【覚醒剤の後遺症】やめた後も消えない「脳の損傷」と「心臓のリスク」とは

覚醒剤の使用を中止した後でも、長期間使用していた場合には身体にさまざまな変化が残ることがあります。神経系や心血管系に生じた損傷は完全には回復しない場合もありますが、適切な医療介入と生活習慣の改善により、身体機能を取り戻せる可能性は十分にあります。ここでは使用中止後の身体状態と、回復を支援するための医療的アプローチについて解説します。

監修医師:
杉山 太一(医師)
東京大学整形外科学教室
社会保険中央総合病院 整形外科
立正校正病院 整形外科
東京大学医学部附属病院 精神科
国立精神神経センターレジデント
東京大学医学部 精神科教室助手
葛飾橋病院精神科
ゆうメンタルクリニック 池袋院院長
葛飾橋病院(東京都葛飾区) 副院長
ワシン坂病院精神科(神奈川県横浜市) 勤務
【専門・資格・所属】
精神科・整形外科
精神保健指定医
日本精神神経学会 精神科専門医
身体的な後遺症と回復の可能性
覚醒剤の使用を中止した後も、身体には長期的な影響が残ることがあります。しかし、適切な治療と支援を受けることで、回復の可能性は十分にあります。
使用中止後も残る身体的な変化
覚醒剤の使用を中止した後、身体的な症状の多くは時間とともに改善していく傾向があります。しかし、神経系や心血管系に生じた損傷は、完全には回復しない場合もあります。特に長期間の使用歴がある方では、脳の器質的形態的な変化による認知機能の低下や神経回路のエラーや神経細胞死による運動機能の障害が残存することがあり、日常生活に支障をきたすことがあります。
心血管系においては、心機能の低下や血管の障害が持続することで、将来的な疾患リスクが高まる可能性があります。また、免疫機能の回復には時間を要するため、感染症にかかりやすい状態が続くこともあります。栄養状態の改善や適切な生活習慣の確立が、身体機能の回復において重要な要素となります。
適切な医療介入による回復支援
身体的な後遺症の改善には、慢性的な低栄養と多臓器不全が見られるためその加療には医療機関での適切な評価と治療が必要です。心血管系の検査や神経学的評価を通じて、現在の身体状態を正確に把握し、必要な治療を受けることが推奨されます。栄養指導や運動療法、必要に応じた薬物療法などを組み合わせることで、身体機能の回復を促進できる可能性があります。
また、定期的な健康診断を受けることで、潜在的な健康問題を早期に発見し、適切な対応を取ることが可能になります。専門的な医療チームによる包括的なサポートは、身体的な回復だけでなく、精神的な安定や社会復帰にも大きく寄与するでしょう。医療機関では、個々の状態に応じた治療計画が立てられ、段階的な回復を目指すアプローチが取られます。
まとめ
覚醒剤は心身に深刻な影響を及ぼす違法薬物であり、使用によって取り返しのつかない結果を招く危険性があります。しかし、依存症は適切な治療と支援によって回復可能な状態です。本記事で解説した覚醒剤の作用、身体的・精神的影響、依存性のメカニズムを正しく理解し、問題に直面した際には速やかに専門機関へ相談することが大切です。