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前立腺がん「手術か、温存か」後悔しないための治療法選びとは

 公開日:2025/12/26
前立腺がんの治療法の全体像

前立腺がんの治療は、がんの進行度や患者さんの身体状況、生活背景によって選択肢が大きく異なります。手術療法や放射線療法、ホルモン療法など複数の方法があり、それぞれに適した状況が存在します。治療方針を決める際には、医学的な判断だけでなく、患者さんご自身の価値観や希望も重要な要素となるため、医師との綿密な話し合いが欠かせません。

新村 浩明

監修医師
新村 浩明(ときわ会 常磐病院)

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ときわ会常磐病院院長
いわき市医師会副会長
いわき市病院協議会副理事

【経歴】
平成5年 富山大学医学部卒
平成5年 東京女子医科大学泌尿器科入局
平成17年9月 ときわ会 いわき泌尿器科病院
平成23年6月 ときわ会 常磐病院(福島県いわき市)
平成27年9月 ときわ会 常磐病院 院長就任

【資格】
日本泌尿器科学会 専門医・指導医
日本透析医学会 専門医・指導医
日本臨床腎移植学会 認定医
日本核医学会 PET核医学認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医
日本内視鏡外科学会 技術認定医

前立腺がんの治療法の全体像

前立腺がんの治療法は多岐にわたり、がんの進行度や患者さんの状態に応じて選択されます。手術療法、放射線療法、ホルモン療法、さらには経過観察を行う監視療法など、それぞれに適した状況があります。

治療法の種類と特徴

前立腺がんの治療法には、大きく分けて手術療法、放射線療法、ホルモン療法、化学療法、監視療法があります。がんの広がり具合や患者さん自身の体力、年齢、生活背景によって、最適な選択肢が大きく異なります。
よく知られている手術療法は、がんが前立腺内にとどまっている早期の段階で選択されることが多く、前立腺全体を摘出する「前立腺全摘除術」が代表的な方法です。放射線療法は、外部から放射線を照射する外照射療法と、前立腺内部に放射線源を埋め込む小線源療法があり、手術が難しい場合や患者さんの希望によって選ばれます。ホルモン療法は、前立腺がんの増殖に関わる男性ホルモンの働きを抑える方法で、進行したがんや転移がある場合に用いられることがあります。化学療法は、ホルモン療法が効きにくくなった場合(去勢抵抗性前立腺がん)に検討される治療法です。監視療法は、がんの進行が非常にゆっくりで、すぐに治療を行う必要がないと判断された場合に、定期的な検査で経過を観察する方法です。
治療の方向性を決める際には、がんがどの段階にあるかだけでなく、患者さんがどのような生活を送りたいのか、どれほど積極的な治療を望むのかといった価値観も重要な要素になります。

治療法の選択基準

前立腺がんの治療法を選ぶときに大切なのは、「どの治療が良いか」という単純な比較ではなく、「自分の状態に最も合っている方法を選ぶ」ことです。そのため、がんの進行度を示す病期(ステージ)、悪性度を示すグリーソンスコア、血液検査で測定されるPSA(前立腺特異抗原)の数値、患者さんの年齢や期待余命、合併症の有無などが総合的に考慮されます。例えば、がんが前立腺内に限局し、悪性度が低い場合には、監視療法や手術療法、放射線療法が選択肢となることがあります。一方、がんが前立腺の外に広がっている場合や、リンパ節や骨への転移が認められる場合には、ホルモン療法が治療の中心となり、必要に応じて放射線療法や化学療法が組み合わされることがあります。

また、患者さんの年齢が高く、他の持病がある場合には、治療による身体への負担を考慮し、より低侵襲な方法が選ばれることもあります。治療方針は、医師と患者さんが十分に話し合い、患者さんの価値観や生活背景を踏まえたうえで決定されるべきものです。個々の状況によって適切な治療法は異なるため、専門の医師との綿密な相談が欠かせません。

まとめ

前立腺がんの診断を受けた際には、誰もが不安を感じるものです。しかし、早期に発見し適切な治療を受ければ、良好な経過をたどることができるがんの一つでもあります。治療法は多岐にわたり、手術療法、放射線療法、ホルモン療法など、患者さんの状態や希望に応じた選択が可能です。

費用面では、高額療養費制度や医療費控除、民間保険を活用することで、経済的な負担を軽減できます。前立腺がんは初期症状に乏しいため、定期的なPSA検査による早期発見が何よりも重要です。不安や疑問があれば、泌尿器科の専門の医師に相談し、納得のいく治療を選ぶことが大切です。ご自身の身体と向き合いながら、医師や医療スタッフと協力して、より良い治療と生活を目指していきましょう。

この記事の監修医師