【5分で解決】糖尿病の1型と2型、何が違う? 知っておくべき「自分の体」のこと

糖尿病には大きく1型と2型があり、その発症メカニズムや患者さんの背景には明確な違いがあります。1型は自己免疫反応により膵臓のβ細胞が破壊されてインスリンがほとんど分泌されなくなる疾患で、若年層に多く見られます。2型はインスリンの分泌量が相対的に低下したり、細胞がインスリンに反応しにくくなることで発症し、中高年以降に多い傾向があります。両者の違いを把握することで、自分自身の状態をより的確に認識し、適切な対処法を選択する手がかりとなるでしょう。

監修医師:
井筒 琢磨(医師)
2014年 宮城県仙台市立病院 医局
2016年 宮城県仙台市立病院 循環器内科
2019年 社会福祉法人仁生社江戸川病院 糖尿病・代謝・腎臓内科
所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本不整脈心電図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心エコー学会
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1型糖尿病と2型糖尿病の基本的な違い
糖尿病は大きく1型と2型に分類されますが、その発症メカニズムや患者さんの背景には明確な違いがあります。2型糖尿病を正しく理解するためには、まず1型との対比を知っておくことが重要です。両者の違いを把握することで、自分自身の状態をより的確に認識し、適切な対処法を選択する手がかりとなります。
発症メカニズムの違い
1型糖尿病は主に体の免疫が誤って自分の細胞を攻撃してしまう自己免疫反応によって起こります。本来インスリンを作っている膵臓のβ細胞がこの免疫反応によって破壊され、インスリンをほとんど分泌できなくなる疾患です。かつては若年層での発症が多いとされていましたが、実際には成人での発症も多く、生涯のどの年齢でも起こり得る疾患です。これに対して、2型糖尿病はインスリンの分泌量が相対的に低下する、または細胞がインスリンに対して反応しにくくなる「インスリン抵抗性」が生じることで発症します。こちらは中高年以降に多く見られますが、近年は食生活の変化や運動不足などを背景に、若年層で発症するケースも増加傾向にあります。
1型ではインスリンがほぼ分泌されないため、診断後すぐにインスリン注射が必要となるケースがほとんどです。2型では初期段階であれば食事療法や運動療法、内服薬での血糖コントロールが可能な場合も多く、進行度合いによって治療の選択肢が広がります。発症の背景にある原因が異なるため、治療方針や日常生活での管理方法も大きく変わってくるのです。
発症年齢と患者背景の違い
1型糖尿病は小児期から高齢期まで、あらゆる年代で発症する可能性があります。成人での発症も決して少なくありません。体質や免疫の異常が関係しているため、予防することは難しいと言われており、発症すると生涯にわたるインスリン治療が必要になるケースがほとんどです。これに対して2型糖尿病は、遺伝的な要因を基盤として、過食や運動不足、肥満、加齢といった環境要因が加わることで発症に至ることが多いのが特徴です。家族歴がある方や肥満傾向にある方は、より注意が必要といえるでしょう。
また1型と2型では患者さんが抱える日常の悩みも異なります。1型は学校生活や職場、家庭など、それぞれのライフステージに応じた環境で血糖管理を行う必要があり、周囲の理解やサポート体制が重要になります。2型は仕事や家庭での役割を担いながら食事や運動の内容を見直す必要があるため、ライフスタイル全体の調整が求められます。どちらも長期にわたる管理が必要ですが、患者さんが置かれた状況や年齢によって直面する課題は異なるのです。
インスリン分泌と抵抗性の違い
糖尿病を理解するうえで、インスリンの働きとその異常がどのように血糖値に影響するかを知ることは欠かせません。1型と2型ではインスリンに関わる問題の性質が大きく異なり、それが治療アプローチの違いにも直結しています。
1型におけるインスリン欠乏
1型糖尿病では、膵臓のβ細胞が自己免疫によって破壊されるため、体内でインスリンを作る能力がほとんど残らなくなります。これは突然起こることが多く、急激な体重減少や強い倦怠感、喉の渇き、尿の回数が急に増えるなど、短期間で目に見える症状が表れます。インスリンがないと、どれだけ糖が血液の中にあっても細胞へ届けることができず、体は“エネルギー不足”という危険な状態に陥ってしまいます。インスリンが欠乏したまま放置すると、体は糖の代わりに脂肪を急速に分解してエネルギーを作ろうとし、その過程で「ケトン体」という酸性物質が大量に発生します。これが増えすぎると血液が酸性に傾き、意識障害などを伴い命に関わる重篤な状態(糖尿病性ケトアシドーシス)を引き起こす危険性があります。1型糖尿病ではインスリン注射が生命維持に不可欠であり、診断後は速やかに補充療法を開始する必要があります。
