「2型糖尿病」の初期症状をご存じですか? 『疲れやすさ』や“皮膚の乾燥”に要注意

2型糖尿病の発症には遺伝的要因と環境要因が複雑に絡み合っており、家族歴や肥満、運動不足、加齢といった複数のリスク因子が重なることで発症の可能性が高まります。初期段階では自覚症状が乏しく、健診で偶然発見されることも少なくありません。しかし血糖値が高い状態が続くと、多飲・多尿や体重減少、疲労感、視力の変化といった症状が徐々に現れ始めます。皮膚の異常や手足のしびれなど見逃しやすいサインもあるため、小さな変化に気づいたら早めに受診することが大切です。

監修医師:
井筒 琢磨(医師)
2014年 宮城県仙台市立病院 医局
2016年 宮城県仙台市立病院 循環器内科
2019年 社会福祉法人仁生社江戸川病院 糖尿病・代謝・腎臓内科
所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本不整脈心電図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心エコー学会
目次 -INDEX-
食生活や運動、加齢による影響
2型糖尿病の発症には、遺伝的要因に加えて日常の食生活や運動、睡眠といった環境要因が関わっており、これらの要素が積み重なることでリスクが変化します。また、加齢に伴う身体機能の変化も無視できない要因です。
食事習慣と運動不足
糖尿病と聞くと「甘いものの食べすぎ」というイメージを持つ人も多いですが、実際には“食習慣全体の傾き”が問題になります。過剰なカロリー摂取や糖質・脂質に偏った食事は、血糖値の上昇と体重増加を招きます。特に現代では外食やコンビニ食が日常的になり、気づかないうちに糖質や脂質が多い食事を選んでしまう傾向があります。精製された炭水化物や砂糖を多く含む食品は血糖値を急激に上昇させやすく、膵臓に負担をかける原因となります。一方で食物繊維を豊富に含む野菜や全粒穀物は血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。食事内容を少し工夫するだけでも、血糖コントロールは大きく変わります。
運動不足も大きなリスク因子です。筋肉はブドウ糖をエネルギーとして使う器官のひとつで、筋肉量が多いほど糖を効率的に消費できます。身体活動が少ないと筋肉量が減少し、筋肉が糖を取り込む能力が低下します。定期的な有酸素運動や筋力トレーニングは筋肉のインスリン感受性を高め、血糖コントロールを改善する効果が期待できます。通勤時に歩く距離を増やす、階段を使う、週末に軽いジョギングを行うといった小さな習慣の積み重ねが予防につながるのです。
加齢に伴う代謝変化
年齢を重ねると誰でも筋肉量が自然と減少し、基礎代謝が低下していきます。基礎代謝とは、何もしていなくても生命維持のために使われるエネルギーのことで、これが下がると同じ食事量でも太りやすくなったり、血糖値が下がりにくくなったりします。また加齢とともに膵臓の機能も徐々に低下していきます。インスリンの分泌能力が少しずつ低下するため、40代・50代以降は血糖値が上がりやすい年代といえるでしょう。糖尿病や高血圧などの疾患は年齢とともに増えやすく、高血圧や脂質異常症が重なると、血糖値が上がりやすい状態が促進されることもあります。
ただし、加齢が避けられないからといって発症が必然というわけではありません。若い頃から適切な体重管理と運動習慣を維持し、定期的な健康診断を受けることで、加齢によるリスクの上昇を抑えることが可能です。高齢になってからでも食生活や運動習慣の改善は効果を発揮するため、何歳であっても取り組む意義は大きいといえます。
2型糖尿病の初期症状
2型糖尿病は、発症してもすぐにはっきりとした症状が現れにくいため、多くの人が気づかないまま進行してしまいます。そのため、健康診断や別の疾患の検査で偶然発見されるケースも少なくありません。しかし、血糖値が高い状態が続くと徐々に身体にさまざまなサインが現れます。早期に気づいて対処することで、合併症のリスクを大幅に減らすことができます。
高血糖が進み始めた段階で現れる特徴的な症状
2型糖尿病では、発症のごく初期には自覚できる症状がほとんどないことが多く、健診で偶然見つかるケースが大半です。しかし、血糖値の高い状態がある程度続くと、身体が糖をうまく利用できないことによる特徴的な症状が現れ始めます。
代表的なのが、多飲・多尿や体重減少といった変化です。血糖値が高い状態では、腎臓が余った糖を尿として排出しようとするため、尿量が増え、喉の渇きが強くなります。また、インスリンの作用不足により細胞が十分なエネルギーを得られなくなると、体内の脂肪や筋肉が分解され、食事量が変わらないにも関わらず体重が減少することがあります。
これらの症状は初期というよりは、高血糖がある程度進行してきた段階で自覚されるものです。日常生活で明らかな体調の変化を感じた場合には、早めに医療機関で血糖値を確認することが重要です。
疲労感と視力の変化
