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健康診断で気になる「肝機能・腎機能」の数値とは?生化学検査の基本を解説

 公開日:2025/12/21
健康診断で気になる「肝機能・腎機能」の数値とは?生化学検査の基本を解説

生化学検査では血液中の化学物質を測定し、臓器機能や代謝状態を総合的に評価します。肝機能、腎機能、脂質代謝、糖代謝など幅広い情報が得られるため、全身の健康状態を把握するうえで欠かせない検査です。AST、ALT、γ-GTP、クレアチニン、eGFRなどの数値は、それぞれ特定の臓器の状態を反映しています。ここでは肝機能検査の読み方と、腎機能・電解質のバランスについて詳しく解説します。

濱木 珠恵

監修医師
濱木 珠恵(ナビタスクリニック新宿)

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【経歴】
北海道大学医学部を卒業後、国立国際医療センターにて研修。
虎の門病院、国立がんセンター中央病院で造血幹細胞移植の臨床研究に従事。都立府中病院、都立墨東病院での血液疾患診療を経て、2012年にナビタスクリニック東中野院長、2016年よりナビタスクリニック新宿院長に就任。
貧血外来や女性内科などで女性の健康をサポート。

【専門・資格・所属】
血液内科、貧血、女性内科、内科一般

日本血液学会 専門医
日本内科学会 認定医

生化学検査の主要項目

生化学検査では血液中の化学物質を測定し、臓器機能や代謝状態を評価します。肝機能、腎機能、脂質代謝、糖代謝など幅広い情報が得られます。

肝機能検査の読み方

肝機能検査では主にAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、ALP、総ビリルビン、アルブミンなどを測定します。ASTとALTは肝細胞内の酵素で、肝細胞が障害されると血液中に漏れ出て数値が上昇します。ASTは心筋や骨格筋にも含まれますが、ALTは肝臓に特異性が高いため、ALTの上昇は肝障害を強く示唆することがあります。

γ-GTPはアルコール性肝障害や胆道系疾患で上昇しやすい酵素です。日常的に飲酒する方や、肥満のある方で高値を示すことが多くあります。ALPは骨や胆道系の疾患でも上昇するため、他の検査値と合わせて解釈する必要があります。

総ビリルビンは赤血球の分解産物で、肝臓で処理されて胆汁中に排泄されます。肝機能低下や胆道閉塞があると上昇し、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる状態)が現れることがあります。アルブミンは肝臓で合成されるタンパク質で、肝機能が低下すると減少します。慢性肝疾患の評価に重要な指標とされています。肝機能の異常が見つかった場合は、原因を特定するためにウイルス検査や画像検査が追加されることがあります。

腎機能と電解質のバランス

腎機能検査では血清クレアチニン、尿素窒素(BUN)、eGFR(推算糸球体濾過量)などを測定します。クレアチニンは筋肉で産生される老廃物で、腎臓から排泄されます。腎機能が低下するとクレアチニン値が上昇します。成人男性では0.65から1.09mg/dL、成人女性では0.46から0.82mg/dL程度が基準値とされています。

eGFRはクレアチニン値、年齢、性別から計算される腎機能の指標で、60mL/分/1.73平方メートル未満が3ヶ月以上続く場合は慢性腎臓病(CKD)と診断されることがあります。早期の腎機能低下では自覚症状がほとんどないため、定期的な血液検査による早期発見が重要です。

電解質ではナトリウム、カリウム、クロール、カルシウムなどを測定します。これらは身体内の水分バランスや神経・筋肉の機能維持に不可欠な成分です。電解質異常は脱水、嘔吐、下痢、腎疾患、内分泌疾患、薬剤の副作用などで起こることがあります。特にカリウムの異常は不整脈の原因となり得るため、速やかな対処が必要な場合があります。電解質のバランスは生命維持に直結する要素であり、異常が認められた際は医師の指示に従うことが大切です。

まとめ

血液検査は全身の健康状態を把握できる有用な検査です。血球系検査、生化学検査、その他の特殊検査により、貧血、感染症、肝臓・腎臓の機能異常、糖尿病、脂質異常症など多様な疾患の早期発見が可能となります。定期的な検査により症状が現れる前の段階で異常を捉え、適切な対処を行うことで、重篤な合併症を予防できる可能性があります。検査結果を正しく理解し、医師の指導のもとで生活習慣の改善や必要な治療を行うことが大切です。年に1回は血液検査を受け、ご自身の健康管理に役立ててください。

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