「良いほくろ」と「悪いほくろ」の違いは?自分で確認できる5つのポイント

メラノーマと良性のほくろを見分けることは専門医でも難しい場合がありますが、いくつかの特徴を知っておくことで受診の判断材料とすることができます。世界的に用いられているABCDEルールや、皮膚科で行われるダーモスコピー検査について理解を深めることで、より適切な対応が可能になります。ここでは両者を区別するための基準と検査方法を解説します。

監修医師:
本木 智輝(医師)
新潟大学卒業
日本医科大学皮膚科 助教
良性のほくろとメラノーマの見分け方
メラノーマと良性のほくろを見分けることは、専門医でなければ困難な場合があります。しかし、いくつかの特徴を知っておくことで、受診の判断材料とすることができます。ここでは両者の違いについて解説します。
ABCDEルールによる判断基準
メラノーマと良性のほくろを見分ける際に、世界的に広く用いられているのがABCDEルールです。この基準は、Asymmetry非対称性、Border境界、Color色、Diameter直径、Evolution進展・隆起の5つの要素から構成されています。
Asymmetry非対称性とは、病変を中心で二つに分けたときに左右が対称でないことを指します。良性のほくろは円形や楕円形で左右対称なことが多いのに対し、メラノーマは不規則な形状を示すことがあります。
Border境界については、良性のほくろは周囲の皮膚との境界が明瞭ではっきりしていますが、メラノーマでは境界がぼやけてにじんだような外観を示すことがあります。また、辺縁がギザギザしていたり、ノッチと呼ばれる切れ込みがあったりする場合も注意が必要です。
Color色に関しては、良性のほくろが均一な茶色や黒色であるのに対し、メラノーマでは一つの病変内に複数の色が混在することがあります。茶色、黒色、青色、赤色、白色などが混ざり合って見えることが特徴です。
Diameter直径については、6mm以上の大きさが一つの目安とされています。ただし、小さなメラノーマも存在するため、サイズだけで判断することはできません。
Evolution進展・隆起は、既存の病変が時間とともに大きくなったり、平坦だったものが盛り上がってきたりする変化を指します。短期間での変化は特に注意すべきサインといえるでしょう。
これらの基準はあくまで目安であり、一つでも該当すれば必ずメラノーマというわけではありません。
ダーモスコピー検査の役割
皮膚科では、肉眼での観察に加えて、ダーモスコピーと呼ばれる特殊な拡大鏡を用いた検査が行われることがあります。この検査は皮膚の表面を拡大して観察するもので、痛みを伴わず短時間で実施できます。
ダーモスコピーでは、皮膚の表面だけでなく表皮の下の構造まである程度観察することができます。メラノーマに特徴的な色素の分布パターンや血管の構造、特殊な色調などを詳細に評価でき、良性のほくろとの鑑別に有用な情報が得られます。
この検査により、経過観察で十分な病変なのか、組織検査が必要な病変なのかを判断する材料が得られます。ダーモスコピーは非侵襲的で安全性の高い検査であり、疑わしい病変を評価するうえで重要な役割を果たしています。
ただし、診断を確定するには組織検査が必要になります。ダーモスコピーで疑わしい所見が認められた場合は、病変の一部または全部を切除して顕微鏡で詳しく調べる生検が推奨されます。
まとめ
メラノーマは早期に発見できれば治療可能な疾患です。自覚症状に乏しく見逃されやすいという特徴を持つメラノーマですが、皮膚の変化を注意深く観察し、少しでも気になる点があれば専門医に相談することで、早期発見につなげることができます。爪の縦線や皮膚のほくろの変化、特に短期間での急速な変化や出血といった症状は重要なサインです。ABCDEルールを参考にしながら定期的に自己観察を行い、見えにくい部位は家族の協力を得て確認することが推奨されます。紫外線対策などの予防とともに、リスク因子を持つ方は定期的な専門医による検診を受けることで、メラノーマの早期発見と適切な治療につなげていきましょう。