛飾橋病院(東京都葛飾区) 副院長
ワシン坂病院精神科(神奈川県横浜市) 勤務

【専門・資格・所属】
精神科・整形外科

精神保健指定医
日本精神神経学会 精神科専門医

依存症の進行段階と社会的影響

覚醒剤依存症は段階的に進行し、個人の生活だけでなく、家族や社会にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。依存症の進行過程を理解することは、早期発見と介入のために重要です。

初期使用から依存形成までの経過

覚醒剤の使用は、多くの場合、好奇心や周囲からの誘いがきっかけとなります。初めは週末だけ、特別なときだけといった制限的な使用であっても、快感の強さから使用頻度が徐々に増加していく傾向があります。使用間隔が短くなり、使用量も増えていく過程で、日常生活における優先順位が覚醒剤の使用へと移行していきます。
依存が形成されると、覚醒剤を入手し使用することが生活の中心となり、仕事や学業、家庭生活がおろそかになります。金銭的な問題も生じ、覚醒剤を入手するために借金をしたり、犯罪行為に及んだりする事例も少なくありません。この段階では、本人が依存状態にあることを自覚していても、自分の意志だけでは使用をやめることが困難になっています。ただし、依存形成の速度や程度には個人差があり、使用環境や心理的な要因、社会的な支援の有無などが影響すると考えられています。

家族関係・社会生活への深刻な影響

覚醒剤依存症は、家族関係に深刻な亀裂をもたらす可能性があります。情緒不安定な状態や攻撃的な行動により、家族との信頼関係が損なわれ、家庭内での孤立が進行することがあります。配偶者や子どもへの影響も大きく、家族全体が精神的・経済的な困難に直面することになります。
社会生活においても、職場での信頼を失い、失業に至るケースが見られます。友人関係も覚醒剤を使用するグループに限定され、健全な社会的つながりが失われていきます。また、違法薬物の使用という犯罪行為により、逮捕や起訴といった法的な問題に直面し、社会的な立場を完全に失う結果となることもあります。これらの影響は、依存症からの回復を一層困難なものにする可能性があります。ただし、早期に適切な支援につながることで、こうした悪影響を最小限に抑えることができる場合もあります。

まとめ

覚醒剤は心身に深刻な影響を及ぼす違法薬物であり、使用によって取り返しのつかない結果を招く危険性があります。しかし、依存症は適切な治療と支援によって回復可能な状態です。本記事で解説した覚醒剤の作用、身体的・精神的影響、依存性のメカニズムを正しく理解し、問題に直面した際には速やかに専門機関へ相談することが大切です。

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