乳がん治療で大切な「集学的治療」とは?【医師監修】

乳がんの治療では、がんの性質や進行度、患者さんの年齢や全身状態に応じて複数の方法を組み合わせて行います。治療の第一の目的はがんの根治ですが、単にがんを取り除くだけでなく、治療後の生活をどのように送りたいかという観点も含めて考えていく必要があります。本章では、現代の乳がん治療における基本的な考え方として、複数の治療法を組み合わせる集学的治療とがんのサブタイプに応じた治療選択について解説します。

監修医師:
尾崎 章彦(医師)
平成22年3月 東京大学医学部医学科卒業
平成22年4月 国保旭中央病院初期研修プログラム
平成24年4月 竹田綜合病院 外科
平成26年10月 南相馬市立総合病院外科 外科
平成30年1月 大町病院 外科
平成30年7月 ときわ会常磐病院(福島県いわき市) 乳腺外科
【資格】
専門:外科学、乳腺腫瘍学、災害医学、利益相反、医学教育
日本外科学会 専門医
日本消化器外科学会 専門医
日本乳癌学会 乳腺専門医
検診マンモグラフィ読影認定
乳房超音波読影認定
目次 -INDEX-
乳がん治療の基本的な考え方
乳がんの治療では、がんの性質や進行度、患者さんの年齢や全身状態に応じて複数の方法を組み合わせて行います。治療の目的はがんの根治を目指すことが第一ですが、同時に患者さんの生活の質を保つことも重要な視点となっています。
集学的治療という考え方
乳がん治療では「集学的治療」と呼ばれるアプローチが標準となっています。これは手術、薬物療法、放射線療法といった複数の治療法を組み合わせて、がんに多角的に働きかける方法です。それぞれの治療法には得意とする役割があり、局所療法である手術や放射線療法はがんを物理的に取り除くことに優れています。一方、薬物療法は全身に広がる可能性のあるがん細胞に対処できる点で重要です。
医療チームは画像検査や病理検査の結果を総合的に判断し、個々の患者さんに適した治療計画を立案します。治療方針の決定にあたっては、がんの大きさや広がり、リンパ節への転移の有無、遠隔臓器への転移の有無などを評価します。さらに、患者さんの年齢や基礎疾患、生活環境なども考慮に入れながら、最も適切と考えられる組み合わせを検討していきます。
サブタイプに応じた治療選択
乳がんは顕微鏡で見た細胞の特徴だけでなく、がん細胞が持つ分子的な性質によっていくつかのタイプに分類されます。代表的な分類基準として、ホルモン受容体(エストロゲン受容体やプロゲステロン受容体)の有無、HER2というタンパク質の発現状況があります。
ホルモン受容体陽性の場合は内分泌療法が効果を示しやすく、HER2陽性の場合は分子標的薬が有効です。これらの受容体がいずれも陰性のトリプルネガティブ乳がんでは化学療法が中心となります。このようにサブタイプを見極めることで、効果が期待できる治療法を優先的に選ぶことができ、不要な治療による負担を避けることにもつながります。ただし、治療効果には個人差があり、同じサブタイプであっても反応性が異なる場合があることに留意が必要です。
まとめ
乳がんの治療は、がんそのものへの対処だけでなく、身体機能や外見、心理面など多面的なケアが必要となります。ステージに応じた適切な治療選択により、生存率は着実に向上しています。治療による見た目の変化は避けられない場合もありますが、再建やアピアランスケアなどの対策により、患者さんの生活の質を保つことが期待できます。気になる症状があれば早期に専門の医師を受診し、個別化された治療計画を立てることが大切です。医療チームと十分に相談しながら、自分に合った治療とケアを選択していきましょう。