治療では毎日複数回のインスリン注射や持続皮下インスリン注入療法を用いて、体内のインスリン量を人工的に調整します。食事の内容やタイミング、運動量に応じて投与量を細かく調整する技術が求められ、血糖測定を頻繁に行いながら日常生活を送ることになります。
2型におけるインスリン抵抗性と相対的不足
2型糖尿病では、1型のように完全にインスリンが作れなくなるわけではありません。多くの場合、膵臓がインスリンを分泌する能力自体は残されているものの、細胞がインスリンに対して反応しにくくなる「インスリン抵抗性」が主な問題となります。これは遺伝的な要因に加え、肥満や運動不足、内臓脂肪の蓄積などによって細胞表面のインスリン受容体の働きが低下することで生じるといわれています。初期段階では膵臓が無理をして大量のインスリンを分泌します。これによって一時的には血糖を保てるものの、膵臓は長時間働き続けることに限界があります。この状態が長く続くと膵臓が疲弊し、やがてインスリン分泌量も減少していきます。
このため2型では、インスリンの絶対量が完全に欠乏しているわけではなく、相対的な不足やインスリンの効きにくさが問題となります。治療では食事療法や運動療法によってインスリン抵抗性を改善し、必要に応じて内服薬で膵臓の働きを助けたり、インスリンの効果を高めたりする方法が選択されます。進行すればインスリン注射が必要になる場合もありますが、早期に介入すれば内服薬や食生活や運動習慣の改善だけでコントロールできるケースも少なくないのです。
2型糖尿病の主な原因
2型糖尿病の発症には遺伝的要因と環境要因が複雑に絡み合っています。単一の原因で起こる疾患ではなく、複数のリスク因子が重なることで発症リスクが高まるとされています。自分自身のリスクを把握し、予防や早期発見につなげるためには、どのような要因が関わっているのかを理解することが大切です。
遺伝的要因と家族歴
2型糖尿病の発症には遺伝的要因が最も大きく関わっていることが知られています。両親のいずれかが2型糖尿病である場合、子どもが将来発症するリスクは一般集団に比べて高くなるといわれています。ただし、両親のいずれかが2型糖尿病であるからといって必ず発症するわけではありません。遺伝的ななりやすさがあるところに、運動不足や食生活の乱れなどの環境要因が重なったときに発症リスクが高まる、というイメージに近いです。
また、遺伝の影響といっても特定の“糖尿病の遺伝子”だけで決まるわけではありません。インスリンの分泌能力を左右する遺伝子や、インスリンが細胞に作用する過程を助ける遺伝子など、複数の遺伝子が組み合わさって影響すると報告されています。
家族歴がある方は、定期的な健康診断で血糖値やHbA1cをチェックし、早期に異常を発見できる体制を整えておくことが望ましいでしょう。遺伝的リスクを持っていても、適切な食生活や運動習慣の維持によって発症を遅らせたり予防できる可能性があります。
肥満と内臓脂肪の蓄積
肥満、特にお腹まわりの脂肪が増える内臓脂肪の蓄積は2型糖尿病の発症リスクを大きく高める要因の一つです。内臓脂肪が過剰になると、脂肪細胞から分泌される物質がインスリンの働きを妨げ、体がインスリンに反応しづらくなるインスリン抵抗性が強まることがわかっています。また肥満といっても見た目だけでは判断が難しい場合もあります。体重がそこまで重くなくても、お腹まわりに脂肪がたまりやすい体質の人や、筋肉が少なく脂肪が多い隠れ肥満の人でも、インスリン抵抗性が強く現れることがあります。インスリンが効きにくくなると、血糖値を下げるために膵臓はより多くのインスリンを分泌しなければならず、長期間この状態が続くと膵臓が疲弊してインスリン分泌能力が弱まっていきます。
肥満の判定にはBMI(体格指数)が用いられますが、同じBMIでも内臓脂肪の量によってリスクは異なります。腹囲の測定や画像検査による内臓脂肪量の評価が、より正確なリスク判定につながるとされています。食事の内容や量を見直し、適度な運動習慣を取り入れることで体重をコントロールすれば、インスリン抵抗性は改善しやすくなり、血糖値の安定にも直結します。
まとめ
2型糖尿病は発症メカニズムや原因、症状、食事管理、そして治療の現実について正しく理解することで、適切な対応が可能になります。遺伝的要因や生活習慣、加齢など複合的な要素が関わる疾患ですが、早期発見と継続的な管理により、合併症のリスクを大幅に減らし、質の高い日常生活を維持することができます。症状に気づいたら早めに医療機関を受診し、専門医の指導のもとで治療計画を立てることが大切です。