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「椎骨動脈解離」を発症した人の後遺症のリスクとは? 日常生活へ復帰するまでの目安を医師に聞く

 公開日:2026/02/08
椎骨動脈解離の回復と予後について

椎骨動脈解離と診断された方にとって、どこまで回復できるのか、後遺症は残るのかといった点は大きな関心事です。多くのケースでは保存的治療により血管の自然な修復が期待できますが、回復の程度は発症時の状態や治療開始までの時間によって異なります。早期発見と適切な治療により、後遺症を残さず日常生活に復帰できる方も少なくありません。ここでは、血管の修復過程や後遺症の可能性、日常生活への影響について医学的な視点から解説します。

鮫島 哲朗

監修医師
鮫島 哲朗(医師)

プロフィールをもっと見る
脳神経外科
東京逓信病院脳神経外科部長
脳腫瘍 頭蓋底外科センター長

【経歴】
平成2年3月 宮崎医科大学(現宮崎大学)卒業
平成2年6月 宮崎医科大学(現宮崎大学)脳神経外科入局
平成3年4月 九州大学救急部研修(厚生省研修プログラム)
平成14年4月 Duke University Medical Center, USA
University of Torino , Italy
平成22年2月 NTT東日本関東病院脳神経外科主任医長
平成25年4月 浜松医科大学脳神経外科准教授
令和6年10月 東京逓信病院脳神経外科部長 脳腫瘍頭蓋底外科センター長

【専門・資格】
脳腫瘍 頭蓋底腫瘍 困難な脳外科手術等
医学博士
日本脳神経外科学会 専門医・指導医
日本脳卒中学会 専門医

椎骨動脈解離の回復と予後について

椎骨動脈解離と診断された場合、多くの患者さんが気になるのは「この疾患はどこまで回復するのか」という点でしょう。回復の程度や、どの程度まで改善が期待できるのかについて、医学的な視点から解説します。

保存的治療による血管の修復過程

椎骨動脈解離の多くは、手術を行わずに薬物療法を中心とした治療である保存的治療を行うことが多く、抗血小板薬や抗凝固薬で血栓を予防しながら、自然な血管の治癒を促していく方法です。血管壁の修復には数か月を要するとされますが、期間には個人差があります。一般には3〜6ヶ月程度で改善が見られるケースが多いと報告されています。この期間中、定期的なMRI検査やCT検査を実施して、血管の状態を確認していきます。多くのケースでは、時間の経過とともに血管壁の状態が改善し、正常な血流が回復します。
ただし、血管壁の修復が得られない場合もあります。解離が広範囲に及んでいるケースや、血管壁の損傷が重度である場合には、血管の形状に変化が残ることがあります。このような場合でも、側副血行路と呼ばれる迂回路が発達することで、脳への血流が維持されることが期待できます。一方で、椎骨動脈解離がくも膜下出血を起こしている場合は、治療の方針が大きく異なります。破れかけている、あるいはすでに破れた血管からの再出血のリスクを防ぐことが最優先となるため、コイル塞栓術や開頭手術(クリッピング術など)といった外科的治療が検討されます。出血タイプでは、一般的な脳梗塞治療で用いられる血液をサラサラにする薬(抗血小板薬)や「t-PA(血栓溶解療法)」はかえって大出血につながる恐れがあるため、保存的治療とは全く逆の考え方が必要になります。

後遺症の有無と日常生活への影響

椎骨動脈解離の予後は、発症時の状態や治療開始までの時間によって大きく異なります。早期に発見され、適切な治療が開始された場合には、後遺症を残さずに回復する方も少なくありません。一方で、脳梗塞を合併した場合には、運動機能や感覚機能に何らかの後遺症が残る可能性があります。
後遺症の程度は、脳梗塞の部位と範囲によって決まります。小さな脳梗塞であれば、軽度のしびれや軽い運動障害で済むこともありますが、広範囲の脳梗塞を起こした場合には、片麻痺や言語障害、嚥下障害などの重度の後遺症が残ることもあるでしょう。リハビリテーションによって機能の改善は期待できますが、完全な回復には至らないケースもあります。
日常生活への復帰については、後遺症がない、または軽度である場合には、数ヶ月以内に通常の生活や仕事に戻れる方も多いです。中等度から重度の後遺症が残った場合には、日常生活動作に介助が必要となったり、職業の変更を余儀なくされることもあります。いずれの場合も医療チームと連携しながら、段階的な社会復帰を目指していくことが大切です。

まとめ

椎骨動脈解離は、突然の頭痛や首の痛みといった見過ごしやすい症状から始まることも多い疾患です。初期症状を正確に認識し、速やかに医療機関を受診することで、重篤な合併症を予防できる可能性が高まります。適切な治療により多くの方が回復されていますが、再発予防のためには長期的な管理が欠かせません。血圧コントロール、ストレス管理、定期的な画像検査など、継続的な取り組みが重要です。気になる症状がある場合には、早めに神経内科や脳神経外科を受診し、専門医の診察を受けることをおすすめします。

この記事の監修医師

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