覚醒剤が脳に刻む「異常な回路」“覚醒剤精神病”の恐るべき持続性を医師が解説

覚醒剤の使用によって引き起こされる精神障害は、覚醒剤精神病として医学的に認識されています。この状態は統合失調症と似た症状を呈することがあり、たった一度の使用でも発症する可能性があります。幻覚や妄想といった症状は使用中止後も長期間持続することがあり、専門的な治療が不可欠です。ここでは覚醒剤精神病の特徴と治療の必要性について解説します。

監修医師:
杉山 太一(医師)
東京大学整形外科学教室
社会保険中央総合病院 整形外科
立正校正病院 整形外科
東京大学医学部附属病院 精神科
国立精神神経センターレジデント
東京大学医学部 精神科教室助手
葛飾橋病院精神科
ゆうメンタルクリニック 池袋院院長
葛飾橋病院(東京都葛飾区) 副院長
ワシン坂病院精神科(神奈川県横浜市) 勤務
【専門・資格・所属】
精神科・整形外科
精神保健指定医
日本精神神経学会 精神科専門医
精神障害としての覚醒剤精神病とその特徴
覚醒剤の使用によって引き起こされる精神障害は、覚醒剤精神病として知られています。たった一度の使用でも、記憶の中では目眩く強烈な体験でアブノーマルな回路ができてしまうときがあります、この幻覚妄想状態は統合失調症と類似した症状を呈することがあり、極度の興奮状態が時にあらわれるため、興奮しやすい脳をコントロールして社会生活が送れるようになるため専門的な治療を必要とします。
統合失調症に類似した症状の出現
覚醒剤精神病では、統合失調症と似た症状が現れることがあります。幻聴や被害妄想といった陽性症状だけでなく、感情の平板化や意欲の低下といった陰性症状も認められることがあります。思考の混乱や会話のまとまりのなさ、奇異な行動なども出現し、周囲から見て明らかに異常な状態となる場合があります。
これらの症状は、覚醒剤の使用を中止した後も薬を使用していないにもかかわらず、数年から数十年持続することがあり、一部の方では慢性的な精神障害として一生涯残存する可能性があります。特にフラッシュバックと呼ばれる現象が生じることがあり、使用していないにもかかわらず、使用時と同様の精神症状が突然再現されることがあります。この場合再体験されることで再びアブノーマルな回路は強化されます
精神症状の持続性と再燃のリスク
覚醒剤精神病の症状は、使用を中止した後、数週間から数ヶ月で改善することが多いとされています。しかし、一部の方では症状が数十年もの長期間持続し、継続的な治療が必要となる場合があります。一生涯内服が必要となり内服を中断するとまた幻覚や妄想が再燃する方も沢山いらっしゃいます。脳はたとえ落ち着いていてもドーパミンを増やす方向に動くため常に断薬は起こりえますし、また、いったん症状が改善した後でも、ストレスや睡眠不足や環境変化に伴うストレスの増加をきっかけに症状が再燃することも起こります。
脳が常にドーパミンが増える方に行動してしまうため頭ではわかっていてもついフラフラと知らず知らずのうちに、再使用するリスクも高く、精神症状が残存している状態で再び覚醒剤を使用すると、症状がさらに悪化し、アブノーマルな回路が脳内でさらに強化され、より重篤な精神障害に至る危険性があります。そのため、精神症状が現れた場合には、速やかに精神科医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。治療では、脳の休息、薬物療法や電気けいれん療法、心理社会的支援が組み合わされ、個々の状態に応じたアプローチが取られます。
まとめ
覚醒剤は心身に深刻な影響を及ぼす違法薬物であり、使用によって取り返しのつかない結果を招く危険性があります。しかし、依存症は適切な治療と支援によって回復可能な状態です。本記事で解説した覚醒剤の作用、身体的・精神的影響、依存性のメカニズムを正しく理解し、問題に直面した際には速やかに専門機関へ相談することが大切です。