血糖値が高い状態では細胞にブドウ糖が十分に取り込まれないため、全身のエネルギー不足が生じます。これにより慢性的な疲労感や倦怠感を感じやすくなります。この疲労感や倦怠感は、仕事の忙しさやストレス、更年期などの別の理由と間違われやすく、糖尿病との関連に気づきにくい症状のひとつです。十分に休息をとっても疲れが取れない、日常的な活動が以前より辛く感じるといった変化は、血糖コントロールの乱れを示唆する可能性があります。
また、血糖値の変動は目にも影響します。高血糖になると、眼の細胞内の水分バランスが変化し、水晶体がむくみやすくなり、一時的にピントが合いにくくなることがあります。また、高血糖が長期間続くと網膜の血管にダメージが蓄積し、糖尿病網膜症という合併症を引き起こすリスクが高まります。視力の異常や目のかすみを感じた場合は、眼科と内科の両方で検査を受けることが望ましいでしょう。
見逃しやすい症状と進行のサイン
2型糖尿病の症状は日常生活に溶け込むように徐々に現れるため、他の原因と混同されやすく、発見が遅れることがあります。小さな変化を見逃さず、複数の症状が重なる場合は注意が必要です。
皮膚の異常と感染症の増加
血糖値が高い状態が続くと、皮膚にさまざまなトラブルが起きやすくなります。糖尿病合併症の初期症状として、神経障害による発汗量の低下が挙げられます。これにより皮膚、特に足の乾燥が目立つようになります。また、高血糖は体全体の水分バランスにも影響を与え、皮膚を乾燥させる一因となります。皮膚が乾燥すると、かゆみが出たり、粉を吹いたような状態になったりと、肌全体が敏感になることがあります。さらに、高血糖は免疫機能を低下させやすく、細菌や真菌(カビ)による感染症にかかりやすくなります。傷の治りが遅い、小さな傷が化膿しやすい、繰り返し皮膚トラブルが起こるといった症状は、血糖コントロールの乱れを示唆する可能性があります。
女特に性の場合は膣カンジダ症などの感染症が頻発することもあります。こうした症状が続く場合は、単なる皮膚トラブルとして処理せず、血糖値の測定を含めた総合的な検査を受けることが大切です。
手足のしびれと感覚異常
高血糖が長期間続くと末梢神経という細い神経にダメージが蓄積し、手足のしびれや感覚の鈍化といった症状が現れることがあります。これは糖尿病性神経障害と呼ばれる合併症の初期症状で、進行すると生活に大きな支障をきたす可能性があります。
初めは「足先がピリピリする」「たまにしびれる」「冷えやすい」といった軽い症状から始まり、それほど気にならない人も多いです。ところが、症状が徐々に強くなると、触った際の感覚が鈍くなり、温度の変化を感じにくくなったり、痛みの感覚が弱くなってしまうこともあります。そのため、知らない間に足に傷ができ、気づかないまま悪化してしまうというリスクが高くなります。
靴擦れや小さな傷が治りにくい、足の冷えやほてりを感じる、夜間に足がつるといった症状も神経障害の兆候である可能性があります。早期に血糖コントロールを改善することで、神経障害の進行を遅らせることが期待できるため、こうした症状に気づいたら速やかに受診することが推奨されます。
2型糖尿病で控えたい食品
2型糖尿病の管理において食事は極めて重要な要素です。血糖値を急激に上昇させる食品や、長期的に血糖コントロールを乱す食品を知り、日常の食事から見直すことが求められます。
精製された炭水化物と糖質
白米、白パン、うどんといった精製された炭水化物は消化吸収が早く、血糖値を急激に上昇させる特徴があります。血糖値のスパイクは膵臓に大きな負担をかけ、インスリン抵抗性を悪化させる要因となります。また、砂糖を多く含む菓子類やジュース、清涼飲料水は血糖値を急上昇させるだけでなく、カロリー過多による肥満のリスクも高めます。特に、清涼飲料水の過剰摂取は「ソフトドリンクケトーシス」と呼ばれる、急激なケトン体の上昇を招く危険な状態を引き起こすことがあるため、注意が必要です。
代替として玄米や全粒粉パン、そばなどの全粒穀物を選ぶことで、血糖値の上昇を緩やかにし、食物繊維の摂取も増やすことができます。甘い飲み物は水やお茶、無糖のコーヒーに置き換えることが望ましいでしょう。
脂質の多い食品と加工肉
揚げ物やファストフード、バターやマヨネーズを多用した料理は、脂質とカロリーが高く、肥満やインスリン抵抗性を助長します。特にトランス脂肪酸を含む加工食品は、心血管系への悪影響も指摘されており、糖尿病患者さんにとってリスクが高い食品です。
加工肉であるハムやソーセージ、ベーコンなども塩分や添加物が多く、頻繁に摂取すると血糖コントロールだけでなく血圧管理にも悪影響を及ぼす可能性があります。肉類を摂る際は、脂身の少ない部位を選び、蒸す、焼く、煮るといった調理法で余分な脂を減らす工夫が有効です。
まとめ
2型糖尿病は発症メカニズムや原因、症状、食事管理、そして治療の現実について正しく理解することで、適切な対応が可能になります。遺伝的要因や生活習慣、加齢など複合的な要素が関わる疾患ですが、早期発見と継続的な管理により、合併症のリスクを大幅に減らし、質の高い日常生活を維持することができます。症状に気づいたら早めに医療機関を受診し、専門医の指導のもとで治療計画を立てることが大切です。