メラノーマと間違えやすい「シミ」や「いぼ」。良性病変との違いを医師が解説

メラノーマと見た目が似ていても実際には良性の病変であることも少なくなく、これらについて知っておくことで過度な不安を避けつつ適切な判断ができるようになります。脂漏性角化症や老人性色素斑、青色母斑といった良性病変との違いを理解することは、セルフチェックの精度を高めるために役立ちます。ここでは代表的な良性病変の特徴を解説します。

監修医師:
本木 智輝(医師)
新潟大学卒業
日本医科大学皮膚科 助教
メラノーマと間違えやすい良性の皮膚病変
メラノーマと見た目が似ていても、実際には良性の病変であることも少なくありません。これらの良性病変について知っておくことで、過度な不安を避けつつ、適切な判断ができるようになります。
脂漏性角化症や老人性色素斑との違い
脂漏性角化症は加齢とともに現れる良性の腫瘍で、一般的に老人性いぼとも呼ばれます。顔面や体幹に好発し、褐色から黒褐色を呈することがあります。表面がやや盛り上がっていて、ざらざらした手触りが特徴です。
脂漏性角化症とメラノーマの違いは、脂漏性角化症が比較的境界明瞭で、表面に角質の増生が見られることです。また、ゆっくりと大きくなることはあっても、メラノーマのような急速な変化を示すことは少ないとされています。ただし、肉眼での鑑別が難しい場合もあるため、疑わしい場合は専門医の診察を受けることが重要です。
老人性色素斑はシミとも呼ばれる色素沈着で、加齢や紫外線の影響で現れる良性の変化です。平坦で境界が比較的明瞭、均一な茶褐色を示すことが多く、形は円形や楕円形をしています。老人性色素斑は通常、数年から数十年かけてゆっくりと増えたり薄くなったりしますが、急激な変化は見られません。
しかし、老人性色素斑の上にメラノーマが発生することも稀にあるため、長年変わらなかったシミが急に変化した場合は注意が必要です。特に色が濃くなったり、一部だけ黒くなったり、境界がぼやけてきたりした場合は、皮膚科を受診することをおすすめします。
青色母斑やスピッツ母斑の特徴
青色母斑は真皮と呼ばれる皮膚の深い層にメラニン色素を産生する細胞が存在する良性のほくろです。青みがかった色調を示すことが特徴で、顔面や手足の甲に好発します。通常は1cm以下の大きさで、形は円形や楕円形をしています。
青色母斑は、生まれつきある場合もあれば、幼少期から青年期にかけて徐々に現れることもあります。多くは長い期間ほとんど変化せず、そのまま経過する良性の皮膚病変です。基本的には心配のいらないものですが、もし大きさや色に急な変化が見られた場合には、念のため皮膚科で確認すると安心です。
スピッツ母斑と呼ばれる特殊なタイプのほくろは、見た目だけでは専門医でも判断が難しいことがあります。そのため、短期間で大きくなる、色が急に変わるなど気になる変化がある場合には、自己判断せず皮膚科で確認することが大切です。必要に応じて、組織を採って詳しく調べる検査が行われることもあります。
まとめ
メラノーマは早期に発見できれば治療可能な疾患です。自覚症状に乏しく見逃されやすいという特徴を持つメラノーマですが、皮膚の変化を注意深く観察し、少しでも気になる点があれば専門医に相談することで、早期発見につなげることができます。爪の縦線や皮膚のほくろの変化、特に短期間での急速な変化や出血といった症状は重要なサインです。ABCDEルールを参考にしながら定期的に自己観察を行い、見えにくい部位は家族の協力を得て確認することが推奨されます。紫外線対策などの予防とともに、リスク因子を持つ方は定期的な専門医による検診を受けることで、メラノーマの早期発見と適切な治療につなげていきましょう。