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「覚醒剤」をやめた後に訪れる“抑うつ”の正体。精神的離脱の恐ろしさとは

 公開日:2025/12/23
覚醒剤依存症—強力な精神依存のメカニズム

覚醒剤は極めて強い依存性を持つ薬物であり、一度使用しただけでも脳の報酬系に強烈な記憶が刻まれ、再使用への渇望が生じます。この依存性は主に精神的なものであり、意志の力だけではコントロールすることが大変難しい特徴があります。ここでは脳内でどのように依存が形成されるのか、そのメカニズムと離脱症状について詳しく解説します。

杉山 太一

監修医師
杉山 太一(医師)

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【経歴】
東京大学整形外科学教室
社会保険中央総合病院 整形外科
立正校正病院 整形外科
東京大学医学部附属病院 精神科
国立精神神経センターレジデント
東京大学医学部 精神科教室助手
葛飾橋病院精神科
ゆうメンタルクリニック 池袋院院長
葛飾橋病院(東京都葛飾区) 副院長
ワシン坂病院精神科(神奈川県横浜市) 勤務

【専門・資格・所属】
精神科・整形外科

精神保健指定医
日本精神神経学会 精神科専門医

覚醒剤依存症—強力な精神依存のメカニズム

覚醒剤は極めて強い依存性を持つ薬物であり、一度使用すると容易にドーパミンに脳をハッキングされ知らず知らずに使用を繰り返すことで、依存状態に陥る可能性があります。依存症のメカニズムを理解することは、その深刻さを認識する上で不可欠です。

報酬系の変化と渇望の形成過程

覚醒剤の依存性は、主に精神依存として現れます。脳の報酬系において、覚醒剤による強烈な快感の記憶が形成され、その体験を再び得たいという強い欲求が生じます。この欲求は「渇望」と呼ばれ、意志の力だけではコントロールが困難なほど強力なものです。
繰り返し使用することで、脳の報酬系の感受性が変化し、覚醒剤なしでは快感や満足感を得られなくなる傾向があります。日常生活における自然な報酬刺激(食事、対人交流、趣味など)では満足できず、覚醒剤への渇望が日常生活を支配するようになります。この変化は脳の構造的・機能的な変化を伴うため、依存からの回復には長期的な取り組みが必要となります。

離脱症状と再使用への強い衝動

覚醒剤の使用を中止すると、離脱症状が現れることがあります。覚醒剤の場合、身体的な離脱症状は比較的軽度とされていますが、精神的な離脱症状は顕著です。強い疲労感、過眠、抑うつ気分、不安感などが出現し、これらの不快な症状から逃れるために再使用への衝動が生じることがあります。
離脱症状は使用中止後、数日から数週間にわたって持続する場合があり、特に最初の数日間が辛い時期とされています。この時期に適切な医療支援やサポートがないと、離脱症状の辛さから再使用に至る危険性が高まります。また、使用していた環境や人間関係、特定の感情状態などがきっかけとなり、強い渇望が引き起こされることもあります。離脱症状の程度や持続期間には個人差があり、使用期間や使用量、心理的な要因などが影響すると考えられています。

まとめ

覚醒剤は心身に深刻な影響を及ぼす違法薬物であり、使用によって取り返しのつかない結果を招く危険性があります。しかし、依存症は適切な治療と支援によって回復可能な状態です。本記事で解説した覚醒剤の作用、身体的・精神的影響、依存性のメカニズムを正しく理解し、問題に直面した際には速やかに専門機関へ相談することが大切です。

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