「お酒の飲みすぎでブラックアウトが起こる理由」とは アルコールと記憶形成のメカニズムを医師に聞く

慢性的なアルコール摂取は、脳の構造と機能に変化をもたらします。大量飲酒時の記憶の途切れ(ブラックアウト)は、海馬という記憶形成に関わる領域が一時的に機能しなくなることで起こります。習慣的な飲酒を続けると、脳の委縮が進み、記憶力や判断力といった認知機能全般に影響が及びます。特にビタミンB1欠乏により、ウェルニッケ脳症やコルサコフ症候群といった深刻な記憶障害を発症するリスクもあります。

監修医師:
小坂 真琴(医師)
2022年4月~2024年3月、今村総合病院(鹿児島県鹿児島市)で初期研修を修了
2024年4月よりオレンジホームケアクリニック(福井県福井市) 非常勤医師として在宅診療を行いながら、福島県立医科大学放射線健康管理学講座大学院生として研究に従事
2025年10月よりナビタスクリニックに勤務
週1度、相馬中央病院 (福島県相馬市) 非常勤医師として内科外来を担当
認知機能と記憶への長期的影響
慢性的なアルコール摂取は、脳の構造と機能に変化をもたらし、認知機能や記憶力に影響を与えます。これらの変化は、生活の質を大きく低下させる要因となります。
記憶障害とブラックアウト現象
大量飲酒時に記憶が途切れる現象は「ブラックアウト」と呼ばれます。これは意識を失うこととは異なり、行動しているにもかかわらず、その時の記憶が形成されない状態です。海馬という記憶形成に関わる脳領域が一時的に機能しなくなることが原因とされています。
ブラックアウトは脳へのダメージを示すサインであり、繰り返すと長期記憶にも影響が及ぶ可能性があります。慢性的な大量飲酒は、脳の委縮を引き起こし、記憶力や学習能力の低下につながることが研究でも示されています。特に前頭葉や海馬の萎縮が顕著であり、計画性や判断力といった高次脳機能にも支障をきたすことがあります。
ウェルニッケ脳症とコルサコフ症候群
慢性的なアルコール摂取により、ビタミンB1(チアミン)が欠乏すると、ウェルニッケ脳症という急性の脳障害を発症することがあります。眼球運動の異常、歩行障害、意識障害が三大症状です。適切な治療が遅れると、コルサコフ症候群という慢性的な記憶障害に移行する可能性があります。
コルサコフ症候群では、新しいことを覚えられない前向性健忘と、過去の記憶が失われる逆行性健忘が特徴的です。記憶の欠損を埋めるために、無意識に作り話をしてしまう作話という症状も見られます。これらの症状は回復が難しく、日常生活に大きな支障をきたします。栄養バランスの取れた食事とビタミン補給が予防に重要です。
まとめ
アルコール飲料は適切に利用すれば、生活に彩りを添える嗜好品となりますが、その作用や影響を正しく理解していないと、健康を損なうリスクがあります。本記事で解説したように、アルコールは中枢神経系に作用し、身体的・精神的にさまざまな影響を及ぼします。依存症は誰にでも起こり得る疾患であり、早期発見と適切な対処が重要です。自分の飲酒習慣を定期的に見直し、気になる点があれば早めに医療機関や専門機関に相談することをおすすめします。
参考文献