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一生続く震えや抑うつ「覚醒剤」が身体に及ぼす深刻な影響を医師が解説

 公開日:2025/12/20
覚醒剤が身体に及ぼす深刻な影響

覚醒剤の使用によって生じる低栄養、過覚醒と興奮状態の持続、不眠、脱水といった状態は、心臓や血管をはじめとする全身の臓器に大きな負担をかけます。心血管系への過度なストレスは重篤な合併症を招き、神経系や消化器系にも深刻なダメージを与える可能性があります。若年者であっても突然死を引き起こすこともあるため、その危険性を正しく理解することが大切です。

杉山 太一

監修医師
杉山 太一(医師)

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【経歴】
東京大学整形外科学教室
社会保険中央総合病院 整形外科
立正校正病院 整形外科
東京大学医学部附属病院 精神科
国立精神神経センターレジデント
東京大学医学部 精神科教室助手
葛飾橋病院精神科
ゆうメンタルクリニック 池袋院院長
葛飾橋病院(東京都葛飾区) 副院長
ワシン坂病院精神科(神奈川県横浜市) 勤務

【専門・資格・所属】
精神科・整形外科

精神保健指定医
日本精神神経学会 精神科専門医

覚醒剤が身体に及ぼす深刻な影響

覚醒剤の使用は、低栄養、過覚醒と興奮状態の持続、不眠、脱水が続くため、多臓器が不全になることがあり、全身のさまざまな臓器や器官に悪影響を及ぼす可能性があります。特に心血管系や神経系への影響は重篤であり、生命に関わる危険性も少なくありません。若者が原因不明の突然死をおこすこともあります。

心血管系への負担と重篤な合併症

覚醒剤の使用により、心拍数の増加と血圧の急激な上昇が引き起こされます。これらの変化は心臓に過度な負担をかけ、不整脈や心筋梗塞、心不全といった重篤な心血管系の合併症を招く危険性があります。特に高用量を使用した場合や、繰り返し使用している方では、低栄養、脱水、興奮と相まって、多臓器の不全が進行して、心臓の筋肉が損傷を受け、慢性的な心機能の低下が生じることがあります。
血管系においても、低栄養、頻脈、不眠の劣悪な生理的環境下で血管の収縮が持続することで脳血管障害のリスクが高まる可能性があります。若年者であっても脳出血や脳梗塞を発症する事例が報告されており、これらは重篤な後遺症を残す可能性があります。また、動脈硬化の進行が促進されることで、将来的な心血管疾患のリスクも増大する傾向が見られます。

神経系・消化器系・その他の身体的影響

神経系では、覚醒剤による過剰な刺激による興奮の異常な持続は神経細胞の損傷であるアポトーシス(神経死)を引き起こす可能性があります。特にドーパミン神経系やセロトニン神経系への影響は顕著であり、これらの神経系の機能低下は抑うつ症状やドーパミンのオンとオフが繰り返されると神経運動回路が異常動作を起こす、パーキンソン症候群に似た運動障害を引き起こすことがあります。
消化器系においては、交感神経優とドーパミンによる興奮状態が続くことにより、覚醒剤による快楽と探求行動が第一目的になって、食事はどうでもよくなり、食欲が消失し続けることで栄養状態が悪化し、体重減少や免疫機能の低下が生じる場合があります。口腔内の衛生状態も悪化しやすく、「柔らかなものを噛むと突然歯が折れてしまう」などと歯の損傷や歯周病が進行することが知られています。また、肝機能や腎機能にも悪影響が及び、全身の代謝機能が障害される可能性があるでしょう。その他、皮膚の乾燥や老化の促進、感染症に対する抵抗力の低下なども認められます。

まとめ

覚醒剤は心身に深刻な影響を及ぼす違法薬物であり、使用によって取り返しのつかない結果を招く危険性があります。しかし、依存症は適切な治療と支援によって回復可能な状態です。本記事で解説した覚醒剤の作用、身体的・精神的影響、依存性のメカニズムを正しく理解し、問題に直面した際には速やかに専門機関へ相談することが大切です。

この記事の監修医師

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