紫外線だけじゃない?メラノーマのリスク因子と予防対策を医師が解説

メラノーマの発症にはいくつかのリスク因子が関与しており、これらを理解して可能な範囲で予防対策を行うことが大切です。紫外線曝露や遺伝的要因といったリスクを知り、日焼け止めの適切な使用や定期検診の受診など具体的な対策を実践することで、発症リスクを低減できる可能性があります。ここでは主なリスク因子と効果的な予防方法について説明します。

監修医師:
本木 智輝(医師)
新潟大学卒業
日本医科大学皮膚科 助教
メラノーマのリスク因子と予防対策
メラノーマの発症にはいくつかのリスク因子が関与していることが知られています。これらのリスク因子を理解し、可能な範囲で予防対策を行うことが大切です。
紫外線曝露と生活習慣の影響
メラノーマの発症に関与する重要な環境因子の一つが紫外線です。特に幼少期や思春期に強い日焼けを繰り返した経験がある方は、リスクが高まる可能性があるといわれています。また、日常的に屋外で活動する機会が多い方も注意が必要です。
紫外線対策としては、日焼け止めの適切な使用が基本となります。SPF30以上、PA+++以上の製品を選び、2時間から3時間ごとに塗り直すことが推奨されます。また、長袖の衣服や帽子、サングラスなどを活用して、物理的に紫外線を遮断することも効果的です。
日中の外出時間を調整することも有効な対策です。紫外線が強い午前10時から午後2時の時間帯は、できるだけ屋外での活動を避けるか、日陰を利用するよう心がけるとよいでしょう。
ただし、日本人に多い足底や爪のメラノーマは、紫外線の影響を受けにくい部位に発生することから、紫外線以外の要因も重要と考えられています。慢性的な刺激や圧迫、炎症を避けることも予防の観点から大切です。
遺伝的要因と定期検診の必要性
メラノーマの発症には遺伝的要因も関与していることが知られています。家族の中にメラノーマの既往がある方、特に一親等の血縁者にメラノーマの患者さんがいる場合は、リスクが高まる可能性があります。また、全身に多数のほくろがある方、特に100個以上のほくろを持つ方や、大きな先天性色素性母斑を持つ方も注意が必要とされています。これらの方は定期的に皮膚科でスクリーニング検査を受けることが推奨されます。
免疫抑制状態にある方、例えば臓器移植後に免疫抑制剤を服用している方や、特定の免疫疾患を持つ方も、メラノーマのリスクが高まる可能性があります。このような方は主治医と相談しながら、適切な皮膚のモニタリングを行うことが大切です。
定期検診の頻度は個々のリスク因子によって異なりますが、リスクの高い方は年に1回から2回程度の専門医による全身の皮膚チェックを受けることが望ましいとされています。検診では、ダーモスコピーを用いた詳細な観察が行われ、疑わしい病変があれば適切な対応が取られます。
まとめ
メラノーマは早期に発見できれば治療可能な疾患です。自覚症状に乏しく見逃されやすいという特徴を持つメラノーマですが、皮膚の変化を注意深く観察し、少しでも気になる点があれば専門医に相談することで、早期発見につなげることができます。爪の縦線や皮膚のほくろの変化、特に短期間での急速な変化や出血といった症状は重要なサインです。ABCDEルールを参考にしながら定期的に自己観察を行い、見えにくい部位は家族の協力を得て確認することが推奨されます。紫外線対策などの予防とともに、リスク因子を持つ方は定期的な専門医による検診を受けることで、メラノーマの早期発見と適切な治療につなげていきましょう。